異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#427 Collapse Part2 ~Reload~

哲郎は虎徹の策を他でも無い彼女本人の口から伝えられて知っていた。故に哲郎は虎徹の策が実を結ぶまでの時間を稼ぐ必要があった。

しかし、虎徹の策に完全に依存していた訳では無い。臟を倒さなければならないという気概に加え、策が完全に成功する保証は無かったからだ。

 

その為、虎徹の声が聞こえた瞬間、哲郎は援軍の到着に喜ぶと共に己の力が及ばなかった事を悔やんだ。己の全力を尽くしても尚、臟を倒し切る事は出来なかった。

しかしその相反する二つの感情も一瞬の内に押さえ込んだ。血の結界を破壊して臟を追い詰めたが、まだ勝利は確定していない。寧ろ困難なのはここからであり、臟を取り逃がさず倒し切る事が求められるのだ。

 

*

 

虎徹は血の結界を全力で殴りつけ、それでも破壊出来なかった時、もう一つ別の方法を考えた。それは出来る限り強力な打撃を加え続けるというものだ。そしてその攻撃する役目を与えたのが、臟が操っていた犯罪者達だ。

彼等は臟の血によって常時限界を超えた筋力を発揮し続けている。無関係の人間を利用する事に全く抵抗が無い訳では無かったが、悪党故の扱いと割り切って貰う事にしたのだ。

 

兎にも角にも、臟の血の結界の破壊に成功し再び虎徹を戦場に戻す事が出来た。その他一切はこの戦場において思考を乱す不純物。それがこの場における共通認識だった。

 

「・・・・・・此処迄近付いても操る力を強められんとは、余程消耗していたらしいな。其れ共、其の血の結界に全力を注いでいたか?」

「強がるなよ。貧血でぶっ倒れそうなのはお前も同じだろ!! 舐めた真似してくれたが肝心な事を忘れてるぜ!!!

お前等は俺にご執心かもしれねぇが、俺は一先ずこの場をやり過ごす事も出来るんだよ!!!」

 

その言葉と共に、血の結界を構成していた血液の塊が流動化し、空中で結合し、二本の棒になった。そして次の瞬間には臟の失われていた左腕と右足の付け根に結合し、硬質化し、義手義足となった。

 

臟の思考は哲郎達を倒し切る事を最優先事項としていたが、それが叶わなかった場合には逃走する事も辞さないつもりだった。

計画を遅らせる事により仲間達からの糾弾は避けられないだろうが、自分が生き残っていれば立て直す事は可能だ。

 

「所詮は鼬の最後っ屁じゃな!!! 違うと言うならば此の窮地、凌いで証明して見せろ!!!

行けぇッ!!!」

「!!!」

 

虎徹が手を振り下ろした瞬間、墨汁の鎧で包まれた男達が一斉に臟に襲い掛かった。その先頭に居た男は臟にも見覚えがあった。

緑色の髪をした長身の男、彼の名は《烽鰐》。臟に操られ、陸華仙に強襲を掛け、そして虎徹に捉えられた彼が何の因果か、臟に攻撃を加えた。

 

「んぐぅッ・・・・・・・・・・・・!!!」

「どうした!!? 其の愚図の攻撃一つ捌けんのか!!? 貧血故に倒れかけておるのは貴様の方では無いのか!!?

屑共とはいえ人を徒に我が物とした報いじゃ!!! 其の身で余す事無く味わうが良い!!!」

「!!!!!」

 

烽鰐の攻撃を受けて踏ん張っていた臟に、更に犯罪者の男達が纏めて襲い掛かった。たとえ制止の言葉を言ったとしても無意味である事は他でも無い臟が良く理解していた。

彼等の筋力を限界以上に引き上げる為に思考能力や理性を奪ったのは、臟本人である。敵を倒す為の工夫が、そのまま臟を追い詰めている形だ。

 

『ズガガガガガガガァンッッッ!!!!!』

「!!!!!」

 

まるで獣の大群が一匹の獲物に食らいつくように、犯罪者達が臟に襲い掛かった。臟は既に新たな血の攻撃を出せるだけの血液を体内に宿していない。加えて度重なる攻撃で左腕と右足を失った鳳厳の肉体も既に限界を超えている。

最早何の能力も持たない男達の攻撃すら無力化出来ない自分に臟が一番驚愕していた。

 

「~~~~~~~~~~~~!!!!!

しゃらくせぇ ボゲェッッッ!!!!!」

『ズガァンッ!!!!!』

 

自尊心を保とうとする執念か、或いは生存本能か、臟はまともに感覚の通っていない両腕を振り回して強引に烽鰐を含む犯罪者達を弾き飛ばした。

 

「はっはっは!!! どうだ見たか!!? 俺が誰の攻撃を捌けないだと!!?

こんな雑魚をいくらけしかけたって無駄だ!! こうしてる間にも心臓は動いて血を作ってる!! 直ぐにお前の脳天に風穴開けてやれるぜ!!!」

「・・・・・・・・・こんな安っぽい挑発にも容易に反応する。故に貴様は愚図なのじゃ。

哲郎!!! やれ!!!!!」

「!!!!?」

 

虎徹の言葉に反応し、後方に視線を向けるとそこでは哲郎が攻撃を繰り出す構えを取っていた。しかし哲郎は大技を既に使ってしまっている。

残りの投げ技等では臟に止めを指す事は出来ない。故に臟の気は一瞬緩んだ。しかしその一瞬こそが臟の運命を決定付けた。

 

「はいっ!!!!!」

「!!!!?」

 

瞬間、哲郎の手から迸ったのは、もう既に出し尽くされてしまった筈の光。臟との長い戦いに終止符を打つ攻撃の兆し。

哲郎の最大火力の攻撃、《リベンジ・ザ・アダプト》の光だった。

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