異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#390 How To Beat? 3

一部例外を除き、哲郎が出せる最大火力の攻撃、それこそが《杭波噴》という技である。これを受けた者は誰もが無傷では済まなかった。これを使用して無意味だったことは無かった。使いさえすれば何かしらの効果は必ずあると、無意識の内に信じて疑わなくなっていた。

しかし今、哲郎の前にその技を完全に攻略する人物が現れた。その人物は身体の周りを液体で覆う事によって衝撃を逃がし、一切のダメージを追う事無くやり過ごして見せた。その人物とは帝国を狙う敵の《転生者》 廠桓。彼は血液を操る能力を持ち、血の鎧を身に纏って哲郎の攻撃を無力化した。

 

そして哲郎は再び、廠桓の血の鎧に向けて《杭波噴》を繰り出した。その行為は傍目には無意味で愚かな行為に映っただろう。それは廠桓も同じであるが、それは慢心などでは無く純然たる事実である。

先程廠桓が衝撃から逃れた状況と今回の攻撃は何一つとして相違点は無い。ならば当然の成り行きとして訪れる結果も全く同じである。全く同じ結果が現実の世界に反映された。

 

*

 

『━━━━ドパァンッッッ!!!!!』

 

その時、廠桓の背中が弾けた。傍目には廠桓の致命傷にも見えるその光景も、最早この場には自分達の有利を確信する者は居ない。

廠桓は先程と全く同じ防御策を取った。血の鎧の血液凝固を解除し、魚人波掌の衝撃は彼の身の回りを覆う血液だけを通過し、その一切が彼の身体に届く事無く、虚しく空を切った。先程と状況も条件も同じならば、訪れる結果も全く同じものになるのは至極当然である。しかしその現在にも、当時と比較して一つだけ相違点があった。

それは、哲郎も廠桓も(・・・・・・)自分の勝利を疑っていなかったという事だ。

 

『グサァッ!!!!!』

「!!!!?」

 

その音は、廠桓が攻撃された音だった。他の誰でもない、廠桓が一番驚愕していた。激痛が走る部分に視線を送り、その攻撃の正体を確認する。黒く尖った塊が、廠桓の脇腹に深々と突き刺さっていた。

 

(こ、こいつら(・・・・)……………………!!!!)

「はっ!!! 儂の墨(・・・)の数刻分はくれてやったぞ!! 存分に味わうが良いわ!!!」

 

自分を攻撃したのは哲郎では無く、虎徹だという事を廠桓は理解した。その証拠に哲郎の背後で両腕を伸ばし、生物の顎のような状態で構えている彼女の姿があった。

虎徹の能力は《墨汁》。それを練り固めて巨大な槍を作り出し、高速で廠桓に繰り出したのだ。しかし廠桓が真に驚いていたのは虎徹では無く、哲郎の方にこそあった。

 

「お前、見破りやがった(・・・・・・・)な……………………!!!」

「えぇ。さっきと状況が全く同じなら、全く同じ方法で避けると思っていましたよ!!!」

 

哲郎が見破った廠桓の血の鎧の弱点とは、鎧の血液凝固の解除は部分的には行えないという事だ。否、その結論に至るには判断材料が少ないが、魚人波掌の衝撃を受け流す為には一度鎧全体の血液凝固を解除する必要があるという確信には至った。

哲郎はその弱点を突いた。その方法とは魚人波掌を撃ち込んで血液凝固が解除された瞬間、他の者が攻撃を加えるというものだ。この作戦の最も危険な点は実行するにあたって二人が廠桓の相手をする必要があるという事だ。相手が廠桓一人ならばその懸念は無かったが、黐詠と牛檑が脱出し戦線に復帰した事で危険性が跳ね上がった。

その損な役回りを凰蓮が買って出て、幸運にも作戦は滞りなく成功した。黐詠と牛檑に関しても、操っている張本人の廠桓がここまで決定的な負傷を負えば無事ではいられないだろう。この攻撃によって鬼ヶ帝国は廠桓の魔の手から救われた。

 

 

「━━━━━━━━ふっふっふ」

「!!!?」

 

哲郎は目の前の、廠桓が笑っているという現実を認識出来ずにいた。攻撃は確かに成功し、廠桓の脇腹には虎徹の槍が深々と突き刺さっている。いくら《転生者》といえど無傷でいられる筈が無い。

 

(そんなまさか!!! この傷で動ける訳が━━━━━━━━!!!)

「浅知恵働かせやがったなガキが!!! お前の脇腹にも風穴開けてやるぜ!!!」

「!!!」

 

瞬間、廠桓の右手から鋭利な刃物が飛び出した。新たに出血した血を凝固させて作った武器だ。それが一切無駄の無い動きで哲郎の脇腹目掛けて襲い掛かる。哲郎が恐れたのは自分の負傷では無く、彼の血液が体内に混入する危険性だ。

 

「哲郎!!! 伏せろ!!!!!」

「!!?」

『ズバァッ!!!!!』 『!!!!!』

 

それは虎徹の声だった。反射的に身を屈めた哲郎の頭上を黒く丸い影が通過した。それは先程の槍と同様、虎徹が自分の《墨汁》を練り固めて作り上げた刃物だった。それは廠桓の首に直撃した。

 

その時、哲郎の目に映ったのは人の死を最も嫌悪する哲郎にとって最悪ともいえる光景。廠桓の首と胴体が生き別れる、絶命の瞬間だった。

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