「・・・・・・此の奥にて羅王、
「・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・!!!」
哲郎達三人は羅刹達に連れられて、先程とは比べ物にならない程大きな扉の前に案内された。
羅刹の一人が言った通り、この扉の向こうにこの鬼ヶ帝国の七代目皇帝、即ち羅王の魍焃が待っている。
即ち、哲郎達はこれから鬼ヶ帝国の皇帝と面会しようとしているのだ。その理由は羅刹達と同様、帝国を襲った臟の一件に関する情報を証言する為である。
無論の事、公私を問わずこれからやろうとしている事は非常に重要である。自分達が命を懸けてまで守ろうとした帝国の混乱が迅速に鎮圧されるかどうかが哲郎達の証言に掛かっている。加えて皇帝の機嫌は哲郎達が国を穏便に出られるかどうかも左右する。
それだけでなく、これから行おうとしている謁見にはもう一つ重要な意味がある事を哲郎だけが知っていた。
(・・・・・・この奥に、ラミエルさんが言ってた『《転生者》と同じくらい強い人』が・・・・・・!!!)
哲郎が帝国で見た夢の中にラミエルが登場し、そして一つの情報を提供した。それがこの世界の出身でありながら《転生者》に勝るとも劣らない力を持つ、言わば《例外的存在》である。
その例外的存在は四人居り、その内の一人が哲郎達が会おうとしている魍焃なのである。
「・・・・・・それで、此は先程羅王がご要望して来た事なのだが、」
『?』
「何故か、三人来る内の代表者一人とだけ話すと仰ったのだ。」
「!!!」
羅刹の言葉を聞いた瞬間、哲郎だけがその要求の意図を見抜いた。羅王は自分達を揺さぶっているのだと理解した。
(やっぱり、皇帝は僕達がこの皇居に潜入した事を見抜いていたんだ・・・・・・!!!)
その時哲郎が思い起こしていたのは、一回目に皇居 逢魔ヶ宮殿に潜入した時に自分達を襲った謎の巨大な槍のような攻撃だった。
哲郎はそれが羅王自らやった事だと、延いては哲郎達が皇居に侵入した事を羅王は見抜いていたのだと理解した。
無論、皇居への無断侵入は重罪である。本来ならば哲郎達の首が落ちかねない事態だろう。
しかし、哲郎達には臟の魔の手から帝国を救ったという実績がある。それは当然羅王の耳にも入っている。哲郎達にその事を恩着せがましく主張する気は無いが、羅刹達がその実績を加味して哲郎達の行動を罪に問わないと言っているのは僥倖だった。
しかし、羅王としては皇居への無断侵入は無視出来る問題では無い。しかしその張本人は帝国の危機を救ってくれた側面も持っている。
故に羅王は、哲郎達の中の一人だけと一対一で話すという条件を突き付けて、自分達を揺さぶっているのだ。それは少しでも多く情報を引き出すという目的の為だ。
「君達は客人という扱いなのだが羅王直々のご要望だからな、都合の悪い事が無ければ従って欲しいのだ。」
「分かりました。でしたら、僕が行きます。」
哲郎はそう言って三人の代表になる事を申し出た。哲郎は羅王の揺さぶりに真っ向から乗っかる事を選択した。
(この状況、考えてみれば僕にとって追い風だ!
そもそも僕は嘘を付く気なんて無いし、皇帝と一対一で話すなら、虎徹さん達に話しにくい事も話せるかもしれない!)
「僕は臟に一番長い時間会っています。ですから、情報提供は僕が一番やり易いと思います。どうでしょうか。」
「うむ。主が良いなら問題なかろう。」
哲郎としてはその場の全員を納得させる為に最もらしい事を言ったつもりだったが、羅刹達と状況が同じだったが故に虎徹は二つ返事で快諾した。
「話は纏まったようだな。我々は此処で待っている。重ねて言うが、呉々も粗相の無いようにな。」
「・・・・・・分かりました。行ってきます。」
哲郎はそう言って羅王が待つ扉の方へと歩いて行った。これから始まる数分はこれまでの帝国での活動の中で最も濃密で重要な時間になる事を実感していた。
***
「━━━━失礼します。」
哲郎はその言葉と共に、魔力によって自動的に開かれたであろう扉をくぐった。
部屋に入った哲郎の視界に真っ先に映ったのは、視界を埋め尽くして聳え立つ薄紫色の巨大な壁だった。
「・・・・・・・・・・・・!!!」
首を持ち上げた哲郎はようやくその人物の顔を見る事が出来た。
顔面まで鍛え抜かれた筋肉で覆われた彫りの深い顔には哲郎の身体程もある牙や角が生えていた。そしてその背中には槍のような触手が何本も蠢いていた。その触手が哲郎達を襲った謎の槍の正体なのだと真っ先に理解した。
「初に目に掛かる。儂が此の鬼ヶ帝国 七代目羅王 魍焃である。先ずは名を名乗れ。」
「はい。僕は田中哲郎と言います。」
哲郎は己の名を明かすと共に、身に付けていた変身の魔法具を外した。
それは即ち帝国民 哲也の仮面を自ら脱ぎ捨て、一切の情報を包み隠さず明かすという攻めてもの意思表示だった。