異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

51 / 332
#51 The shield of the tiny courage Part4 ~Thrilling Almighty~

「……何人…………だと……!?」

「……そうだ。 お前は今日まで何人の人をいたぶって来たんだ と聞いているんだ!!!」

 

グスはファンの言葉を聞くや否や、グスは肩を震わせた。

 

「私が……誰をいたぶったって…………?

私に殴られるしか利用価値の無いクズの下級生共だろう!!!!!」 「!!!!!」

 

「そしてお前もその1人だろうがァ!!!!」

 

グスは再び突進を仕掛けてきた。

しかし、今度は殴るためではない。

一瞬のフットワークでファンの背後に回り込み、腕を首に回して片方の腕で固めた。

 

『な、何と 打撃技を十八番にしていたグス・オーガン ここに来てファン選手を 締めめ技に引きずり込みました!!!!』

 

「このまま 自分の出過ぎた背伸びを後悔しながら死んで行きなァ!!!!」

 

グスは全力で首を締め上げる。

この方が他の下級生への見せしめになると考えたからだ。しかし すぐに違和感に気づく。

 

(…………!!!?

………何だこの硬さ(・・)は………!!!?)

 

グスが感じたのは硬さだった。

それはファンの首の筋力では到底 説明できないほどだった。

 

「……ま、まさか……………!!!!」

「悪い予感は的中だ。

今 僕は首の周りを囲うように筒状の《騎士之盾(イージス)》を展開している。

締める力ならこの大きさでもガードできる!!!!」

「…………!!!!

な、舐めた真似をォ!!!!!」

 

その言葉に誘発されたかのようにさらに力を込めて首を締め上げた。

その時、

 

 

バガッ!!!! 「!!!!?」

 

グスの顔面を謎の衝撃が襲った。

たまらず仰け反り、拘束を解いてしまう。

 

「……………!!!!!」

 

グスは顔を抑えてうずくまった。

そして、今 彼が首のスナップだけで自分に後頭部による頭突きを見舞ったということを理解した。

 

「今ので鼻の骨が折れた筈だ。

これ以上は続ける意味が無い。」

「何!!!?」

 

「………降参しろ と言ってるんだ。」

「!!!!!」

 

まるでその言葉が起爆剤になったかのようにグスはまさにケダモノとしか形容できない咆哮を上げ、ファンに急接近してきた。

 

「思いあがってんじゃねぇ!!!!

人間風情がァ!!!!!」

 

そのまま右手で全身の力を最大限に発揮した拳を顔面に打ち込む。

 

しかし、

 

 

ボキィン!!!!!

「!!!!! あがァァァァァァァァァ!!!!!」

 

左手同様、 右手も完全に砕かれ 絶叫を上げながら地面をのたうち回る。

 

「………無駄だ。

僕の身体に流れているのは誇り高い聖騎士(パラディン)の血だ。

聖騎士(パラディン)の盾は、こんな品性のかけらもない暴力なんかで壊れたりしない!!!!!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」

 

 

その時、グスの口が綻んだのを彼女以外 気づかなかった。

 

(…………その油断が命取りなのさ、聖騎士(パラディン)!!!!)

 

再びグスは拳を振るった。

しかし それはフェイントで、本当の攻撃は膝による腹への攻撃だ。

 

(これなら間に合わない!!!

地獄を味わいな!!!!)

 

 

ズドォン!!!!! 「!!!!」

 

グスの膝が完全にファンの腹を捉えた

 

 

 

かに思えた。

 

 

「ァガァァァァァァァァァ!!!!!」

『グ、グス選手 再び地面に倒れ伏した!!!!』

 

グスの膝の皿が完全に砕けた。

そこから考えられるのは、ファンのガードが間に合った ということだけだ。

 

「……『なんでガードが間に合ったんだ』って顔だな。簡単な事だ。

まず、無事な武器がもう足しかない事。

それから 僕が局所的なガードしかできない事を知っているということ。

 

それだけの情報があればお前の行動を読むなんて簡単な事だ!!!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

ファンの言った 局所的なガードでグスのフェイントに対処出来る というのは嘘偽りない事実である。

しかし、それは1回でも失敗すれば命取りになる という極限の集中があってこその産物である。

 

エクスとの過酷な特訓と強靭な精神力を持って初めて成立する荒業

それをファンはこの土壇場でやってのけたのだ。

 

「両の拳は砕け、更には片足も失った。

最早 動くことすらままならない。これだけ言えば分かるだろう?

それに、

 

 

これ以上はお前達と同類になってしまう。

そんなことを僕は求めていない。

だから、降参するんだ。」 「!!!!!」

 

「悪いけど、これからレフェリーさんに報告して来る。」

 

そう言ってファンは背を向けて去っていく。

その時 グスの頭には様々な思考が混濁していた。

 

下級生に完膚なきまでに叩き潰された屈辱

公衆の面前で這いつくばらされた羞恥

 

そして、下級生に情けをかけられた事

 

その感情の全てが起爆剤となった結果、グスの身体は勝手にファンに向かっていった。

残った片足で地面を蹴り飛ばし、全体重を乗せたシンプルなタックルだ。

 

 

(………あぁ、お兄様。

あの時の言葉はこういう事だったんですね。)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。