異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#421 Inappropriate

場所は鬼門組 陸華仙の本部内のとある場所。そこには虎徹と彩奈を中心として鬼門組の隊員達が集結していた。彼等隊員達は虎徹の様子を固唾を飲んで見守っていた。

 

虎徹は今、自分の能力を付与した札を介して哲郎に通信をしている。隊員達が緊張している理由は虎徹の通信の内容が自分達の作戦を左右しているからだ。

 

虎徹は哲郎に問いを投げ掛けた。それは『臟に異変があるかどうか』というものだ。その質問に是であれば、哲郎と凰蓮の身の安全の為に直ちに作戦を中止しなければならず、否であれば作戦を実行に移す事が出来る。

虎徹の作戦とは、先刻彼女が語った臟の血の結界を突破する方法だ。それは苺禍を含む鬼門組の全員に共有されている。その作戦を実行出来るかどうかに、凰蓮と哲郎を助けられるかどうかがかかっているのだ。

 

「・・・・・・・・・」

「こ、虎徹さん、どうでしたか!?」

 

虎徹が例の質問を哲郎に投げ掛けて数秒、彩奈は堪らずに虎徹に問い掛けた。通話先に聞こえないように声量を抑える気配りこそあったが、自分だけ安全圏で強敵との戦いを哲郎に一任させてしまっている、その現状に耐え兼ねていた。

 

『・・・・・・喜べ。奴に異変はないとの事じゃ!!』

『!!!』

 

その吉報に、その場にいた面々は心の中で喝采した。帝国の為に命を掛けるという覚悟に偽りは無いが、凰蓮に生きて帰って欲しいという思考もまた本物なのだ。

 

『哲郎に策は話し終わった。此れより策を実行に移す。依然として危機は去っておらんが、儂等ならば必ず勝てる!!!』

 

その言葉の直後、虎徹は通話を切った。それを切っ掛けとするかのように閉鎖的な空間全体に士気を上げる声が響き渡る。

その歓声によって、ある人物(・・・・)のくぐもった声は簡単に掻き消された。

 

 

 

***

 

 

 

 

哲郎の返答が虎徹にとってのそれであるように、虎徹の通信内容も哲郎にとっての吉報だった。臟の血の結界が並の硬さではない事は結界に閉じ込められた際に既に分かっている。強烈な打撃音が虎徹が全力をもって外壁を殴り付けた際のものである事は哲郎も凰蓮も瞬時に理解した。

故にその音を聞いた瞬間、哲郎も凰蓮もこの場を自分達の力だけで切り抜ければならないと考えた。虎徹の全力が通じなければ最早この国の中に結界を外から破る事の出来る人間は存在しないと断言出来るからだ。虎徹の策は確実とは言い切れなかったが、実行されれば臟に重圧を掛ける事は出来ると言える。

 

(……………僕の表情の変化で臟にバレたりしてないよな。虎徹さんの策を確実に実行させる為には凰蓮さんにも黙っておくのが良いな。そもそもこの状況でコソコソ話したりなんてしたら怪しんでくれと言ってるようなものだ。

それなら今の僕が取るべきは、その策が実行されるまでの間の時間を稼ぐ事だ。だけどあからさまに戦いを引き延ばすような真似をしたら臟に怪しまれる。そうなったら作戦が成功する可能性は格段に下がる。

そうでなくても、作戦が実行される前に臟に勝てばそれに越した事は無いんだ。何より、誰かが作戦を立ててくれてるからと言って僕が臟を倒してこの国を守る、その役目を捨てていい理由にはならないんだ……………!!!)

 

哲郎の思考は今まで通りに戦うという結論に収束した。臟に怪しまれないように虎徹の策を進めるためにはそれが一番だと考えた。

次に哲郎の思考は臟が何を考えているのかという事に移行した。今の臟の状態で一番顕著なのは両足が限界を迎えており、自分の足のように動かせない事である。故に心拍数を上げて脚力を向上させる能力は既に使えない状況にあり、それでなくとも足を酷使する戦闘法は避けたいと考えるのが当然の心理だと、そのような結論に行き着いた。

 

最も重要なのは、その最適(当然の心理)がそれまでの最適と矛盾しない事である。両足が己の体重を支え切れないほど疲弊しているにも拘らず顔色一つ変えずに立っている、その状態を見ても臟が痛覚を遮断している事は明らかである。その状態と哲郎が危険視している攻撃は反発しない。故にその攻撃を選択する可能性は十分にあった。

 

そして次の瞬間、その予想が当たっているか否かが明らかとなった。

 

 

『━━━━ガキィンッッッッ!!!!!』

「!!!?」

 

臟の次の攻撃。それは後方に振りかざした左腕の血の義手を巨大な刃に変形させる事による死角からの攻撃だった。しかしその攻撃は哲郎が攻撃が命中する瞬間、刃を横から蹴り上げる事で防御した。本来なら寸分の狂いでもあれば成立しない達人業だが、速度に《適応》した事でその瞬間を正確に見抜いたのだ。

 

「━━━━やっぱりそうだと思いましたよ。足を使わずに最速で僕達を倒すならこれしかない。

案外貴方の攻撃も最適で読みやすいですね!!!」

「!!!」

 

臟が血で自分の両足を操って立ち上がってからの時間は僅か十数秒である。その時間の中に、凄まじい速度で回転した思考、それによる互いの腹の探り合いが起こっていた。

傍目には無意味に見えても当事者たちにとっては非常に重要な時間を経て、哲郎と臟は再び激突した。

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