異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#415 The Crimson Sphere Part7 ~Independent~

哲郎が今日まで勝ち抜いてこられたのは、隣で戦う相手の動きや能力に《適応》出来たからだ。

ワードとの戦いでは隣に立ったミゲルと、トレラとの戦いではかつて衝突した因縁の相手であるレオルと肩を並べて戦い、そして勝利した。

 

哲郎はその成功体験の本質を、凰蓮の言葉によって理解する事が出来た。それは決して思考を停止させ相手の動きに盲目的に合わせるという事などでは無い。

自分にそのような甘えがほんの少しでもあったならば、今こうして生きて立っている事は叶わなかっただろう。

 

そしてそれは今回もまた同じである。目の前の、血液を操作する変幻自在の能力に加え鳳厳の肉体という驚異的な力を手にした臟に勝利する為には生半可な心持ちでは叶わない。

凰蓮の動きに《適応》し、彼と自分の能力を限界以上に発揮する。それが臟に勝利する為の必要最低限の要求なのだ。

 

*

 

凰蓮の動きは、哲郎が今まで見たどの人間よりも精度が高かった。彼の動きを見ただけで、鬼門組の総監に就くまでに積んできた鍛錬の程が分かるようだった。

今までの、帝国に潜入する以前の哲郎ならば凰蓮の動きに着いて行く事は不可能だっただろう。しかし今の哲郎にはあらゆる速度に《適応》する事が出来る。

 

凰蓮が振り回す武器が臟のどの攻撃を弾くのか、自分はどの攻撃に対処しなければならないのか。今の哲郎の目にはそれらが見えている。

 

(こんちくしょう!!! 全弾弾いて来やがる!!!

それもこれも《CHASER》の奴が自分の強みを肌で理解しやがったからだ!!!

だったら俺もそうするっきゃねぇ!!! 俺が今まで考え続けてきた能力の使い方を今ここで形にしろ!!!!!)

『!!!』

 

臟は右腕の攻撃を中断し、右腕に渾身の力を込めた。拳を握っていないにも関わらず、右腕全体が赤黒く変色する。

血管が、それも動脈や静脈だけでなく肌に張り巡らされた毛細血管の隅々まで血液が集中したかのようだった。

 

臟はそれまで腕に流れる血管を血液を放出させる為の用途としてしか見ていなかった。血液を吹き出す為に腕や指を切り離す事も珍しくはなかった。

その現状から更に一段階進化する為の方法として、臟は腕に流れる血管を、毛細血管の隅々に至るまで意識して血液を込めた。それにより、今臟の腕は数え切れない程の発射口を携えた凶器へと変貌した。

 

「ぬあああっ!!!!!」

『!!!』

 

その掛け声と共に、臟の右腕から攻撃が飛び出した。

その攻撃は無数の、辛うじて視認できる程の細さしかない血を練り固めた赤い針の大群だった。毛細血管の一本一本を発射口として突き破り、一斉に襲い掛かる。

 

しかしその攻撃は哲郎を狙ったものではなかった。無数の血の針の矛先は一様に凰蓮に向いていた。

 

(ハナっから凰蓮しか狙わねぇ!!! 命を狙う必要もねぇ!!!

この針の一本でも身体に入り込みさえすれば、今度こそ血を流し込んで操ってやるぜ!!!)

 

臟の狙いは凰蓮の命ではなく、彼の肉体にこそあった。

依然として、凰蓮が臟の攻撃を受ければ体を操られる危険性がある事は覆されていない。臟はその一点に意識を集中させた。

凰蓮を殺害するのではなく、肉体の主導権を奪う為に放った攻撃。それが今回の無数の血の針の攻撃だった。

 

臟のその意図を凰蓮も瞬時に見抜いた。先の攻撃で接近した血の刃を全て弾き飛ばした次に瞬間、武器を持つ手を中心へ移動させる。

 

「ぬあああっ!!!」

「!!!」

 

凰蓮は武器を握った手を後ろへ振りかざし、それを前に突き出す勢いを武器に乗せた。そして手は巧みな指の動きで武器を回転させ、前方に残像の盾を作り出した。

細かい血の針は攻撃の手数に力を集中させている分、一本一本は脆い。無数の血の針は武器の柄の高速回転によって叩き折られ、一本残らず凰蓮に刺さる前に阻まれた。

 

「かぁっ!!!」

『ぶしゃあッ!!』

(!!! やべぇっ!!!)

 

凰蓮は臟の攻撃を防ぎ切った事を周囲に宣言するかのように武器を振り抜いた。それまで凰蓮の眼前にあった血の針の大軍は衝撃によって霧散し、その前方を赤く染めた。

臟が真っ先に懸念したのは血の針が霧散した事により前方の視界が遮られた事だ。哲郎と凰蓮がこの好機を逃す筈は無い。この一瞬の隙をついて攻撃を試みる筈だ。

 

(面白ぇ来てみろ!! どんな攻撃が来ようと対応してやる!!!

《CHASER》だろうと凰蓮だろうと、或いは二人で同時に来ようとも、ドンピシャで合わせてその首落としてやる!!! その時こそお前等の運の尽きだ!!!)

 

霧散した己の血液で前方の視界が遮られた瞬間、臟は咄嗟に全身を血の鎧で覆っていた。

先程攻略されたこの血の鎧だが、臟は既に対策を講じていた。

 

(さっきは間抜けな様を見せたが、よく考えりゃこいつは後出しじゃんけんだ!!

凰蓮が来りゃ固めたまま、《CHASER》が来たら凝固を解いて受け止める!!! この読みを制すりゃ俺の勝ちだ!!!)

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