異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#382 The Trust and Mocking

鳳巌の根城に居る鬼門組の人間は総監の凰蓮を始めとする百人程の隊長と隊員達。それ以外の面々は陸華仙に待機している。

譬え鳳巌の根城に奇襲を掛けるという任務が帝国の命運を握る一世一代の作戦だったとしても、それに全ての戦力を投入する訳には行かない。戦力が手薄になった本部を狙って襲撃する人間が居ないとも限らないからだ。

 

そして、その懸念は現実のものとなった。総監の凰蓮は不在、居合わせているのは苺禍を始めとする数名の隊長と一般の隊員達、その状態の陸華仙を襲撃する者が居た。襲撃犯は二名の著名な凶悪犯を始めとする、敵の《転生者》廠桓に操られている鳳巌の下に就いた犯罪者達。

一人目の凶悪犯は虎徹達が居た部屋に侵入した烽鰐という男。そしてもう一人は陸華仙の正門から襲撃を試みた羆緋という男。陸華仙に二人の襲撃犯が現れたという衝撃的な事実を、哲郎も虎徹の能力を通して聴いていた。

 

*

 

「……………………………!!!!」

 

哲郎は口を押えて耳に飛び込んでくる情報の数々を聞いていた。そうでもしなければ虎徹が隠し持っている札から聞こえてはいけない自分の声が漏れて聞こえてしまいそうだった。

その様子を、廠桓は口角を上げて見下ろしていた。自分の立てた作戦に敵が完璧な程に嵌ったその一部始終を優越感に浸りながら見ていた。

 

「どうしました哲郎さん!! 一体何が!? 何処から何が聞こえて来たと!!?」

 

哲郎の尋常ではない様子に、凰蓮もまた彼が受け取った情報の重大性を感じ取った。襲い掛かって来る暴徒達を制圧しながら辛うじて哲郎に言葉を投げ掛ける。自分より遥かに年若い少年に何も出来ない自分を恥じていた。

 

「今、陸華仙に襲撃者が、《ふがく》と《ひひ》という人が襲い掛かって来たって……………!!!」

「!!!? 何ですって……………!!!」

 

その言葉を聞いた凰蓮が真っ先に思い浮かべたのは、哲郎が言った帝国を狙っている人間の存在だった。

帝国を狙う、その言葉の意味を自分は全く理解していなかったのだと凰蓮は悟った。彼は当初、敵が狙っているのは自分であり、自分の身を自分で守りさえすれば最悪の事態にはならないと断定していた。しかし、哲郎の言葉がその予測が一切の的外れだった事、敵の狙いが自分だけでは無かった事を理解した。

何者でもなかった、帝国の情勢など全く知らなかった、ただの漁村出身の少年だった自分が鬼門組の総監という肩書きを得て真っ先に思った事は本部 陸華仙の堅牢さだった。これから自分が働き、引っ張っていくここは帝国の権力の大砦であり、ここを襲う無謀な人間など居る筈が無いと心の何処かで思ってしまっていた。

 

だからこそ凰蓮は、人を操って陸華仙を襲撃する廠桓の、その執念に驚愕した。彼ははったりや蛮勇では無く、本気でこの帝国を潰そうとしているのだと理解させられた。

仲間が居る、自分の手の届かない場所が危険に晒され、明らかに動揺している哲郎に声を発する。この状況で彼が哲郎に出来る事はそれ以外に無かった。

 

「狼狽えてはいけません!!!」

「!!?」

「私達は此の場を平定する事に全霊を注ぐべきです!!! 陸華仙には優秀な人間がたくさん残っています!!!

彼等ならば必ずや襲撃犯を制圧するに違いありません!! 貴方も見た(・・・・・)、彼等の力を信じるのです!!!」

「!!!」

 

その時、哲郎の脳裏に過ったのは隊長の一人、驍梔の存在だった。

彼は妖術(魔法)と剣技を掛け合わせた神業で暴徒と化した人々を無力化した。その御業を哲郎は手放しで称賛した。相手を傷付ける事無く無力化するという、自分にも出来なかったそれを軽々と実行する彼の技量に感嘆とした。

その彼と同格の隊長が陸華仙には数名残っている。彼等の実力を信用しろと、凰蓮はそう言っているのだと悟った。

 

「凰蓮さん……………!」

「━━━━ふっふっふ……………

あっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」

『!!?』

 

凰蓮の言葉を聞いて、哲郎の表情は安心故に一瞬綻んだ。

その哲郎を嘲るように廠桓は今までで最大の高笑いを発した。まだ何か隠しているのか、二人は直感的にそう訝しんだ。

 

「……………何が面白いんですか……………!?」

「いや何、お前等の想像力が乏しすぎて笑っちまっただけだよ。ならはっきりと教えてやるよ。

おい、止まれ!!!」

「!?」

 

廠桓の言葉と共に、哲郎達を囲んでいた隊員や犯罪者達が一斉に動きを止めた。

 

「……………一体何のつもりですか……………!!!」

「そう怖い顔するなよ。俺はただお前等に情報をくれてやろうと思ってるだけだ。

まぁ尤も、それをお前等がどう受け取るかは分かったもんじゃねぇ。世の中に走らない方が良い事もごまんとあるしな!!」

 

廠桓の言葉が何を意味しているのかを考えるよりも早く、廠桓は懐から魔法具を取り出していた。それは遠隔で映像を表示する水晶のようだった。

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