異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#444 Epilogue 14 ~No useless~

「━━━━やってくれたな テツロウ・・・・・・・!!!」

「はい、すみません・・・・・・・(?)」

 

そう言って哲郎を糾弾したのは、鬼ヶ帝国からの帰りを待っていた《転生者》の一人、ノア・シェヘラザードである。

苦虫を噛み潰したような表情の彼を見下ろして(・・・・・)、哲郎は一言、ノアに謝罪の言葉を口にした。

 

しかし、果たしてこの状況の原因が自分にあるのか、哲郎には疑問だった。その事はおくびにも出さないようにしていたが、不自然に語尾が上擦ったと、後に振り返っている。

 

哲郎がそのような状況になった経緯の始まりは、この数時間前に遡る。

 

 

***

 

 

「・・・・・・・どうやらこの辺りは風がこっち側に吹いているみたいですね。これなら、行きよりも少し早く帰れると思いますよ。」

 

鬼ヶ帝国を飛び立った哲郎は、何も無い海上を唯飛行していた。一言で言うならば、彼は帰路に着いている。三泊四日の鬼ヶ帝国への潜入調査を終え、国ではノアやエクスが自分達の帰りを待っている。

加えて言うと、哲郎は一人だけで移動している訳ではなかった。海上という何も無い空間で、人二人の命を預かっている。その二人は今、哲郎の()に居る。

 

*

 

「━━━━そうじゃ。臟は生きた心臓の《転生者》じゃった。こんな姿をしたな。」

「本当にこんな人が・・・・・・・!!」

 

場所は、哲郎の懐の中にある人や物を小さくする瓶の魔法具の中。そこには机と椅子があり、彩奈と虎徹が話していた。

それは暇を潰す以前に必要な、情報の交換である。彩奈は今回の戦い、前線には立っていない。故に臟の姿も直接は見ていない。その彩奈にとって、虎徹の口から聞く話の全てが信じ難いものだった。

 

「その、今更ですけど、そもそもそれ人間って言えるんですか・・・・・・・!!?」

「何とも言えん。じゃが儂も轟鬼族という、主等と違う種族に転生しておる訳じゃからな。其の究極系と考えれば良いじゃろう。」

「は、はい・・・・・・・!」

 

虎徹の話を聞きながら、彩奈は紙にペンを走らせている。彼女が書いているのは、鬼ヶ帝国での一件の詳細をまとめた報告書である。

国に戻れば、彩奈がメイドとして世話になっているエクスや国王達に様々な情報を提供しなければならない。それを迅速に行う為の報告書だ。

 

「・・・・・・・」

「? どうかしたか?」

 

報告書の一文を書き終えた彩奈は、申し訳なさそうな表情をしながら部屋の天井を見た。そこは厳密には(魔法具)の蓋に当たり、彩奈はそれを通して哲郎を見ているのだ。

 

「いえ、なんと言うかその、哲郎さんに申し訳ないなって・・・・・・・。

哲郎さんは私達を乗せて飛んでくれてるのに、私達は椅子に座って話をしてるだけで・・・・・・・」

「何を言うておる。儂等は無駄口を叩いておる訳ではなかろう。

儂は主に情報を伝え、主は其れを紙に起こしておる。そして哲郎は儂等を運んで飛んでおる。

誰も漫然と時を過ごしてなど居らん。各々の役目を全うしておるだけなのじゃから気に病む必要など無い。」

「! ・・・そうですね。」

 

安全性と確実性の両方の観点から採用された、海上を飛行しての帰国。それを可能に出来るのは、《適応》の能力で飛行出来る哲郎だけである。哲郎は今、その責務を全うしようとしているのだ。

人が行う責務に優劣など存在しない。一つでも欠ければ目的までの筋道が破綻する。その意味から考えれば、彩奈が今こうして部屋で報告書を執筆している事も、臟との戦いで前線に出ず、虎徹の援護に専念した事も肯定される。

 

虎徹の発言の意図の全てを理解する事は彩奈には出来ない。自分がしているのは唯の拡大解釈かもしれない。しかしそれで自分が救われるならそれもまた正しい事だろう。

エクス達がこの報告書を読む事が自分達、延いてはこの世界全体を救う一助になる。それに対する信念と誇りを持って、彩奈は再びペンを走らせた。

 

*

 

「━━━━書けた。書き終わりました!」

「うむ、見せてみろ。」

 

彩奈が作業を再開してから数十分後、遂に報告書が完成した。

彩奈が笑みと共に書類を虎徹に手渡した。虎徹はそれを受け取り、記載内容に相違が無い事を確認する。

 

「・・・・・・・どうでしょうか。」

「此れならば問題は無い。誰が見ても帝国で何があったか理解出来る。

じゃがそれ故に尚の事、受け取った奴の管理が重要となるな。万が一にも此れが外に漏れれば目も当てられん。」

「!」

 

虎徹の一言で彩奈は事の重大さを改めて理解した。自分が書いた情報は、帝国の皇帝が国民に秘匿した臟、即ち《転生者》の情報である。それ程までに自分が持っている情報は強大で、関わっている戦いは苛烈なのだ。

 

「━━━━まぁ、今其の様な事を言うても致し方ない。今は信頼する奴等の顔を見れる事だけ考えておれ。

どうやらもう着いたらしいしの。」

「!」

 

虎徹が首を振って横を見るように促し、彩奈もそれに従った。そこには海上とは別の景色が広がっていた。彩奈が生活するエクスの屋敷のある国。それを再び、生きて見る事が出来たのだ。

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