異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#56 Big lance of the vine

『ここに来てアリス選手、ロイドフ選手の矛であるヘルヘイムの蔓を奪ったァ!!!』

 

「…………………!!!」

 

ロイドフはしばし 呆然としていた。

余裕では勝てずとも苦戦はしないであろうと高を括っていたこの下級生に自分の頼る【武器】を奪われた事実を受け入れるのは用意ではなかった。

 

「………………!!

ヘルヘイムを奪って、それで勝ったつもりでいるのか………。」

 

ロイドフはアリスの顔を見てそう言った。

その言葉を虚勢に捉える者は1人としていなかった。それは全員がロイドフの実力はヘルヘイムという武器が1つ失われただけで無になる物では無いと理解していたからである。

 

「………確かに君を見くびっていた。

ここからは僕も本気で行こう。」 「!!」

 

ロイドフは懐から種子のようなものを複数個 取り出した。

そしてそれを自分の後ろに投げた。

 

「…………!!!」

『こ、これは……………!!!』

 

種子が発芽してロイドフの背後に巨大な蔓が伸び、彼の周囲を覆った。

 

『ロイドフ選手、今度は巨大な蔓を展開だァーーーーーー!!!!』

 

その直後、アリス目掛けて巨大な蔓が飛んできた。アリスはそれをかろうじて躱す。

しかしその後、

 

ドガッ!!! 「!!?」

 

アリスの腕を衝撃が襲った。

見ると、ロイドフの拳がアリスの両腕のガードに直撃していた。

その腕には件の【プロテンアロエ】が巻かれている。

 

(つ、蔓を牽制に…………!!!)

 

吹き飛ばされる最中、アリスはロイドフの戦法の変化を考察していた。

今までのヘルヘイムに重点を置いた戦法は完全に捨て、背後の巨大な蔓を【サブウェポン】にして本命はプロテンアロエで強化した五体による格闘。

 

詰まるところ、ロイドフは格闘でアリスとの決着をつけるつもりなのだ。

 

(……格闘ですか。 なら、やることは1つ!!)

 

アリスは踏みとどまり、飛んでくるロイドフの拳を受け止め、そして空中でその首を両足で固定し、全体重を掛けた。

 

「おあっ!!?」

『う、腕十字だ!!! ロイドフ選手、再び組み伏せられてしまった!!』

 

「くぬっ…………!!!!」

アリスは寝そべったまま全背筋を使って仰け反り、ロイドフの関節を極めにかかった。

 

『さぁアリス選手、追い討ちをかける!!

このままロイドフ選手の腕を 折ってしまうのか!?

 

い、いや!!!!』

 

その時、ロイドフは固められていない方の腕を地面に付け、そこに筋力を集中させた。

プロテンアロエで強化された腕には筋肉が集まり、やがてアリスの身体に再び【浮遊感】が襲った。

 

そして、

 

ブオッ!!!! 「!!!?」

『な、投げた!!!! ロイドフ選手、再びアリスの寝技を強引に切り返したァ!!!!』

 

アリスは投げ飛ばされ、空中を横断する。

そこにロイドフの追い討ちが襲う。

 

「終わりだ!!!」 「!!!!」

 

空中で無防備なアリスに無慈悲な蔓の槍が襲う。しかし、それでもアリスの思考は冷静だった。

 

ガッ!!! 「!!?」

 

アリスは空中で蔓の槍を受け止めた。

そしてそのまま身体を翻す。

 

『こ、これは一体━━━━━━━━━!!?』

 

 

「あ、あれって………!!!」

 

そう言ったのは哲郎だった。アリスのとった動きに見覚えがあったからだ。

そう。 アリスが今とっている動きは魔界コロシアムで自分がサラの使った《炎之龍神(サラマンダー)》に対して使った技だったからだ。

 

「ハイヤッッ!!!!」 「うおっ!!?」

 

ロイドフは蔓を掴んでいた。その蔓に引っ張られて彼の身体は宙を舞った。

 

ズダァン!!!!! 「!!!!! ガハッ!!!」

 

ロイドフは背中から地面に強かに打ち付けられた。全身に走る激痛と乱された呼吸で地面をのたうち回り、グロッキー状態になっている。

 

その隙を見逃す事無く、アリスは飛び上がった。そしてそのままロイドフの腹に全体重を乗せた蹴りを見舞おうとした

 

 

その時、アリスの脚に件の蔓が巻きついた。

蔓のしなやかで豪快な動きに引っ張られてアリスの身体は空を切る。

 

ドゴォン!!!!! 「!!!!! ガハッ!!!!」

 

今度はアリスが背中から地面に打ち付けられた。

 

『なんという熾烈な勝負だ!!

ロイドフ・ラミンを相手取り、アリス選手、1歩も譲りません!!!

そして凄いのはロイドフ選手も同じ!!

付け入る隙を、全く与えません!!!!』

 

互いにグロッキー状態が続いたが、それも終わりを告げた。

 

『おおっと! ロイドフ選手、立ち上がりました!! しかしこれは一体!!?

彼の背後の蔓が、まるで『黙って見ていろ』と命じられたかのように、その場に静止している!!』

 

「…………………??」

 

ロイドフは地面に伏しているアリスを見下ろしていた。

 

『何をしているのか!? ロイドフ・ラミン!!

あと一撃でも入れればそれで終わるのに、全く動きを見せない!!!』

 

「……………………???」

「何をしているんだ。起き給え。

 

起きて戦い給え!!!」 「!!!」


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