異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#38 Partizan

「……以上で話は終わりだ。

ところでテツロウ・タナカ。 俺と立ち会う気は無いか?」

「?」

 

エクスは突如 突拍子もないことを言い出した。少なくとも哲郎にはそう感じられた。

 

「どうして?」

「あの3人を潰すのはあくまでも段階の1つに過ぎない。その後はラドラ共の目論見も潰そうと考えている。そこでだ、お前の実力をこの身体で体験しておきたいと考えているんだ。」

「………なるほど………。

それで、あなたは自分と彼の、どちらが強いと考えているんですか?」

「もちろん俺だ………と 言いたいところではあるが、いかんせん ヤツの情報も少ないからな。」

 

「……そうですか。しかし、公式戦でもないのに寮のトップと一生徒が立ち会うのはまずくはないですか?」

「それは問題ない。この学園の離れに俺の私有地の場所がある。

そこでなら人目を気にせずに戦える。」

 

 

 

***

 

 

「それでは恐縮ながら、ルールのおさらいをさせていただきます。」

「分かりました。」

「やるなら早くやれ。」

 

場所は変わって学園の離れ。

哲郎達はエクスに案内されて彼の私有地の闘技場に来ている。

 

そこで哲郎はエクスと対峙していた。

 

「ルールは魔界コロシアムと同様、魔法も武器も使用を認めます。

相手が負けを認めるか、あるいは動けなくなった時に試合が終了します。」

 

魔界コロシアム

哲郎がついこの前まで身を置いていた環境だ。あれを乗り越えたならきっと、どんな敵にも負けないだろうと 自分に言い聞かせて己を奮い立たせた。

 

「両者、元の位置へ!!」

 

哲郎とエクスは相対した。

遂にゴングが鳴らされる。

 

「始めてください!!!」

 

試合開始と共に、哲郎は左腕を伸ばし、右腕の弓を引いた。

 

「…ほう。 それが【カジキの構え】か。」

 

哲郎の五体に刻まれた魚人武術 それを武器に魔界コロシアムを勝ち上がったのだ。

しかし エクスは意に返さずにゆうゆうと片手をあげた。

 

カッ! 「?」

 

エクスがとった行動 それは ただの【指パッチン】だった。 しかも、ノアのものとは違って何も起こらない。

 

「………………… ッッ!!!!?」

 

突如、上空に嫌な気配を感じて上を見上げると、何かが哲郎 目掛けて降ってきた。

 

「ッッッ!!!!!」

 

哲郎はほとんど 条件反射で横っ飛びに躱した。 すぐに哲郎のいた場所にそれ(・・)が深深と突き刺さり、轟音と土煙が巻き起こった。

 

「何だ!!!??」

 

土煙が晴れた場所に突き刺さっていた物は━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「剣!!!!?」

 

言葉の通りの剣 だった。

勇者の手に似合いそうな大剣が地面に深深と突き刺さっていたのだ。

 

「……ほう。あの1発を避けたか。」

 

哲郎は何とか着地に成功した。

そして、再びエクスと向かい合う。

 

「………今のは………!!?」

「そうだ。今使ったのが俺の魔法(ちから)

具現化魔法 《無限之剣(パルチザン)》だ。」

 

無限之剣(パルチザン)

エクスの扱う 具現化魔法

自分の魔力が続く限り、何も無い所から剣を生み出すことが出来る。

 

「……何をやっている?

攻撃はまだ 続いているぞ?」

「!!!?」

 

哲郎が気配を察して見た方向から再び別の剣が飛んできた。

哲郎は身体を捻って攻撃を躱す。

 

「……かなりのものだな。

だが、これはどうだ?」

「!!!!!」

 

哲郎が上を見上げると、再び上空に幾つもの(・・・・)剣が浮かんでいた。

 

神罰之剣(ジャッジメント・レイズ)》!!!!!

 

哲郎の身の丈ほどもある剣がまるで雨あられのように降ってくる。しかし、哲郎にとっては経験済みの状況だ。

何しろ、この手の攻撃は魔界コロシアム 決勝戦でノアから受けているのだから。

 

哲郎は剣の隙間を縫うようにして躱し、エクスとの距離を詰める。

そして、剣が突き刺さる時にできる土煙を逆利用してエクスとの死角を作り、遂に間合いに入った。

 

「!!!」 突如 目の前に現れた哲郎にエクスもたじろぐ。

その隙を見逃さずに一瞬の動きでカジキの構えを取り━━━━━━━━━━━━

 

 

 

バチィン!!!!! 「!!!!?」

 

魚人波掌を叩き込んだ。

哲郎のメインウェポンだ。

エクスの魔力量が並外れていることは想像にかたくない事。

そこに全力で衝撃を流し込んだのだ。立っていられる筈が無い。

 

 

 

━━━━━━━━━━━と、思われた。

 

 

「!!!?」

 

哲郎の目に土煙が晴れて飛び込んできた光景は、自分の掌が剣に当たっている というものだった。

その瞬間、剣は粉々に壊れる。

 

「……これ程のものか。 魚人武術という物は。 俺の魔力の塊の剣を一撃で破壊たらしめるとはな。」

 

あの煙幕から放った攻撃に対処して見せた

哲郎にはとても受け入れられない自体だった。

 

バチィ!!

 

エクスが剣を振り上げて、哲郎は弾き飛ばされた。我に返り、すぐに体勢を立て直して受身を取る。

 

「魔界コロシアム 準優勝者の実力がこの程度とは笑わせるな!!

これは試合なのだから全力で来い!!!」

 

エクスの一喝が広場にこだました。


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