哲郎は
哲郎の前に広がっていたのは鳳巌の根城に奇襲を掛けるべく集められた鬼門組の精鋭達が整列しているその光景だった。
「……………………!!!」
『凰蓮総監殿!! 鬼門組一同、お待ちしておりました!!!』
凰蓮の姿を認めるや否や、その場に整列していた隊員達が一斉に口を開いてそう言った。その壮観さに哲郎は更に言葉を失う。しかし哲郎はそんな事をしているではない状況に自ら踏み込んでいた。
「!? そ、総監殿!!? その少年は確か━━━━!!!」
「!!!!」
列の前方に居た壮年の団員の言葉で哲郎は自分が今居る状況を再認識し顔を青くさせた。自分は今凰蓮の後方、馬(型の魔物)に乗ってこの場にやって来た。即ち団員達の目には哲郎の姿は総監の後ろに乗っている奇妙な少年と映っている。加えて
(ま、まずい!! どうする!!? 凰蓮さんには正体を明かすなって言われてたけどどうやって納得させれば━━━━!!!)
「心配には及びません。彼は私が連れて来ました。」
『!!?』
*
凰蓮は
「お言葉ですが総監殿、その理由ならば彼をこの場に連れて来る必要性は無かったのではありませんか。証言が取れたのならば今からでも彼を本部へ送り返すべきです!」
「!!」
哲郎は団員の言葉に返す言葉を失った。自らの正体を明かす事が出来ない以上、自分は哲也という鬼門組に保護されるべき人間であり、
「……貴方の言わんとしている事は十分に分かります。ですが、此の作戦に失敗は許されません。我々が今から向かう場所は、
「し、しかし、あまりに危険です!! 万が一にも彼の身にもしもの事があったら、我々全員の首を並べても━━━━!!!」
「此の場でそのような弱気な事を仰るのですか? 何より、私達はこれから戦いに行くのではありません。一気に一網打尽にしに行くのです。
反撃も抵抗も許さず、帝国に仇成す者共を一斉に捉える。その為に
「………………!」
凰蓮は顔に貼り付けたような笑みを浮かべ、そう捲し立てた。団員はその迫力に言葉を失っていたが、哲郎はその会話を俯瞰するように観察し、一つの印象を抱いていた。
(屁理屈だ………………!!!)
屁理屈
哲郎は凰蓮の理論をその三文字で言い切った。凰蓮の理屈はただの理想論である。奇襲が確実に成功する保証など無いし襲撃場所の真贋を確認する為に
しかし間違っても哲郎にはその三文字を口から出力する資格など無いと理解していた。凰蓮がその屁理屈を言わねばならないのは他でも無い哲郎の為なのだから。
「そういう事ですから、我々が手筈通りに動けば戦闘になる事はありません。そうなれば彼に危険が及ぶ事もありません。何より此の私が彼を保護するのです。其れに勝る護衛など有り得ないでしょう。」
その言葉を最後に団員の男は返す言葉を失った。これ以上目上の人間に異を唱える事は避けるべきと判断しての事だ。齢十一の哲郎が組織内の上下関係を目の当たりにした瞬間だった。
「さて皆さん!! もう一度言いますが此の作戦に失敗は許されません!! 我々の肩には帝国の明日が掛かっています!!! ここからの数時間、数分が此の国の運命を左右します!!!
其の事を努々忘れる事の無いよう!!!!」
その言葉は先程と遜色ない発言だったが、今回は先程のように団員達が沸き立つ事は無かった。万が一にも鳳巌達の耳に声が届いてはいけないし、何よりそのような余裕が無い程に彼等の神経は張り詰めていた。
斯くして、哲郎は凰蓮達鬼門組と共に鳳巌の根城への奇襲に同行する事に成功した。
***
凰蓮の背後に乗り鬼門組と共に森の中を進む少年という異様な光景。それを背後から目撃していた者が居た。しかしその人物はその光景に一切の疑問を抱かなかった。その奇妙な少年の正体もその経緯も、全てを把握しているからだ。
その人物は彼等が行動を開始したのを見届けると一人ほくそ笑み、己自身の行動を開始すべく走り出した。
(ふっふっふ。凰蓮の間抜けめ。もう《CHASER》の忠告を忘れたようだな。それで良い。お前らはせいぜいつぶし合ってれば良い。最後に笑う者のは既に決まっているんだからな…………………)