異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#455 Goblin Buster 2 ~Jaws of Death~

この世界には数多の職業が存在する。その殆どに、社会を構成し成り立たせるという共通点がある。家を建てる職もあれば作物を育てる職もあり、悪人を捉える職も存在する。

 

そしてその中には、動物を殺し(・・)、食肉にする職業も存在する。人々の安全を脅かす害獣を退治する職業も存在する。

哲郎が身を置いている冒険者も、毎日のように魔物を退治し、一般市民の生活の安定に貢献している。

 

そして殆どの人間が、それらの行動を悪だと考えていない。職業的倫理や食育などの要素もあるだろうが、一番の要素は社会の安定という恩恵を受けているからだろう。

哲郎もまた、他者の行動の恩恵を受け、自分の行動で他者に恩恵を与える人間の一人だった。

 

(動かない。死んだのか・・・・・・・!)

 

自分の手でゴブリンの頭を叩き潰した。それでも哲郎の精神は冷静さを失わなかった。

哲郎は元々、アンリミテッドを受注すると決めた時に、既に魔物を殺す事になると決意していた。それはこの一週間の間に魔物の手によって起こされた数多の悲惨な事件の実例を目にした事も大きく関係している。

 

それは哲郎が自主的に望んだ事だ。自分の修行という利己的な理由の為にアンリミテッドを受注するにあたって、自分が相手をする魔物がどのようなものかを知り、迷いを断ち切っておきたいと考えたからだ。

 

(僕がゴブリンを、魔物を退治して助かる命がある。そう信じる(・・・)事にしよう。

何よりこの山じゃ、相手を倒す事を迷ってる内にこっちが殺される。そういう場所に僕は立ってるんだ・・・・・・・!!!)

『ウグルアアアアアアア!!!!!』

 

先陣を切ったゴブリンが為す術も無く倒された。それを理解したゴブリンの群れの興奮は最高潮に達した。

仲間を殺された怒りに加え、哲郎を捕食対象ではなく全力で立ち向かわなければならない敵と認識したのだ。

 

『ドダドダドダドダァ!!!』

「!!!」

 

群れが全力で相手をするという事は、総力を挙げて攻撃するという事である。ゴブリンの群れの全てが一斉に哲郎に向かって大挙して来た。

ゴブリンの一番の強みは群れで行動する事による、言うなれば『数の暴力』である。それが哲郎に牙を剥いた。

 

(多対一!! 初めてじゃないけど経験の浅い状況!!)

 

哲郎にとっての戦いの多くはルールに守られた一対一の試合や仲間との共闘がその割合を占めていた。

大勢を相手取った戦いの経験は哲郎にはまだ不十分である。それをアンリミテッドという修行の場で実践出来るのは好都合だった。

 

哲郎にとってはゴブリンとの戦いも初めての事だが、距離を詰めてくる相手にどう立ち向かうのが有効化は理解していた。

 

『ダッ!!!』『!!?』

 

哲郎は向かって来るゴブリンに対し、自分も走り出して詰め寄った。哲郎のその行動にゴブリンは面食らって動揺する。

攻撃しようと距離を詰めてくる時、その者は相手を攻撃する地点を脳内で設定する。その相手に自分から距離を詰める事は相手の想定を根底から覆す事に繋がる。

 

一瞬の判断が勝敗に直結する戦いの場では、その動揺が戦況を左右する。それは人間も魔物も例外では無い。

 

『ガッ!!』「!!?」

 

哲郎は自分の目の前に居たゴブリンの手首を掴み、身体をゴブリンの脇下に潜り込ませた。それによってゴブリンの肘と肩の関節が固定され、体の自由が失われる。

哲郎は与えられたその一瞬を使って目的の場所(・・・・・)を探した。目の前にゴブリンが大挙するこの死地で自分を生かす為の場所をだ。

 

(あそこだ!!)「やあっ!!!」

『ドゴッ!!』「!!!」

 

哲郎はゴブリンを投げ飛ばした。その行動はゴブリンを攻撃する事の他に自分の身を守る意味も含んでいた。

哲郎がゴブリンを投げた先には他のゴブリンが居た。そのゴブリンは哲郎から最も近かった。即ち哲郎はゴブリンの次の攻撃を防ぐ為にゴブリンを投げたのだ。それが哲郎が独自に考え出した多対一での戦い方だ。

 

(大勢を相手にして不利になるのは一斉に来る攻撃に対応出来ないからだ!! 次の攻撃が来る前にそれを止め続ける!! それが僕が戦い抜く為の方法なんだ!!!)

 

自分の立てた攻撃方法は実践可能かが分からなければ机上の空論に過ぎない。それを実際の行動として形にする事もこの修行の目的の一つだった。

 

(次だ!! 気を休める暇なんて一瞬も無い!!

これはそういう修行だ!! 新しい何かを掴めなければ何の意味も無い!!!)

『ズシィン!!!』

「!!!」

 

ゴブリンの群れとの死闘が繰り広げられると確信した瞬間、地面が大きく揺れた。それを感じた瞬間、哲郎はそれが何によって引き起こされたのかを理解した。

哲郎は同時に理解した。この山の中で、自分が想定する最悪など当てにはならないという事を。自分の予想すら遥かに超えた脅威が次々に襲い来る、それがこの山の正体なのだ。

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