異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#440 Epilogue 10 ~Emperor Audience 2~

《転生者》田中哲郎と鬼ヶ帝国 七代目羅王(皇帝) 魍焃の対面。その始まりは、完全に相手に主導権を握られたと哲郎は直感で理解した。

戦ってどちらが勝つかは、実際に拳を交えなければ分からないだろう。少なくとも今の哲郎にそんな事をする気は毛頭ない。

 

しかし精神力という点においては、完全に相手の方が上回っていると感じた。そう思った理由には、一回目の潜入であわや命を奪われかけ、完敗を喫した事も大きい。

何よりその表情に、一人の力でこの国を守り切ろうという強い意志を見た。一つの国家を運営する事など、哲郎にはその人生が幾つ会っても成し得ない事だろうと、哲郎は直感的に考えた。

 

それ故に、哲郎は魍焃の姿を見た瞬間、変身の魔法具を外して己の本当の姿を見せる決断をした。この男には一切の隠し事が通用しないと直感したからだ。

 

*

 

「・・・・・・ふむ。角と牙の無い人間か。文献などで其の存在は知っていたが、此の目で見るのは初めてだな。

異国の人間、御主の他にも居るのではないか?」

「・・・・・・はい。僕と一緒に来た杏珠さんも、《朝倉彩奈》という人間です。」

 

哲郎の返答を聞いた魍焃は瞑目し数秒、哲郎の言葉を脳内で反芻していた。鎖国国家の王として、異国の人間が二人も立ち入っているという事実は無視出来ないのだろう。

 

「先に結論から言っておくと、我の御主等に対する処遇は羅刹達と変わらん。 鬼門組の面々に助力し、臟とかいう不届き者から此の国を救ってくれた事は心から感謝している。

故に今回の一件に関する情報を嘘偽り無く証言してくれた時点で、御主等の行動の一切を罪に問わない事は決定している。」

「・・・・・・・・・・・・!!」

「そして此処からは我の一個人的な質問となる。二つ有るのだが、答えてくれ給えよ。」

(!!! 来たッ!!!)

 

哲郎と魍焃の対談は、ここからが本番を迎えるのだと哲郎は直感した。

今までの質疑応答は羅刹と話した内容を反芻するだけの、形式だけのものに過ぎない。ここからのやり取りにこそ、魍焃が代表者一人と一対一での対談を要求した理由がある。

今から行われるのは、魍焃が哲郎から自分が持っている情報を引き出す為の対談だ。それは今回の一件、臟が起こした事件の核心に切り込む会話が行われるという事だった。

 

「━━━━では先ず一つ目の問いだ。

つい先日、我は此の宮殿に何者かが立ち入った気配を感じ取った。単刀直入に聞くが、其れは御主等で間違いは無いか。」

「━━━━はい。そうです。」

「そうか。先程も言った通り、我々は御主等の行動の一切(・・)を不問にする。だが何故其の様な事を行ったか、理由だけは答えて欲しいのだ。」

「・・・・・・・・・・・・!!!」

 

哲郎は魍焃の言葉に、無断侵入の際の自分の攻撃に不満を言わせない意志を感じ取った。魍焃は言外に悪いのは飽くまでも皇居に無断侵入した哲郎達であると主張しており、哲郎も甘んじるでも無く本心から己の非を認めている。

 

しかし魍焃にとって哲郎達は、命を懸けて帝国と凰蓮の命を救ってくれた恩人という側面も持ち合わせている。そんな人間が皇居へ侵入するのにはそれ相応の理由があるに違い無い。

魍焃はそれを知りたいと考えているのだ。

 

「・・・・・・分かりました。ですがそれを答える為にはまず、僕達や臟の正体から話さなければいけません。少し長くなりますが、良いでしょうか。」

「構いやせん。話してみろ。」

 

*

 

それから哲郎は話した。

自分や臟が特殊な能力を持つ《転生者》という存在である事。

その《転生者》とは、この世界で生きている人間では殆ど太刀打ち出来ない力を持っている事。

魍焃が《転生者》にも太刀打ち出来る数少ない例外的存在であると教えられた事。

そして皇居に潜入した、その理由を。

 

*

 

「━━━━ですから僕達は、もしかしたら臟が皇居に居る人間を狙っているかもしれないと考えて様子を見ようと考えたんです。」

「━━━━成程な。御主等にも此の国を救いたいという理由があって此処を訪れた。其れは分かった。

だが、ならば何故人目を阻んで無断で入り込むなどという危険を犯さなければならなかったのだ。」

「はい。それは僕達がその時、まだ臟が誰に成り済ましているか分からなかったからです。

その時、臟は転生者(僕達)がこの国に来ていると分かっていたと考えて行動していました。ですから、万が一にも臟を刺激して、強引に行動を起こされないようにしなければならなかったんです。」

 

哲郎の返答に魍焃は再び瞑目し、しばらく思考を巡らせていた。哲郎は魍焃が次に口を開く時こそがこの対談が次の段階に移行する時だと確信していた。

 

「・・・・・・うむ。分かった。結果論ではあるが、御主等の行動が此の国を助ける形になった訳だから、此れ以上は何も言うまい。

では、次の質問だ。」

「!!」

 

羅王魍焃との対談という、哲郎の鬼ヶ帝国での最後にして最大の任務は、次の段階に突入した。

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