異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#416 The Crimson Sphere Part8 ~Shoot Blind~

臟が能力の使い道の一つとしていた血の鎧。それは元々、廠桓の決して強靭とは言えない肉体を補助する為に編み出したものである。

 

その血の鎧は哲郎と戦う事において、血液凝固を操作して魚人波掌を受け流すという芸当で哲郎を翻弄した。

しかし哲郎は即座にその弱点を見抜き、流動化した所に間髪入れずに更なる攻撃を打ち込む事で鎧を攻略した。

加えて臟は、肉体を廠桓から鳳厳に乗り換えた事で肉体強度の弱点をも克服した。以上二つの理由から、臟は戦闘の場において血の鎧を使う事を完全に放棄した。

 

しかし今この瞬間において、臟は一度は捨てたその選択肢を再び行使した。哲郎と凰蓮が眼前に迫ってくる、この瞬間に限っては血の鎧が有効性を持つと判断したからだ。

 

臟が弾き出した哲郎達の攻撃は二通り、哲郎による魚人波掌と凰蓮の剛力による物理攻撃だ。

偶発的に生まれた血の煙幕が晴れた瞬間、攻撃の種類を看破し血液凝固を実行するか否かを決める。そして攻撃を受け止めた瞬間に血の槍を繰り出して無防備になった眉間を貫通する。それが臟の思い描いた勝利の筋書きだった。

 

(!!! 来たッ!!)

 

臟が全身を血の鎧で覆い終わった瞬間、血の煙幕から姿を現したのは哲郎だった。煙幕に空いた穴から覗く顔と上半身しか見えなかったが、哲郎が何をしようとしているのかは瞬時に見抜いた。

哲郎は身体は半身に、腕を振りかぶるように構えている。それは彼の十八番である魚人波掌を繰り出す構えだ。

 

それを認識した瞬間、臟は鎧の血液凝固を完全に解いた。この状態では液体を流れる魚人波掌の衝撃は鎧の表面を流れ、臟には届かない。

 

(俺が鎧を使ったって気付いたか!? けどもう止められねぇだろ!!?

突っ込んで来た瞬間、血の槍をぶっ刺してやる!!! 心臓だけじゃない、肺や肝臓にもぶっ刺してやる!!!

そこまでやりゃァたとえ《適応》を持っていようとも━━━━)

『ズガァンッッッ!!!!!』

「ッッッ!!!!?」

 

哲郎の射程距離に臟が入る前に、臟の鳩尾に突き刺すような衝撃が炸裂した。

血煙が晴れて臟の視界に飛び込んできたのは、哲郎が凰蓮の薙刀を構えて柄の先端を繰り出している姿だった。

臟は襲い来る攻撃が哲郎か凰蓮かの二択と踏んだが、現実に襲いかかったのは虚の第三の攻撃だった。

 

遠心力を乗せて繰り出された突きは流動化した血の塊など貫通し、臟の鳩尾を深々と捉えた。

 

(━━━━チ、《CHASER》が凰蓮の武器を使うだと━━━━━━━━!!!!?)

『ドガァッ!!!!』

「!!!!」

 

臟の身体はくの字に折れ曲がり、そして吹き飛んだ。臟は必死の思いで肉体の痛覚を遮断し、地面に手を着いて着地をする。

しかし、顔を上げて見えたその表情が臟の精神に、そして鳳厳の肉体に無視出来ないダメージを与えた事を物語っていた。

 

「━━━━フゥッ!!!」

「哲郎さん、大丈夫ですか!? 私の武器を持って行った時は何事かと思いましたが、此れも貴方の作戦だったと言う訳ですか!!」

「はい。咄嗟にこれが一番臟を出し抜けると考えてやった事ですけど、結果的には上手く行きました。

もしそれ以外の方法で突っ込んでいたら、今頃攻撃を受け止められて逆にやられていましたよ。」

「そう、ですか。其れは大変申し訳ない事を━━━━

グッ!!!」

「!!! 凰蓮さん!!!」

 

凰蓮は顔を顰め、片膝を地面に着いた。哲郎はそれが肉体と精神の決定的な疲労である事を瞬時に見抜いた。

 

(凰蓮さん━━━━!!

無理もない! 今までも、それに今だって《転生者》の攻撃を捌くために全力で動き回っていたんだ!!!

しかも一発でも攻撃を受けたら死ぬかもしれない状況に居るんだ!! 総監だろうとなんだろうと、もう身体の限界が近いんだ・・・・・・・・・!!!)

「ったくよォ、やってくれたなァ・・・・・・!!」

「!!!」

 

哲郎の方へ向けて、臟がじりじりと歩み寄って来ていた。それを見た瞬間、哲郎は咄嗟に一歩前に出て臟に正対した。

 

「おうどうした? お前一人でやり合う気か!!?

そんな無茶するよりよォ、凰蓮の背中でも摩ってた方が良いんじゃねぇのか!!?」

「それが出来ないって事はあなたが一番良く分かってるでしょう!? その本体(心臓)が動く度に、鳳厳の体が再生されているんですからね!!!」

 

哲郎は臟に回復する時間を与えてはならない事をとうの昔に見抜いていた。

臟の心臓は通常のものと異なり、血液を作り出す機能も備えている。今この瞬間にも、鳳厳の胸部に居座っている臟の本体は拍動し、血液を鳳厳の肉体へ送り届けている。

 

「話が早くて助かるぜ!! 逃げ回られるよかやりやすい!!!

この身体なら下手に血を吹き出すより、叩き潰した方が楽にカタがつくぜ!!!」

 

その言葉を言い終わると同時に、どこからともなく飛んできた右手の五指が臟の右手に、傷口も残さず吸着した。

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