《転生者》の能力が完全無欠では無いという事は、ゼースと最初に戦った時に理解している。仮に《適応》の能力に欠点が存在しないと言うならば、自分が激痛に苦しむ事は有り得ない。
そしてその法則は自分だけでは無く、《転生者》全員に例外無く言える事だと哲郎は
*
廠桓は自分が蹴り飛ばした哲郎を見下ろしている。彼の頭を覆う血の兜の下に彼の不敵な笑みが見えるようだった。
「……………………!!!」
「どうやらまだ諦めてねぇようだな。往生際の悪いガキは嫌いだぜ!!」
「!!!」
哲郎は今、廠桓が操っている人々が積み重なった人の山の上に居る。それは即ち廠桓の傀儡に囲まれているという事だ。
廠桓が指を振ると、即座に哲郎の周りに居る人々が一斉に襲い掛かる。それすら廠桓にとっては手に持った武器で攻撃するような行為でしかない。
「はっ!! やぁっ!!!」
「! ほう…………。」
哲郎は最初の一手を跳び上がって躱し、そのまま身体を浮上させて天井近くへと逃れた。哲郎はその行為で廠桓に『自分が向かって来なければいけない』と訴えかけたつもりだったが、廠桓は予測していたように口を開いた。
「やっぱり魔法も碌に使えない雑魚共じゃ《転生者》の足止めにはならねぇか。」
「操ってる張本人の貴方がそれを言いますか……………!!!」
「おいおい、こっちは褒めてやってるつもりなんだぜ?
見ろ。天下の凰蓮総監殿はその雑魚共の相手で手一杯だ。
「……………!? 何が言いたいんですか!?」
『━━━━おい、哲郎!!』「!」
それは、札から聞こえて来る虎徹の声だった。しかし、敵を前にした今応対している余裕は無いと考えた。だが廠桓はそれすら予測していたように哲郎に向けて言った。
「良いぜ出ろよ。俺も人の電話を邪魔する程野暮じゃねぇ。それに
「………………!? 虎徹さん、聞こえますか!?」
『哲郎!! やっと繋がったか!!』
廠桓の意図を不審に思い、前方に最大限の警戒心を向けながらも虎徹との通話に応対する。
「すみません。話せる状態じゃなくなってしまっていて……………!!」
『詫びは良い!! 今の状況を簡潔に話せ!!』
「はい。今は凰蓮さんと一緒に敵と戦っています。敵の能力は血を操る能力。そして今、大勢の人が操られています。その中には黐詠や、牛檑っていう人も……………!!」
『牛檑、彼の荒くれ者か。昼間の襲撃の再来という訳じゃな。
止むを得ん。今から儂も其処へ行く!! 儂の
『カァン!!! カァン!!! カァン!!! カァン!!! カァン!!!』
『!!!?』
札を通して聞こえて来るその音を哲郎は知っていた。それは陸華仙に備え付けられた、異常事態を報せる半鐘の音だ。その音が鳴るのは本日二度目。即ち帝国最高の厳重さを誇る陸華仙が日に二度の攻撃を受けたという事だ。
その音を札を通して聞いていた廠桓は不敵な笑みを浮かべ、誰に言うでもなく呟いた。
「…………始まったな。」
***
虎徹も彩奈もその半鐘の音が聞こえる筈が無いと思った。
自分達が今居る陸華仙の警護用の個室でその音が聞こえるという事は陸華仙に異常事態が起こったという事であり、しかもそれは本日だけで二度目だからだ。
「虎徹さん、これって……………!!!」
「あぁ間違い無い。彼奴の仕業じゃ。飽くまでも帝国を根本から揺るがす腹積もりのようじゃな。」
虎徹の札から聞こえた哲郎の通信を彩奈も聞いている。彼女は廠桓の顔を知らないが、血を操るという物騒な能力、そして先程の大量の暴徒を生み出したという行動が彩奈に恐怖心を植え付けた。
「…………主は此処に居ろ。」
「えっ!?」
「今から人目を盗んで此の事態の詳細を確認しに行く。状況が彼奴等だけで対処出来るならば主の能力で哲郎の元へ行く。儂の
虎徹だけが戦場へ向かうという提案に彩奈は首を横には振らなかった。自分に戦闘能力は無いが虎徹を送り届ける事は出来る。虎徹に出来なくても自分にはそれが出来るのだ。
「わ、分かりました。準備を━━━━」
『ズガァンッッ!!!!!』『!!!!?』
それは、天井を破る音だった。堅牢な筈の陸華仙の天井板を破って一人の人物が二人の前に姿を現した。
その人物は無造作に刈り上げられた緑色の髪と長い牙を持った長身の男だった。その人物は鳳巌の下に就く凶悪犯の一人、《
そして一際二人の目を引いたのは彼の