異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#445 Epilogue 15 ~Sparing time to sleep~

哲郎達三人が鬼ヶ帝国から帰国して一番最初に訪れたのは、とある城の内部だった。そこに哲郎達に帝国への潜入を依頼した男が居るからだ。

 

「━━━━ふむ。確認した。」

 

哲郎達の前でそう言ったのは、国王 ディルドーグ・バーツ・ヴルガン。この世界に生まれた人間でありながら哲郎達《転生者》の事情を知る数少ない協力者の一人だ。

哲郎達の帝国での活動内容や成果の詳細を記載した報告書を国王は読み終えた。

 

「先ずは鬼ヶ帝国での活動を引き受けて成果を上げてくれた事、心から感謝しよう。先日の事(・・・・)といい今回といい、君達には助けられてばかりだな。」

「!

いえ。僕達がやりたくてやった事ですから。」

 

国王が言った先日の事とは、哲郎が彼と初めて対面した時に敵の《転生者》姫塚里香(リカ・ヒメヅカ)の襲撃を受けた事だ。

鬼ヶ帝国での激動の数日を経た哲郎の中ではそれは最早遠い過去も同然だが、実際にはまだ数日前の出来事である。その時間感覚のずれを、国王の言葉によって理解した。

 

「それにしても臟か。生きた心臓の《転生者》など、最早人間と呼べるのかすら怪しいな。」

「・・・・・・・」

 

彩奈が綴った文章越しに敵の《転生者》臟の情報を見た国王はそう言った。その言葉に哲郎達は何も言う事が出来なかった。

しかし何より、国王の言葉には臟が帝国転覆の為に廠桓や鳳厳を始めとする数え切れない程の人間を殺害した凶悪な人間という要素が大きい事を理解していた。

 

「して、今回の件について帝国の者達は何と言っていた。」

「はい。まず、残念ではありますが開国は見送ると、そう言っていました。

ですが臟の一件は重く受け止めて、万が一の時には僕達への協力を惜しまないとも言ってくれました。」

 

哲郎の話を聞いた国王の表情が僅かばかり綻んで、彼が自分と同じ事を考えていると哲郎は確信した。

哲郎は帝国に居た間、絶えず轟鬼族の実力の程を目の当たりにしている。彼等の長が《転生者》の存在を認知し、自分達に協力してくれると言った事が何よりの成果なのだ。

 

「・・・・・・・では次だ。彼女について教えてくれ給え。」

「はい。この人は鬼ヶ帝国に居た《転生者》の虎徹さんです。その報告書に書いたと思いますが、とても強い能力の持ち主で、僕達に協力してもらう為に国から連れて来ました。

帝国の皇帝から、虎徹さんの出国を認める許可証も貰っています。」

 

哲郎はそう言って懐から帝国で受け取った虎徹の出国許可証を取り出し、手渡した。鉄朗のその行動には虎徹の事を信用してもらうという意図があった。

哲郎達にとって虎徹は最早疑う余地の無い存在だが、国王達にとってはその限りでは無い。万が一にもあるかも知れないその疑念を払拭する為の行動だ。

 

(・・・・・・・《転生者》の能力は国王様にとっては脅威的だ。万が一にも敵対したら一溜りもないと、一人の人間としてはそう思っていなくても、王様としては考えているかもしれない。)

 

鬼ヶ帝国の時がそうだったように、国王の背中にも哲郎では想像も出来ない程の重圧がのしかかっているに違いない。それは帝国での活動の中で身についた視点の一つだ。

 

「・・・・・・・うむ、分かった。彼女については後日詳細な事を聞く場を設けさせて貰うとしよう。

改めて、鬼ヶ帝国での活動、本当にご苦労だった。礼と言ってはなんだが、君達三人に部屋を用意させる。今日はそこで休むと良い。」

「!

・・・・・・・いえ、お気持ちはありがたいですが、今日はエクスさんの屋敷で寝ようと思ってます。今日の内に話しておきたい事がたくさんありますので。」

「そうなのか。ならば無理強いは出来んな。

だが何時でも労をねぎらう用意がある。何時でも頼ると良い。」

「分かりました。では、僕達はこれで。」

 

*

 

哲郎達三人は城を出て再び空を飛んでいた。彩奈と虎徹が瓶の魔法具に乗り、次の目的地を目指す。

 

「━━━━良かったんですか? 断っちゃって。」

「良いんです。僕達だけが特別扱いを受けるのも気が引けます。それにきっと、ゆっくりしていられるのは今だけだと思いますから。」

 

哲郎が国王の申し出を断った最大の理由は、一刻も早くノア達と合流し情報を擦り合わせる必要があったからだ。

哲郎達は確かに臟との戦いに勝利した。しかしそれは敵に緊張と復讐心を与える事でもあると哲郎は理解していた。

 

まだ敵、延いては《巨悪》の全容すら把握出来ていない。その状態で今にも敵が大挙して襲いかかって来るかもしれない、この状況は極めて危険である。

確かに、自分は臟との戦いを経て疲労困憊にあるし、国王からの厚意は心から有難いと考えていた。しかし、敵の正体すら把握出来ておらず、何時まで時間が残されているか分からないこの状態で悠長に惰眠を取る気には、とてもでは無いが哲郎はなれなかった。

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