異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#374 The Bloody Marionette

突如として発覚した敵の《転生者》の存在、遂に明らかになったその能力。それらの情報に意識を割かれた結果、哲郎は今自分が何処(・・)に居るのかを失念していた。

哲郎は今、鬼門組と鳳巌の一味が衝突している、その現場に居合わせている。凰蓮と共に廠桓という敵と戦っているが、一歩でもそこを離れれば隊員達と犯罪者達が入り乱れる混沌が広がっている。哲郎をその事実へと引き戻したのは他でも無い鳳巌だった。彼は憤怒の形相を浮かべながら廠桓に殴りかかった。

 

*

 

「ほぉ、こいつァ意外な援軍だな。」

「何者かは知らんが貴様、一体黐詠に何をした!!!!」

 

哲郎は思いがけない時点で人の姿を目にすると咄嗟にその人物の名前を口に出す癖がある。特にこの最近、極限状態が続く場合にはその癖がより顕著に現れているという自覚があった。しかし今回はその癖が出なかった。それは人の命を軽んじる極悪非道の犯罪者、少なくとも帝国がそう扱う目の前の男に敬称を付けるべきか否か、迷ったからだ。

 

しかし今、その極悪非道の犯罪者 鳳巌が廠桓に拳を見舞っている。顔に憤怒の形相を浮かべ口から娘の名前を発するその姿は娘の身を案じる父親にしか見えなかった。

 

(ハラワタ)を撃ち抜いたと思ったが、意外に頑丈だな。やはり凰蓮と引き分けた男は身体の作りが違うようだなァ!!!」

「!!?」

 

鳳巌の拳は確かに廠桓の胸部を直撃していたが、その衝撃は彼の体内には届いていなかった。それを証明すると言わんばかりに廠桓は反撃に転じる。

彼が身に纏っていた血の鎧、その腹部が液体状に変形し、鋭く伸びて鳳巌に襲い掛かった。鳳巌はその血の槍を咄嗟に腕で受ける。片腕を一本犠牲にしたが、槍が顔面を通して命を貫く、最悪の事態は避けられた。

 

「~~~~~~!!!

ヌゥンッッ!!!!」

「おっ!?」

 

腕に風穴が開いた、その激痛を封じ込めて鳳巌は身体を捻り、槍を通して繋がっていた廠桓を投げ飛ばした。しかしそれは決定打は疎か体力を削る事すら叶わなかった。哲郎の見立て通り、廠桓は背中に流動化させた血液を展開して落下の衝撃を全て吸収した。

 

「…………何だ貴様の其の、面妖な鎧は…………!!?」

「うるせぇな。答える必要が何処にあんだ。

因縁を作って此処に凰蓮と《CHASER》を呼び寄せる、それでお前の役目は終わってんだよ。大人しく寝てろ!!」

『ゴッ!!!』「がっ………………!!!?」

 

それは、鳳巌の顎が殴られた(・・・・)音だった。しかし単純な現象である筈のそれを哲郎は理解出来なかった。他でも無い鳳巌が自分自身の顎を殴ったからだ。

顎への衝撃により脳が揺れ、鳳巌は地面に倒れ伏した。その音を聞いて哲郎は漸く、その不可解な現象の謎を理解した。

 

(あれも血を操る能力か。やっぱり僕の考えは当たっていた!!

きっと血の槍を鳳巌の腕に突き刺したその時、自分の血を鳳巌の腕に流し込んだんだ!! 多分それが廠桓が人の身体を操る条件……………!!)

「おっとその顔、俺の能力がまたバレちまったか?」

「!!」

 

哲郎が目の前の現象から必死に情報を抽出しようとしているその時、廠桓が哲郎へ視線を向けながら、余裕という感情を含ませた言葉を呟いた。

 

「そうさ。俺の血を流し込まれりゃ忽ちそいつは俺の操り人形って訳だ。だがこいつは頑丈でよ、腕一本しか操れなかった。

あいつら(・・・・)と違ってな!!!」

『!!!?』

 

廠桓は大広間の奥を指差しながらそう言った。哲郎がその方向に視線を向けた瞬間、隊員の一人が哲郎に向かって飛んで来る。哲郎は咄嗟の動きで隊員の身体を受け止めた。

 

(!!! これは…………!!!)

 

哲郎は受け止めた隊員の身体の状態を見て、はっと息を飲んだ。彼の身体は切り傷に覆われていた。手足や目は負傷していないが、それでも正視に堪えない光景だった。

 

「お、凰蓮総監………………!!!」

「!!」

「確りするのです!! 彼の鳳巌の娘にやられたのですね!? 人を操るばかりでは無く凶暴化させるとは………………!!」

「い、いえ、それだけ(・・・・)では無く……………………!!!」

『ウワアァァァァッ!!!』

『!!!?』

 

その時、多数の男達の絶叫が哲郎達の耳に届いた。その方向に視線を送り、哲郎は目を疑った。大勢の男達が鮮血を撒き散らしながら宙に舞い上がる、阿鼻叫喚の光景がそこには広がっていた。

 

(あ、あれも黐詠(・・)が……………………!!?)

「ブルアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!」

「!!!!?」

 

その声は、哲郎がつい先程聞いたばかりの声だった。その声を聞いて哲郎は男達の向こう側に一つの可能性を思い描く。それは現状集まっている判断材料を掛け合わせた中で最悪の可能性だった。

 

「………まさか、あの人(・・・)が……………!!!!!」

 

哲郎は未だにその人物(・・・・)の名前を知らない。しかしその人物の顔も、力量も、そしてその凶悪さも身に染みて記憶している。

 

牛檑

 

哲郎が思い描いたのは彼が廠桓に操られている、その最悪の可能性だった。

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