異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#5 Greet Magic Sword

『さぁ、熾烈を極めるゼース選手とテツロウ選手の試合は、果たしてここからどのような局面を迎えるのでしょうか!!?』

 

場内は激しく熱狂していた。

予想外の活躍を見せる哲郎と優勝候補の実力を持つゼースの一進一退の攻防に激しく興奮していた。

 

「…全力を出せ……だと……!!?

この俺にか………!!?」

「えぇ。あなたはおそらくまだ僕を子供だと過信して手を抜いているんじゃありませんか? あなたとの試合は僕にとってデビュー戦のようなものなんです。全力のあなたを倒さなければ意味が無い。

 

それに、

 

 

後で全力を出す前にやられた なんて言い掛かりをつけられては困りますからね。」

「!!!! ………言いやがったな………!!!!!

 

いいだろう。 望み通りにしてやろう!!!!」

 

その言葉に観客達の熱量はさらに上がった。

遂にゼースの本気が見られることと、それを哲郎が如何にして迎え撃つのか。その好奇心を抑えることができるものは観客席に1人もいなかった。

 

 

ぶおおぉぉ!!!!

ゼースの持つ剣から炎が上がった。

 

「驚いたか!!?これこそが俺の一族に代々伝わる魔剣、イフリートよ!!!!

こいつで望み通りに叩き潰してやる!!!!」

「感謝しますよ。それでこそ僕の苦行も報われるというものだ。」

 

『ゼ、ゼース選手 遂に魔剣を抜いたァーーー!!!!!

波乱の幕開けを迎えたCブロックの第1試合が遂に決着を迎えるのでしょうか!!!?』

 

「………行くぜ。」

 

ゼースの足に紫色の電気がほとばしる。

その瞬間、哲郎の胸がパックリ裂けた。

 

(!!!? いつの間に!!!?)

 

連続して哲郎の体から血が吹き出す。

痛みは感じないが、全く見えず 成すすべがない。

 

『い、一体何が起こっているのでしょう!!?

ゼース選手の姿が全く見えません!!!』

 

(ど、どこだ……!!!?)

「ハハハハハハ!!!!

驚いたか!!!? これこそが俺の最強の魔法、黒之霹靂(ブラック・バリスタ)なんざへでもねぇ 【電光石火(スピリアル・ファスタ)】だァ!!!!!」

 

電光石火(スピリアル・ファスタ)

それは、ゼースの最強の魔法の1つであり、黒之霹靂(ブラック・バリスタ)と双対をなす高度魔法。

 

足に電気を纏い、移動速度を格段に上げる魔法である。

 

「さぁ、ここでお前の言葉を返すぜ。

懸命な判断を。 敗北を認めるんだなぁ!!!!」

 

ゼースの笑い声が響き、哲郎の体から絶え間なく血が吹き出す。

 

『これは苦しいテツロウ選手、一気に形勢逆転だ!!! やはりマーシャルアーツもゼース・イギアには通用しないのか!!?』

 

「オラオラどうした 本当に死ぬぜ!!!」

 

ゼースの声に耳を傾けていると、哲郎がある異変に気づく。

 

 

「どうした?やっと気がついたのか。

そうともよ。この魔剣の本当の恐ろしさは傷を焼くことにあるんだ!!!」

 

そう。哲郎に起きていた異変とは、傷が焼け爛れているということだ。

 

「この魔剣でつけた傷は、ちょっとやそっとじゃ治らねぇ。

これ以上体を傷物にされたくなきゃ、さっさと敗北を認めるんだなァ!!!!」

 

『と、止まらない 止まる気配がないぞ!!!

ゼース選手の強烈な猛攻!!! まるで悪魔を見ているようだ!!!! このまま決まってしまうのかァー!!!?』

 

 

その最中、哲郎の体にもう1つの異変が起こった。

 

 

 

「……フフ。」 「?」

「アハハハハ。 馬鹿馬鹿しい。

どうして気が付かなかったんでしょう。こんな簡単なことに。」

「どうした? おツムでもイカれたかよ?」

 

「再びあなたの言葉を返しましょう。

あなたは既に敗北している。」

「何言ってやが……

ッッッ!!!!?」

 

 

『な、何とゼース選手の腹にテツロウ選手の蹴りが突き刺さったァー!!!!!』

 

「な………ッッッ!!!!?」

「あなたに感謝しますよ。これで僕は報われる!!!!」

 

 

哲郎は気づいたのだ。適応できるのはダメージだけではないことに。

イメージは彼にどんな速度で動く物体にも適応し、視認できるだけの動体視力を授けたのだ。

 

「終わりだ!!!!」

 

哲郎は回転してゼースを全力で蹴りあげる。

ゼースの体は軽々と空高く打ち上がった。

 

(!!!? いねぇ!!!? どこだ!!?)

腹にダメージを負ってもゼースの意識は次の攻撃への警戒に集中していた。しかし、その精度が甘かった。

 

ガッ! 「!!!?」

哲郎がゼースの首に組み付いていた。

さらにゼースの腕を気おつけの姿勢で固定する。

 

「テ、テメッ!!!」

「終わりです。」

 

そのまま全体重を乗せてゼースに抱きついた哲郎は急降下する。

 

『こ、これはまさかの━━━━━━━』

 

ズドォン!!!!

「!!!!!」

 

受け身が取れずにゼースは頭から地面に叩きつけられた。そしてゼースは完全に意識を失った。 すぐにレフェリーが駆けつけ、ゼースの脈を確認する。

 

 

「命に別状はありません。 テツロウ選手の勝利です!!!!」

 

哲郎も嬉しさに思わず拳をあげた。

それに答えるかのように観客席からも歓声が沸き起こる。

ゼースを応援していた観客たちも哲郎の勝利を称えた。

 

『決着ゥゥゥーーーーーー!!!!!

テツロウ選手、なんと優勝候補のゼース選手を撃破したァーーー!!!!!

なんという大番狂わせ!!!幕切れは突然でしたァ!!!!

二転三転の逆転劇を制し、今大会初出場にして唯一の人間族の選手、テツロウ・タナカ!!! 2回戦進出を決めましたァーーーーー!!!!!』

 

哲郎は心の底から喜んだ。遂に長いこと続けた苦行が報われたのだ。


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