異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#37 Three weak arrow

「何だって!!!?

お兄様に声をかけられた!!!??」

「お兄様って、あのエクス寮長ですよね!!!?」

 

翌日の放課後、哲郎を待っていたのは案の定 ファンとアリスの驚き の反応だった。

 

「ええ。 昨日もう一度 あの大広間に潜入した後にね。しかし僕も驚きました。

まさか僕の正体も目的もバレることになるなんてね。」

「お兄様の情報力はこのラグナロク全体で見てもかなり大きいです。

そのくらい やってできない事じゃ無いですよ。」

 

そうですか と哲郎は頷き、そして話を昨日の潜入結果へと変えた。

 

「それで昨日の調査で、グス以外に下っ端の人間が 2人以上いることが分かりました。」

 

グスと一緒にいたこの2人が何者なのか、エクスが教えてくれた。

 

1人目の銀髪で人相の悪い男は、名前を【アイズン・ゴールディ】という。

グスの同級生で素行の悪さと対称的に実力は高く、鉄柱を具現化する魔法を扱うのだと言う。

 

2人目の茶髪で紅茶を啜っていた男の名前は【ロイドフ・ラミン】

植物を育て、使役する魔法を扱う

 

「……それからですね、エクスさんが今日これから僕たち3人に部屋に来るようにと言ってるので、来てくれますか?」

「お兄様が?

分かりました。すぐに用意をします。」

 

 

***

 

哲郎は2人を連れてエクスの部屋の前に来た。

 

「エクスさん?哲郎です。

2人を連れて来ました。」

 

哲郎は扉をノックした。

 

「……待っていたぞ。 入れ。」

 

重々しく扉が開いた。 哲郎は違うが、ファンとアリスは遠慮気味に扉をくぐった。おそらく、この部屋は本来 普通の生徒は滅多に入れない所なのだろう。

 

「失礼します。」

 

哲郎は2人と一緒にエクスの前の椅子に腰を下ろした。

 

「お兄様 お久しぶりです。」

「ファン お前はここに来てからも何も変わってないな。」

 

こうしてみるとやはり兄弟だ と哲郎は漠然と思った。

 

「それで、僕たちをここに連れてきた要件は何ですか?」

「そうだな。お前たちに来てもらったのは他でもない。」

 

 

 

エクスは重々しく口を開いた。

 

「お前たち3人に、あの3人と公式戦をやってもらう。」

「「「………………ハッ!!!!?」」」

 

3人は同時に驚きの声をあげた。

 

「バカな!!! 僕はともかく この2人にまで出ろというのはどういうつもりですか!!!?」

「バカはお前だろ。 お前は1度でも2人の実力を見たのか?」

「!!!」

 

同様で興奮した哲郎の抗議をエクスは切って落とす。

核心を突かれて哲郎は言葉を失った。

 

「……ではあなたは2人の実力を信頼していると?」

「そんなことは無い。第一そこのアリスとは初対面だ。」

「……だったら、何を根拠にそんなことを」

 

哲郎の質問をエクスは次々にさばく。

 

「確かに2人の実力は奴らには及ばない。

だが、実力差(そんなもの)は戦略と技術があればいくらでも埋められる。

実際、お前は【慢心している人には負けない】と言ったそうじゃないか。

今の奴らはまさしくその類 そうは思わないか?」 「………!!!」

 

この男には自分の考えを全て見透かされているのか と哲郎は痛感した。

 

「それから、今のお前たちでは公式戦を申し込むことはできない。

だから、俺の推薦でお前たちは俺の差し金で来たということにする。

方式は3対3の団体戦だ。」

「……それは構いませんが、勝算はあるんですか?」

「勝算はこれから作るのさ。

こいつらに奴らの対策とマーシャルアーツを叩き込んでな。」

 

マーシャルアーツ

その言葉に哲郎ははっとした。

この学園の生徒からその言葉が出てくるとは思ってもいなかった。

 

「この学園で、それが通用するんですか?」

「もちろんだ。 この地域、特にグス共にはマーシャルアーツは魔法より劣っている物だという考えが根付いている。

だが、俺はそうは思わん。 むしろ、人間を短期間で強くするにはこれ以上の方法はないと思っているくらいだ。

その鍛錬が相手の対策に特化しているなら、尚更 効果的だ。」

「………なるほど……」

 

シニカルな口振りではあるが、とても理にかなった考え方をするな と感心させられた。

 

「昨日 教えた通り、グスは筋力に物を言わせた格闘を、そしてアイズンは鉄の、ロイドフは植物の魔法を扱う。

それを想定して鍛えれば実力差くらい どうにかなる。

それに奴らは十中八九 お前たちを甘く見て何の対策もしないだろう。

そこに漬け込む隙は十分にある。」

「「「…………」」」

 

当初こそ驚いていた2人もエクスの説明を聞いていくうちに頷いていくようになった。

 

「作戦実行は2週間後だ。それだけあれば十分だと思っている。

それから言っておくが、今までの話は全て あくまでも勝てる可能性が上がる と言うだけで、勝てるかどうかはお前たちに懸かっているということを忘れるな。」

 

哲郎、そしてファンとアリスも首を縦に振った。

いじめに対する方法が依頼するだけだと思っていて、何も出来ないのが悔しいと心の奥底で思っていた彼らにとって、この提案は渡りに船だった。


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