異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#59 Tidalwave impact

『さぁ マキム選手、負傷をおった身体で何とか間合いを取ります!!

この屈指の実力者を相手取り、如何なる戦法を見せるのか!!』

 

マキムのダメージは既に適応していたが、それを悟られてはいけなかった。

無傷なことに気づいたらアイズンはきっと 今度こそ全力を出して倒しにかかるだろうからだ。もしそうなれば死にはしないにしても場外に追いやられかねない事態に陥るだろうとそう考えていた。

 

「威勢のいい事言ってた割にへっぴり腰じゃねぇかよ!!!!」

 

アイズンはマキムに対して何本もの鉄柱を展開する。 それを何とか避けられているふりをして、一撃必殺のチャンスを狙っている。

 

魔法のない哲郎がこの屈指の実力者を倒す唯一の方法がそれだった。

 

 

「………もう 終わらせっか。」 「!!!」

 

アイズンを取り囲っていた鉄柱が一つに束ねられ、そこから牙や翼が生えてきた。

これには哲郎も動揺を隠しきれなかった。

 

「…………………!!!! 龍…………!!?」

「そうだ。 こいつが鋼鉄之龍(アダマント)だ!!!!」

 

アイズンの宣言を起爆剤とし、会場には熱狂と騒然とが入り乱れた。

 

『で、出ました!!!! 鋼鉄之龍(アダマント)!!!!!

アイズン・ゴールディ きっての必殺技がこの公式戦の場で発動しました!!!!』

 

その龍を見上げて哲郎が考えていたのは サラの《炎之龍神(サラマンダー)》とそっくりだということだった。

 

「この牙を喰らえや!!!!」

 

アイズンは腕を振るって鋼鉄之龍(アダマント)をマキムに襲わせた。

 

(サラさんの炎之龍神(サラマンダー)に似てるなら、対処法も同じはず!!!)

 

哲郎はアイズンに脚を向け、その牙を自分の脚に噛ませた。

鋼鉄の牙が脚の肉に食い込むものの、その激痛に構うことなく、すぐに行動に移った。

 

「はいやァッッッ!!!!!」

「うぉッッ!!!?」

 

哲郎は身体をオーバーヘッドキックの要領で縦に回転させ、脚に繋がった龍に直結しているアイズンの身体は回転に引っ張られて宙を舞う。

 

ドゴォン!!!!! 「!!!!!」

 

サラとは違い、アイズンはそのまま頭から地面に激突した。

あまりに一瞬の事に、会場にも衝撃が走る。

 

『な、何とマキム選手がアイズン選手を投げ落としたァーーーーーーーーー!!!!!』

 

アイズンの下半身は少しの間 静止し、そして地面に大の字に倒れた。

受け身を取れなかったアイズンの身体には少なからずダメージが刻み込まれ、起き上がれなくなっている。

 

『ダメージは決定的か!!? アイズン選手、未だに立ち上がれない!!!

しかし、それはマキム選手も同条件!!

追撃が下されていません!!!』

 

時間にして十と少しの秒数が経った後、アイズンはよろけながらも立ち上がった。

振り返ってマキムに送った視線には、【屈辱】や【困惑】などの様々な感情が入り交じり、表情からは明らかに冷静さが消えていた。

 

「……たった1発 ぶち込んだくらいで 俺を超えたつもりかよォ!!!? エェ!!!!?」

 

哲郎は何の反応も見せない。

その言葉が虚勢である事は火を見るより明らかだった。

 

「………まぁいいさ。

お前は俺を本気で怒らせちまった。」

「試合の場で攻撃して、どうして怒られなければいけないんですか?」

「!!!!!」

 

哲郎の何気ないその一言は、アイズンの心を深深と抉った。こうして 演技によって相手の感情を揺さぶることも重要だと教わっていた。

 

哲郎は棒立ちで怒りに震えているアイズンに対し、跳び上がった。

そして全体重を乗せて彼の鼻先に両足で蹴りを見舞った。

 

『け、蹴ったあああああぁぁぁッッ!!!!!』

 

アイズンは鼻から大量の血を噴き出し、再び背中から大の字に倒れた。

 

「~~~~~~~~ッッッ!!!!!」

 

アイズンは上半身を起き上がらせたもののその鼻からは蛇口を限界まで開いたようにおびただしい程の血が流れている。

 

『一気に形勢逆転だ!!

マキム選手、あの屈指の実力者 アイズン・ゴールディを 完全に圧倒している!!!!』

 

哲郎は試合を終わらせようと、アイズンと距離を詰めていく。しかし その間合いに入る寸前でアイズンが立ち上がった。

その口が何故か綻んでいる。

 

「!!」

「……もう終わりだ。」 「??」

 

「俺がこいつを使ったからにはおまえはもう手も足も出せねぇぞ!!!」

 

アイズンは胸の位置に魔法陣を展開した。

 

鋼鉄之鎧(イエラ・ラグリマ)!!!!!」

「………………!!!?」

『こ、これは━━━━━━━━━━━━』

 

魔法陣からいくつもの鉄柱がぐねぐねも曲がりながら展開していき、身体を覆っていく。

アイズンの姿は騎士が着る甲冑のようになった。

 

『アイズン・ゴールディ、ここに来て奥の手を発動したァーーーーーーー!!!!』

「こいつは魔力の塊だ。

お前のちっぽけな拳骨なんかじゃ ヒビ1つ付けられねぇよ!!!!」

「…………………………。」

 

 

哲郎は誰にも気づかれないように心の中で喜んだ。 これこそが 待ち望んだ 【一撃必殺の機会】だったからだ。

 

哲郎はこのパリム学園の誰にも見せていない(・・・・・・・・・) 【カジキの構え】をとった。

そして地面を蹴り、アイズンに強襲する。

 

「…………んぁ?」

『こ、これはマキム選手、

一体 何を━━━━━━━━━━━!!!?』

 

《魚人波掌 杭波噴(くいはぶき)》!!!!!

バチィン!!!!! 「!!!!?」

 

身体を振るって、アイズンの胸に掌を叩き込んだ。


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