異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#436 Epilogue 6 ~Rakshasa’s Child~

鬼ヶ帝国の政治における三権の最高責任者、それを羅刹と言う。

 

立法羅刹 《菟剱(うこん)

行政羅刹 《聰蓉(そうよう)

司法羅刹 《炳紊(へいびん)

 

その三人が現在の羅刹であり、哲郎達の前に居る男達の名前である。

帝国の政治において、この三人が一堂に会して話をする事は珍しくないが、外部の人間が関われば、増してやそれが一般の人間であれば話は全く異なる。

羅刹である三人が仕事の場で、少年達に話を聞く為に時間を作っているこの状況こそが今回の事件の特異性を何よりも雄弁に語っていた。

 

「・・・・・・!!!」

 

哲郎は三人の羅刹を前にして、なるべく精神を動揺させないよう必死に努めた。

彼等は自分の前に居る少年が鬼門組と肩を並べて大立ち回りをした事も、そもそも帝国民で無い事も分かっている。彼等の言葉一つで、自分達の進退が狂わされる可能性は十分にあるのだ。

 

「・・・・・・君が、凰蓮と共に戦ってくれた少年だね?」

「! はいっ!」

 

机に座っていた中央の男、聰蓉が哲郎に向かって口を開いた。鬼ヶ帝国における最後の任務が幕を開けた形だ。

 

「先ず確りとさせておきたいのは、我々は君達の行動の一切を罪に問う気は無いという事だ。

寧ろ、今回の事件の鎮圧に尽力し、凰蓮の命を救ってくれた事に感謝している。

だからこそ、君達にも此の場で誓って欲しいのだ。今回の事件に関して知っている事を全て、偽りなく我々に証言して欲しい。」

「・・・・・・分かりました・・・・・・!」

 

聰蓉の言葉に哲郎が返事をした。三人を代表して哲郎が話す事は、前もって三人の間で決めていた。

 

(こここそが、僕の()の見せ所だ・・・・・・!!)

 

哲郎はそう、心の中で己を勇気付けて話し始めた。

 

*

 

「・・・・・・以上が、昨夜の事件に関して僕達が知っている事です。

この事は凰蓮さんからもお話が聞けると思います。」

 

哲郎は話した。

《転生者》という人々の存在。

異国の者である自分達が帝国に来た目的。

廠桓の正体が臟と名乗る心臓の《転生者》だった事。

陸華仙での虎徹達の奮闘。

鳳厳の死の過程。

そして臟との戦いの一部始終、その全てを数十分を掛けて話した。

 

それを聞いている中、三人の羅刹は紙の上に筆を走らせていた。苺禍曰く、羅王への説明や事後処理の為に情報を纏めて報告書のようにするとの事だ。

 

「━━━━うむ、大体分かった。

では次に、君達が此の国に来た理由が正当なものである事を証明するものを見せて欲しい。鬼門組から聞いた話では何か、蝋印の付いた書類があると聞いているが・・・・・・」

「はい。それならここに・・・・・・!」

 

そう言って哲郎が懐から取り出したのは、帝国に向かう前に国王から預かった証明書だった。

哲郎からそれを受け取ると三人はその記載内容や蝋印をしばらく見つめ、納得したような声を出した。

 

「確かに市場に出回っているものでは無いな。君達の安全性も、今話してくれた事も全面的に信用しよう。

何より、此れで此方も一つ疑問が解けた。」

「? 疑問?」

「実は我々も、君達に会って欲しい者が居るのだ。

おい、入って貰え。」

『!』

 

立法羅刹の菟剱が哲郎達の背後に向けて声を掛けると、背後の扉が開いた。

そこから入って来たのは一人の男と一人の少年だった。男の方は長身で屈強な身体を着物で包んだ、如何にも宮殿内の警備職らしき人間だった。

しかし、それ以上に目を引いたのは少年の方だった。その少年は見た目の年齢も背格好も哲郎と似通っていたが、その顔付きを見て哲郎は真っ先にある人物の顔を思い浮かべた。もう既にこの世には居ない男の顔をだ。

 

「まさか、この人って・・・・・・!!」

「其の通りだ。彼の名は《廠幤(しょうへい)》。君が思う通り、昨夜死亡が確認された、廠桓の実の息子だ。」

「・・・・・・!!!」

 

哲郎の目の前に立った廠幤という少年は表情一つ変えずに哲郎達を見ていた。羅刹の口からその話を聞いた瞬間、哲郎の中では様々な思考が入り乱れた。

廠桓に息子が居たという事実や、家族が居た人間の命を私欲の為に奪った臟の悪辣さ。そして他者の口から実父の死を聞かされても動揺を見せない廠幤の精神の頑強さ。その全てにだ。

 

哲郎が頭の中で思考を整理している最中、口を開いたのは虎徹だった。その言葉は廠幤では無く、三人の羅刹に向いていた。

 

「・・・・・・羅刹殿方よ、些か配慮が足らないのではあるまいか。

幾ら業務の為とはいえ、実子の前で昨夜知ったばかり(・・・・・・・・)の実父の死を口にするなどと。」

「! 虎徹さん━━━━」

「否、そうでは無いのだ。結論から言うが、彼が実父の死を認識したのは昨夜ではない。

彼は数日前に我々の前に訪問して言ったのだ。『父の様子がおかしい。まるで別人になったかのようだ』とな。」

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