異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

384 / 462
#384 Dwarf Protect Hand

哲郎が鬼ヶ帝国に潜入してから二日が経過している。その間、哲郎が帝国に居る事を知っている廠桓は自由に動ける状況下にあった事になる。哲郎がその事実に気付いた時には既に全てが完了してしまっていた。

 

結論から言うと、廠桓は与えられた二日という時間を極めて有効に活用していた。哲郎もまた時間を空費してはおらず、情報を収集する事に努めていたが廠桓はその何枚も上手を行っていた。

廠桓は哲郎が気付かない間に準備を進めていた。自分の傀儡を着実に増やし、この時に備えていた。彼が傀儡を操って襲撃する場所に選んだのは三つ、凰蓮が居る根城、鬼門組最高機関 陸華仙、そして帝国の政治の中枢機関《逢魔ヶ宮殿》だ。

 

*

 

哲郎は目の前に映された金色一色の豪華絢爛な建物、逢魔ヶ宮殿の外観を見た瞬間、一つの事実を理解した。

虎徹曰く、逢魔ヶ宮殿は外観以外の一切の情報が秘匿されている。その理由は言うまでも無く万が一にも現れかねない外敵から安全を守る為だ。何者かが宮殿内に立ち入っても内部構造が分からなければ目的地に辿り着くまでに時間が掛かる。その時間がそのまま危険を排除する猶予へと変わる。

 

だからこそ、哲郎は逢魔ヶ宮殿が襲撃される可能性を無意識の内に排除していた。宮殿を襲撃するにはその内部構造という機密情報を仕入れ作戦を立てられるという非常に厳しい条件を満たす必要があるからだ。

そして不幸にも、目の前の廠桓はその条件を満たす数少ない例外だった。

 

(なんて事だ!! 廠桓が帝国の政治の関係者だと分かっていたのに、何でこの可能性に気付かなかった!!

廠桓なら宮殿の内装を知っていても何もおかしくは無い!! それなのに、敵の能力ばかりに気が向いて……………!!!)

 

この時、哲郎は権力が悪用される事の恐ろしさを理解した。権力とは自分より下の人間や自分のいる場所の状態を意のままに動かす事の出来る力であり、廠桓程にもなればその力の及ぶ範囲は計り知れない。

敵の《転生者》が悪用すれば、その権力の及ぶがそのまま危険に晒される事になる。廠桓が逢魔ヶ宮殿を襲撃する事が出来ている事が、そのままそれを証明している。

 

哲郎がその事実を理解するのに掛かった時間は僅か数秒。その直後、廠桓は言葉を発した。

 

「ふっふっふ。驚いて言葉も出ねぇみたいだな。そんなお前に選ばせてやるよ。」

「!?」

「お前の次の行動を邪魔しないでやるって言ってんだよ。

何でも良いぜ。俺を攻撃しても良いしそいつらの数を少しでも減らそうとしても良い。何がお前にとって最善か、考えて決めろ。」

「……………!!!」

 

その言葉を聞いた哲郎の脳裏に真っ先に浮かんだのは、『罠』という可能性だった。人の命を軽んじ、無関係な他者を操るという哲郎が最も嫌う行動を平然と取る目の前の男の発する言葉など信用に値しない。

ならば廠桓を攻撃するという選択は論外として真っ先に切り捨てるべきだ。かと言って彼の傀儡を攻撃した所で大した効果も見込めない。この二つが除外された今、哲郎に残された選択肢は一つしか無かった。

 

「虎徹さん!!! 今聞いた通りです!!!

廠桓はこのまま僕達が相手をします!!! ですから虎徹さん達は宮殿を守って下さい!!!!」

 

虎徹の能力が付与された札を手に取り、哲郎はそう叫んだ。

ここまで大声を発すれば虎徹以外、その場に言わせている面々にも哲郎の声は聞こえただろう。廠桓の出した映像を見ていない彼等は、『宮殿を守れ』と言われても信用しなかっただろう。それで多少の混乱が起ころうとも、哲郎は構わないと思った。宮殿に危険が迫っている事は紛れも無い事実であり、それを防ぐ方法はこれ以外には無いからだ。

 

「……………俺を攻撃するのは止めにしたか。なら俺もそうさせて貰うぜ。

行けぇっ!!!」

「!!?」

 

廠桓が声高にそう叫ぶと、彼に操られている者達が一斉に行動を開始した。しかし、それは哲郎や凰蓮を狙った攻撃では無い。彼等は哲郎達を無視して、一心不乱に駆け出した。その向かう先に何があるのか気付いたのはその直後だった。

 

(!!! その方向にあるのは━━━━━━━━!!!)

「こいつ等にお前達の相手をさせるのは止めにしたぜ!! 娑婆で暴れて貰えばそれで十分。そこに居る目障りな連中を蹴散らす役をそいつらに任せる事にしたぜ!!!」

「何をしてるんですか!!! 貴方の相手は僕達でしょう!! 僕達を攻撃すればそれで良いじゃないですか!!!」

「お前こそ何言ってんだ? 俺の相手はお前等だけじゃない。最初からこの帝国全体が俺の目的だ。

止めて欲しけりゃどうにかして見ろ!! お前のその足なら追い付く事は出来るだろ!? まぁその後、止められるかは分からねぇがな!!!」

「!!!」

 

廠桓の言う通り、哲郎が速度に《適応》すれば操られている彼等に追い付く事は出来る。しかしその後、彼等全員の脱出を阻む、自分がその行動を実行する姿が思い浮かばなかった。

 

「今一瞬でも出来ないって思ったろ!? それが全てだ!!

お前の能力は万能なんかじゃねぇ!!! 精々自分の身を守る位が関の山の、ちんけな力なんだよ!!!」

「!!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。