異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#388 How To Beat? 1

二人の《転生者》 虎徹と廠桓の戦いは互角の立ち上がりを見せた。

虎徹の《墨汁》の能力は命中すればあらゆるものを無力化し、そこに文字を書き込めばあらゆる性質を付与出来る、正に最強といっても過言では無いと、哲郎はそう考えている。その優位性は廠桓であっても例外では無い。

しかし、廠桓は己が血液を操作する能力を駆使して虎徹の能力を攻略した。自分の能力を限界を超えて駆使し、相手の能力を攻略した者が勝つ、それが《転生者》同士の戦いである。

 

*

 

虎徹は自分の能力が攻略された、その瞬間を目の当たりにしても動揺を見せなかった。今の廠桓は血の鎧の隙間を完全に埋め、虎徹の墨汁を完全に防御する体制を整えている。加えて赤血球の中の酸素を絶えず鎧の中に送り届ける事により、呼吸の問題も解決している。

廠桓が鎧に隙間を開ける事は決してないだろう。虎徹は精神を動揺させる事無く、その事実だけを受け止めていた。

 

「━━━━哲郎、主が鎧を破れなかったという事は、彼の技、魚人波掌とやらも奴には通じなかったと考えて良いのじゃな?」

「! はい。それを撃ち込んだ瞬間、あの血の鎧が水のようになって、衝撃が通り抜けたんです。」

「血液凝固の解除も自由自在という訳か。ならば血液で出来る事は全て知っていると考えて良いじゃろう。腐っても鍛錬を積んだ《転生者》じゃな。」

 

廠桓の血液を操作する能力が高水準に達していると知った虎徹が真っ先に思い起こしたのはつい先程自分が札の中に閉じ込めた、正気を失っていた暴徒達だった。

陸華仙を襲撃した暴徒が廠桓の差し金であると分かり、彼の能力が血液を操作するものであると分かり、その二つの情報を統合させて血液で人間を操作する方法があると瞬時に結論付けていた。彼我の能力に優劣は無い と。

 

「主の能力が鍛えられているという事は認めてやろう。じゃが状況は三対一、主の望みの傀儡ももう居ない。その醜い兜の下が何時迄したり顔でいられるか、確かめてやるとしよう!!」

「何勘違いしてんだ? 三対一じゃねぇよ!!」

『!?』

 

そう廠桓が言った瞬間、虎徹が懐にしまっていた札が、廠桓が操っていた男達を閉じ込めていた札が一斉に震え出した。次の瞬間には札が破れ、二つの人影が哲郎達の頭上を通過する。廠桓に操られていた黐詠と牛檑が虎徹の拘束から脱出したのだ。

哲郎達が反応する暇も無く、黐詠と牛檑はまるで従者のように、廠桓の両隣に立って構えを取った。

 

「脱出出来たのはこいつ等だけか。だがこれで三対三だ。お前の方こそ、いつまでそんな余裕こいていられるか俺が直々に確かめてやるよ!!!」

 

虎徹の墨汁を無力化する為に、廠桓は血の鎧の隙間を完全に埋めているが、視界を確保する為に目の部分は赤血球を抜いて血漿だけの状態にしている。その黄色く濁った部分から覗く目は笑っていた。

鬼門組の隊員達には申し訳ないが、今の状態の黐詠と牛檑の二人だけで根城に居た他の男達全員に相当する脅威になると哲郎は感じていた。

 

「━━━━いやまぁ、《転生者》二人相手にこの戦力じゃ心許ねぇかもな。もう一人くらい増やしとくか!!」

「!!!」

 

廠桓は後方に指を伸ばし、指先から血の矢を噴射した。その方向に居るのは先程顎を殴られて昏倒している鳳巌だった。彼の狙いが鳳巌の命では無く、彼を自分の傀儡に変える事なのは火を見るよりも明らかだった。

 

『バシュッ!!!』

「!!?」

 

血の矢は鳳巌に命中しなかった。彼の全身を覆い尽くすように半球体状の黒い壁が展開され、血の矢を防いだのだ。何が起こったのかは明白だった。哲郎の予測を証明するかのように虎徹が口を開いた。

 

「………………!!」

「主はつい今しがたこう言ったな。儂の能力は真っ先に対策していると。

主は既に儂に他者を操る其の技を晒しておる。ならば儂が其の対策を講じておらん筈が無かろうが!!」

 

何時それを行ったかは分からないが、虎徹は廠桓が隙を見て鳳巌を完全に操ろうとしている事を見越し、その対策を講じていた。判断力の高さや危機への対策など、能力以外の要素で虎徹は自分より秀でているのだと、哲郎は理解させられた。

 

(やっぱり虎徹さんはすごい!! このままじゃだめだ!! 僕も何か役に立たないと……………!!

今虎徹さんがやりたい事と言ったらあの血の鎧を突破する事だ!! 僕がその方法を考えるんだ!!

そもそも《転生者》の能力が完全無欠なんて事は有り得ないんだ。確かに能力を物凄く使いこなしてるけど、それでもどこかに弱点はあるに違いない。それを見つけるんだ………………!!!)

 

廠桓はこの短い時間の中で様々な能力の応用を見せている。哲郎は掛け値なしにその精度は自分より上であると認めていた。その上でも能力の穴を見つけようと思考を巡らせる。

哲郎の思考は目の前にある血の鎧の分析に集中していた。その中でも大部分を占めていたのは自分が戦闘の場において拠り所にしていた魚人波掌をあっさりと攻略された場面だった。それに衝撃を受けると同時に、それにこそ能力の弱点があるのではないかと、そう考えていた。

 

(あの時、廠桓は撃ち込まれた衝撃を受け流す為に血液凝固(?)を解いた。そして背中全体(・・・・)が弾けて衝撃が逃げて━━━━━━━━

あっ!!!)

『こ、虎徹さん!! 凰蓮さん!!』

『ん? どうした?』

『あるかも知れません!! 廠桓のあの血の鎧を突破する方法が!!!』

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