異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#370 UNVEILED ABILITY

《転生者》には基本的に《転生者》でしか太刀打ち出来ない。

哲郎はラミエルから言われたこの理論を疑っている訳では無い。しかし一方でそれを証明する状況に立ち会った経験が無い事もまた事実である。

 

そして今、それを証明する大一番が彼の目の前で繰り広げられようとしていた。帝国を狙う《転生者》として現れた廠桓に対するは鬼門組現総監の凰蓮だ。

無論、哲郎も凰蓮の実力を疑ってはいないし気迫は決して廠桓に負けてはいない。しかし例の理論に基づくなら凰蓮の勝ちの目は限りなく薄い。哲郎のその懸念を強めているのは未だ謎に包まれた廠桓の能力にある。

 

『━━━━━━━━ロウ、

━━━━━━━━━━━━テツロウ!』

「!」

 

根城の閉ざされた空間の中、哲郎はその声を聞いた。そして鳳巌が撃ち抜かれた時に虎徹に渡された通信の能力を与えられた札を落としてしまった事に気付く。幸運にもその札は数歩歩くだけで拾う事が出来た。

 

『哲郎!! おい哲郎!! 聞こえるか!?』

「虎徹さん!! すみません、お札を落としてしまって!」

 

哲郎が札を取り落としてから一分強。その間虎徹はずっと呼び掛けていたのだと気付くと哲郎は自分の迂闊さを同時に理解させられた。

 

『おぉそうか。その様子だと大事は無さそうじゃな。

よく聞け。敵の正体は廠桓じゃ。襲われた組の者がそう言っておった!!』

「…………えぇ。その人なら今、僕達の前に現れましたよ。」

『!!?』

「あともう一つ、今その人が凰蓮さんと━━━━━━━━」

『ガァン!!!!』

『!!!』

 

それは、哲郎の眼前にて凰蓮と廠桓がぶつかり合った音だった。

具体的には、廠桓が自分の身長程の高さまで跳び上がり、大柄な凰蓮の顔面へ向けて蹴りを放った。対する凰蓮はその蹴りを腕で防御した。

 

『おい何じゃ今の音は!! 何が起こっておる!!!』

「…………今、その人が凰蓮さんと戦っているんです………………!!!」

『!!!?』

 

哲郎と虎徹がそれだけの会話を交わす間にも凰蓮と廠桓の戦況は変わっている。廠桓の追撃を凰蓮は弾き飛ばし、その衝撃によって二人の間に距離が生まれた。

 

「………え、廠桓様……………!!?」

「一体どうして此処に…………!!?」

「総監殿、一体何を━━━━」

「一同、狼狽えてはいけません!!!!」

『!!!』

 

帝国の政治に深く関わっている廠桓がこの場に居て、剰え凰蓮と交戦している。帝国民の誰が見ても余りに異様なその光景に戸惑う者が出始めるのは自明の理だ。大混乱にも発展しかねないその動揺を凰蓮の一喝が止める。

 

「此の者はたった今、我々の一員に凶刃を向ける大罪を犯しました!!! 彼の立場がどうであろうと此の事実は揺るぎません!!!

鬼門組の総監として私は彼を確保します!!!!」

「随分と威勢が良いな。なら先ずはその減らず口を利けなくしてやるよ!!!」

 

廠桓は地面を蹴り飛ばして跳び上がり、凰蓮の顔面へ目掛けて蹴りを見舞う。まるで刀を突きさすような鋭い蹴りだ。しかし凰蓮は身体を軸回転させてその蹴りを躱した。

 

「ならば私も貴方の軽口を塞ぎましょう!!!!」

「!!!」

 

蹴りを躱され空中で無防備状態の廠桓の顔面に凰蓮の拳が突き刺さった。彼の体重と筋力が全て乗ったその攻撃は廠桓の身体を軽々と殴り飛ばし、地面に何度も激突しながら十数メートル程吹き飛ばした。誰の目から見てもその一撃は決定的に映る。その中で哲郎の心中だけが穏やかでは無かった。

 

「!!」

「ハアッ!!!!」

 

吹き飛んだ廠桓に凰蓮は一気に距離を詰めた。両手で武器を振り上げ、今にもその刃が廠桓に炸裂しようとしている。

これが止めの一撃になろうかと思われたその時、哲郎は見た。廠桓が懐から小型の刃物を取り出す、その光景を。

 

(な、何だ……………? あんな小さなナイフで何を━━━━)

 

凰蓮が今にも刃を振り下ろそうとするその僅かな時間の中で、哲郎は廠桓が刃物を取り出したという事実しか認識出来なかった。それで凰蓮の一撃を受け止め切れる筈が無い事など火を見るよりも明らかである。

そして廠桓は奇妙な行動を取った。凰蓮が攻撃するまでの時間の中で、手首に刃物を当て、一気に引き切ったのだ。

 

『ガァンッッ!!!!!』

「!!!!?」「!!!!? なっ…………!!!?」

 

それは、凰蓮が振り下ろした刃と廠桓の防御(・・)が衝突した音だった。

廠桓の眼前に突如として流動的な赤い液体が噴き出し、廠桓を守るように変形して凰蓮の刃を受け止めた。

 

「!!!」

 

常識的に考えて有り得ないその現象は、廠桓が《転生者》の能力を使用したとしか考えられない。そう思考した瞬間、哲郎の中で散らばっていた不審な点が一本の線で繋がった。

 

本来有り得ない速度での長距離の移動

何処にも痕跡が残らない不審な赤い矢

自在に動く赤い刃や赤い盾

 

それらの一見無関係な現象を説明出来る言葉が哲郎の口から漏れた。

 

「…………………………………《血》?」

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