異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#50 The shield of the tiny courage Part3 ~Bash~

騎士之盾(イージス)(バッシュ)》!!!!!」

「!!!!!」

 

ファンがそう叫んで掌底を放った瞬間、グスがその目で見たのは

 

【自分に向かってくる半透明の緑色の巨大な壁】 だった。その後は目の前が真っ暗になった。

 

彼女はその時 いつか聞いたことを思い出していた。

津波とは、水でできた巨大な壁だということを。今 自分に向かってくる物もそれと酷似していた。

 

グスは全身に衝撃を受け、そのまま後方の外枠に激突した。

 

『こ、ここに来てファン選手の起死回生の反撃!!! あの巨体 グス・オーガンが軽々と吹き飛ばされました!!!!』

 

(…………………!!!!

こ、これがお兄様の………………

聖騎士(パラディン)の力……………!!!!)

 

ファンは心の中で愕然としていた。

今まで 何をされてもなんの抵抗も出来ず、挙句の果てにギルドに依頼を出す 弱者そのものの惨めな行動しか起こせなかった自分が 今こうして その上級生を圧倒しているという事実を理解するのに時間を要した。

 

「……………!!!!」

グスはふらふらとしているものの 何とか起き上がった。

 

 

「どうやらもう1回 教え直さなきゃいけないようだね。

上級生への口の利き方 をねェ!!!!」

 

グスの激昂も今のファンにはまるで 野良犬がただ 吠えているだけのような 弱々しいものにしか聞こえなかった。

 

「………もう勝った気でいるんだろうが、こっちにはまだ切り札があるんだよ!!!!」 「!!?」

 

グスは身構えて全身に力を込めた。

 

「……………………!!!!?」

 

ファンはグスの変貌ぶりに呆気に取られた。

その筋肉は肥大化し、そこに女性らしさは微塵も感じられなかった。

顔も豹変し、ゴツゴツとしているもののかろうじて整っていたその表情も 醜く そして理性を失ったかのようにファンを狙っている。

 

正しくオーク

 

それ以外に形容する言葉が見つからなかった。

 

「…………………………フフフフフフフフフフ!!!!

今更 怖気付いたってもう遅いよォ………!!!!

今からお前は 他の下級生共への見せしめに ズタボロにしてやるからな!!!!」

「…………!!!!」

 

そう言い切った瞬間、グスは全力で地面を蹴った。まるで 砲弾を思わせる巨体が ファンに迫ってくる。

 

考えるより早く ファンは前方に騎士之盾(イージス)を展開した。

グスの巨体を丸ごと拒絶してしまえるような巨大なものを。

 

 

しかし、

 

 

バリィン!!!! 「!!!!?」

障壁が粉々に割れた。

 

「クッ!!!!」

 

ファンは身を捩ってかろうじて躱した。

この類の攻撃を捌く技術も エクスから叩き込まれた物の1つだ。

 

 

コヒュー コヒュー

という 最早言葉とも取れない獣のような呼吸音が後方から響く。

振り返ると グスは既に姿勢を直していた。

 

「グフフフフフフフ!!!

今にその身体をズタズタにしてやるよォ!!!!」

 

その下卑た笑顔から放たれる言葉にファンは動揺を禁じ得なかった。

それは、彼の頭に1つの思考があったからだ。

 

(…………そんな………!!!

僕の、聖騎士(パラディン)の一族の力があんなデタラメなぶちかましに負けたのか………………!!!?

 

 

いや、待てよ。 もしかして………!!!)

 

ファンの思考が整うや否や、再びグスの巨大が迫って来た。

 

『再び仕掛けます グス選手!!!!

万事休すか ファン・レイン!!!!』

 

強襲をかけるグスに対し、ファンは両手をかざした。

 

(お願いだ!! これが失敗したら負ける!!!)

 

再び騎士之盾(イージス)を展開する。

ただし、今度は手のひらに収まるほどの小型の物だ。

 

 

ガキィン!!!!! 「!!!!!」

 

ファンの展開した障壁がグスの額と激突した。しかし、今度は砕けない。

 

 

ガァン!!!!! 「うわっ!!!?」

 

グスは吹き飛ばされ、その反動でファンも仰け反る。

しかし、この攻防で彼は1つの結論に至った。

 

(やっぱり 思った通りだ!!

僕の騎士之盾(イージス)は狭ければ狭いほど硬く、 広ければ広いほど脆くなるんだ!!!)

 

ファン・レインの固有魔法 《騎士之盾(イージス)》は実体化した盾とは違い、魔力の塊である。

故に その範囲が狭ければ狭いほど 魔力が凝縮し硬度は上がり、広ければ広いほど 魔力の密度は下がり脆くなる。

 

「~~~~~~~!!!!」

 

言葉としては聞き取れないが、今すぐにでも咆哮しそうな唸り声が鼓膜を震わせる。

グスの顔には明らかな負傷があった。

 

『こ、これはものすごい出血です!!!

グス選手 先程の衝撃で 頭が割れたのでしょうか!!?

まるで蛇口を完全に開いたかのような おびただしい出血です!!!!』

 

「…………よくも、よくも私の顔に傷を付けてくれたなァ…………!!!!」

「……それがどうした? お前は今日まで一体何人の身体に傷を負わせて来たんだ!!!?」


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