異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#41 The letter induce anger

ゴトッ

 

 

それは、静まり返った武道場にぽつんと響いた。

 

「……………!!!?」

 

驚愕したのはファンだった。

 

地面に落ちたのはエクスの持っていた剣の刃だったからだ。

 

「…………まさか……………!!!!!」

 

彼が危惧したのは兄の敗北。

どちらを応援していると言うわけで無かったが、彼は兄の実力に全幅の信頼を寄せていた。

 

土煙が晴れていく。

真実が明るみになった。

 

 

「「……………アアッ!!!」」

 

哲郎もエクスも立っていた。

 

哲郎の胸は真一文字にパックリと裂け、エクスの胸にも哲郎の掌底が直撃していた。

 

 

ゴトッ

 

唐突に2つの音が同時に鳴った。

哲郎が倒れ伏した音と、エクスが膝をついた音だ。

 

しかし、エクスは踏みとどまり、倒れるのを堪えた。

 

「…………………」

「こ、これは…………」

 

 

動揺が場内に起こる中、レフェリーのおとこが手を挙げた。

 

「勝負あり!!!!

勝者、エクス・レイン様ァ!!!!」

 

「…………違う。」

「!?」

 

エクスが口を開いた。

 

 

「…………引き分けだ。」

 

エクスはよろけながらも立ち上がり、哲郎を見下ろした。その口からは一筋の血が垂れている。

 

「…………お前の今の攻撃、本身じゃ無かっただろ?

あの時のものとは違う。

もし今受けたのが魔界コロシアムで出たものなら、俺は今頃地面に顔を付けていた。」

 

哲郎は何とか意識を取り戻し、立ち上がった。

 

 

「俺とこいつの手当を急げ。

準備が出来次第、すぐに作戦会議に入る。」

 

 

 

***

 

 

「まだ30分も経っていないぞ。

もう 動いていいのか?」

「大丈夫です。もう適応しました。」

 

 

エクスの屋敷の中の一室に哲郎達4人は集められた。

 

「もう一度言うが、準備期間は2週間。

効率を考えて放課後の2、3時間で切り上げることにする。」

「僕は何をしたら……」

「お前には特訓の必要な無いな。

引き続き 情報収集を頼む。」

 

哲郎は二人を見た。

やはり緊張でアガってしまっている。

 

「……どうしてあの二人を選んだんですか?」

「そんなこと 決まっているだろ。

依頼に無関係の人間を巻き込むのはまずいからだ。」

「なるほど。

でもこの2人を特訓させて勝てると思いますか?」

 

哲郎自身 ただの小学生から特訓でここまでの力をつけたが、それは気の遠くなるような時間があったからこそだ。

2週間程度でこの2人が学園の実力者に勝てるようになるとは思えない。

というのが本音だった。

 

「それから、果たし状も必要だな。」

「果たし状?」

「そうだ。公式戦を申し込むにしても、相手が拒否したら意味が無い。

人間というのは中身が薄っぺらい程プライドは無駄に高くなると相場は決まっている。

挑発的な文面でヤツらを絶対に逃がさない。そんなものが必要だ。」

 

「………それを僕が書くんですか?」

「あくまでも戦うのはお前たちだからな。

だが、お前たちは俺の差し金としてヤツらに伝えるから、文章は俺が考える。」

 

 

***

 

 

ごきげんよう

弱者をいたぶることしか脳がない哀れなゴミクズ共よ。

 

貴様らの悪行もここまでだ。

2週間後の公式戦で、公衆の面前で完膚無きまでに叩き潰してくれよう。

 

我々が勝った暁には二度とこの学園でいじめをしないと神に誓ってもらおう。

そして貴様らの醜態を全校生徒の見せしめにさせてもらう。

 

敗北しにむざむざとやってくるがいい。

もっとも 貴様らごときにそれだけの度胸があればの話だがな。

 

 

「………ほんとにこれを送るんですか?」

 

書いてはみたが、露骨すぎて逆に怒らないのではないか と哲郎は率直に思った。

 

「この際 ヤツらが怒るか怒らないかは問題では無い。これはお前たちを小物だと錯覚させるためのものだ。

こうして相手を大したことないと見せかければ、ヤツらは十中八九 こちらの対策はしない。そこに特訓を積んだお前たちがぶつかれば、付け入る隙は必ず生まれる。」

 

そこまで考えているのか という賞賛と、そんなに上手く行くものか という不安が哲郎に生じた。

 

「……それで、これをどうやって送るんです?やっぱりあの大広間の隠し扉がある場所に置くとか?」

「それはまずい。

お前たちはあくまで ヤツらのいじめを止めるために公式戦を仕掛けるという事になっている。

ラドラ達と通じている事は誰も知らないと思っている筈だ。もし 何か大きなものがあるとでも勘ぐられようものならそれは勝機を逃すことになる。」

 

「…………」

 

「果たし状はそんなもので良いだろう。

公式戦の手続きは俺が済ませておくから、お前たちは特訓のことだけを考えてくれ。」

「……それは良いですけど、その前にヤツらのについて知ってることって他にありませんか?」

「それは後で話す。

2人に話は終わったから、これから特訓に入ると伝えてくれ。」


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