異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#435 Epilogue 5 ~Golden Pandemonium Returns~

鬼ヶ帝国の政治は、『帝国』の名に違わず皇帝が中心となって行っている。

帝国内で《羅王》と呼ばれている皇帝を中心に、《羅刹》と呼ばれる立法、行政、司法の最高責任者が政治の運営の中枢を担っている。

 

彼等の活動場所は、《逢魔ヶ宮殿》と呼ばれる建物である。それは政治の場であると同時に、皇帝やその親族、政治家達の生活の場であり、彼等を外敵から寄せ付けない鉄壁の要塞でもある。

逢魔ヶ宮殿は本来、限られた人間以外は立ち入りは疎かその姿を視界に収める事すら困難な場所である。実際の所、鬼門組現総監の凰蓮ですら内部の許可が無ければ入る事は出来ない。

 

そして今、その宮殿に向かって走っている馬車が二台あった。その馬車に乗っているのは馬に乗った運転手の他には鬼門組の隊長の一人である苺禍と、三人の証人(・・)達だった。

 

 

 

***

 

 

「━━━━お世話になっております 苺禍です。

・・・・・・はい。鳳凰総監は命に別状はなく、療養中です。

ええ。証人は此処に。皆様には引き続き待機して頂くよう願います。」

 

それは馬車の荷台に乗った苺禍の話し声だった。彼女は通話の魔法具を口に当て、丁寧な口調で話していた。

普段の威圧的な雰囲気を覆い隠した言葉選びだったが、それも彼女の話し相手を考えれば無理からぬ事だった。

 

「・・・・・・良し。

分かっているだろうが、呉々も粗相はするなよ。凰蓮総監の息が掛かっているとはいえ、万が一の事があれば唯では済まない。今から君達が向かっているのはそういう場所だ。」

「・・・・・・はい。」

 

そう一言、哲郎は返事をした。

苺禍の過剰とも思える念押しに対し、そう答えるしか無かったのは、自分の胸中を悟られないようにする為だった。

苺禍達の中では哲郎達は逢魔ヶ宮殿に初めて行くが、事実は異なる。哲郎達は一度宮殿に潜入し、あわや死の危険にあったのだ。

 

一台の馬車には哲郎と苺禍が、もう一台には虎徹と彩奈が乗っている。哲郎達が宮殿に向かっている理由は、昨夜の臟が起こした事件に関する証言を行う為だ。

 

「凰蓮総監から伝えられているとは思うが、今回羅王や羅刹の皆様に証言してくれれば、後の始末は全て此方が完了させる事になっている。

私達だけでは無く、政治に携わっている方々も大層混乱している。それは分かってくれるな?」

「・・・・・・それは、もちろんです。」

 

昨夜起こった、元い発覚した臟の陰謀は、鳳厳や廠桓の死、凰蓮の負傷、帝国の至る場所で出現し宮殿にも殺到した暴徒と、帝国の政治家達にも少なからず衝撃を与えている。

事件から一夜明けた今も情報が入り乱れ、後の事後処理は困難な状態となっている。故に事件の当事者である哲郎達の証言が求められた。

苺禍の立ち会いの元、事件の詳細を政治家達に話す事を凰蓮に要求されたのだ。そしてそれには、事後処理の為に必要な情報を提供する事で今回の行動の一切を罪に問わないという、言うなれば司法取引のような側面も持ち合わせていた。

 

「見えたぞ、あれがそうだ。」

「・・・・・・!!!」

 

苺禍は前方を指差して哲郎に伝えたが、哲郎はそれに反応している余裕は無かった。ぼろを出さない為に自分の感情を表に出さない事に神経の全てを注いでいた。

哲郎の眼前にはその全てが金色で染められた、天まで届きそうな巨大な建物が聳え立っている。苺禍の認識では初めての事でも、哲郎にとっては二度目の対面であるその建物を、哲郎は生涯忘れる事は無いだろうと確信していた。

 

逢魔ヶ宮殿に、哲郎達は再び、今度は正面から入門しようとしている。

 

*

 

宮殿の前に馬車が止まってからたった十数分で全てがとんとん拍子に進んで行った。

苺禍が門の前に居た警備の男達に、凰蓮が署名した証文を見せ、宮殿内への訪問が許可された。

一度目、哲郎達は彩奈の能力を使って荷台に紛れ込み、辛うじて潜入する事が出来た。因みに哲郎はその事を違法行為と反省はしていても後悔はしていない。

当時正体の分からなった《転生者》が宮殿内の誰かである可能性があった以上、探りを入れておく事は必要だった。

 

そして今、哲郎達は苺禍を先頭にして廊下を進み、とある扉の前に立っている。その先に通じているのは外部の人間と話す為に設けられた面談室だ。

 

「私、鬼門組隊長の苺禍です。この度、昨夜の事件の証人である三人を連れて参りました。」

 

苺禍がそう言うと、眼前の扉が魔力のようなものによって一人出に開いた。

扉の奥に広がって居たのは、豪華な内装に目を瞑れば机と椅子があるだけの簡素な作りの部屋だった。しかし、その机に座って哲郎達を見ている三人は異様な雰囲気を放っていた。

 

「・・・・・・!!!」

 

その三人の男達は、何れも彫りの深い顔立ちで着物を丁寧に身に纏っていた。彼等こそが鬼ヶ帝国において、羅王以外で政治の最高責任者である羅刹の称号を与えられている。

哲郎達の眼前に広がっているのは、それ程までに壮観で威圧的な光景だった。

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