異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#60 Jellyfish Armbreaker

《魚人波掌 杭波噴(くいはぶき)》!!!!!

 

バチィン!!!!! 「!!!!?」

 

哲郎は全身の力を存分に振るってアイズンに渾身の魚人波掌を叩き込んだ。

 

魚人波掌 杭波噴(くいはぶき)

魚人武術の御業の一つ。

攻撃に特化した魚人波掌で、波を1本の柱のようにして叩き込むような衝撃を相手に見舞う。

まともに食らえば全身の水分が衝撃に揺り動かされ、目や全身の毛穴から大量に血を吹き出す。

 

今 食らったアイズンもまさにその状態になっていた。

 

「があぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」

 

アイズンは全身 血まみれになり、絶叫しながらのたうち回っている。

 

『い、一体何が起こったのでしょうか!!?

アイズン選手、まるで 赤子のように地面に崩されてしまった!!!』

 

「…………な、何故だァ……………!!!?

俺のこの鋼鉄之鎧(イエラ・ラグリマ)の魔力の密度の前には今まで誰も傷をつけられたことがないのに……………!!!!」

「誰も? それは【ラドラ】さんでもですか?」

「!!!!? て、テメェ

なんでその人の名前を……………!!!?」

 

哲郎は言葉巧みにアイズンの動揺を誘った。

ダメージを負った身体、そして心には今の言葉は酷く堪えていた。

 

「ちなみに教えておくと、僕が今使ったのは 魚人波掌。相手の水分と魔力に衝撃を叩き込む技です。

魚人武術の技 と言えば分かるでしょう?」

「!!? 魚人武術だと!!?

ふざけんな!!! この俺が 俺の魔法があんな貧弱なお遊びなんかに負ける筈があるか!!!!!」

「ふざけているのはあなたの方だ。

自分の力を過信し、ましてやよく知りもしない物をなんの根拠も無しに 貧弱と罵るその慢心!!

 

そんな性根に漬け込むなんて猿でもできる事だ!!!!」 「!!!!!」

 

アイズンの額には既にいくつもの青筋が浮かんでいた。

今、彼の頭の中には【屈辱】や【憤怒】や、【恥辱】など、とにかく様々な感情が入り乱れ、押し潰していた。

 

「…………フフフ。」 「?」

「1回魔力に衝撃をぶち込んで 俺に勝ったつもりか………………?

 

甘いんだよォ!!!!!」

 

アイズンは無詠唱で鉄柱を展開し、それを哲郎の腹に炸裂させた。

身体がくの字に折れ曲がり、外枠まで一直線に吹き飛ばされる。

 

『こ、ここに来てアイズン選手の起死回生の一撃が炸裂したァーーーーーーーー!!!!!』

「ハハハハハハハハハハハ!!!!!

ざまぁねぇ!!!! 一瞬 自分(てめぇ)の力を過信したのが命取りだったなぁ!!!!!」

 

哲郎は大の字に倒れていた。

誰の目からも もう立ち上がることは出来ない

 

 

かのように見えた。

 

スック 「!!!!?」

『た、立った!!!!』

 

「………………!!!!

ま、まぐれだ!!!! 俺の魔法をもろに食らって立ってられる筈が 」

「もろに食らった ですって? 僕が?

一体 何のことですか?」

「~~~~~!!!!

んなら もう1発でそのハラワタ ズタボロにしてやる!!!!!」

「やれると言うならどうぞ」

 

哲郎はそう答え、再び構えをとった。

しかし、それは【カジキの構え】とは違う両腕の力を抜いてだらりと下ろし、全身の重心も下がっている いかにも隙だらけの構えだった。

 

そこにアイズンの鉄柱が容赦なく襲いかかる。その先端が哲郎の顔面に直撃する

 

 

 

直前で身体がまるで 風にあおられる風船のように宙に浮き、鉄柱の強襲を完全に受け流してしまった。

 

「な…………………!!!!?」

 

そのあまりに異様な光景にアイズンは肝を抜かれていた。それに構うことなく哲郎は空中で一回転し、元の位置に着地する。

 

「分かりましたか? あなたの魔法は僕にはただの1回も直撃などしていないんですよ。

これが 魚人武術 最大の防御

 

海月(くらげ)の構え】です。」

「………クラゲ……………!!!?」

 

 

海月(くらげ)の構え

両腕の力を抜き、全身を脱力させ相手の攻撃への迎撃のみに焦点を絞った 待ちの構え。

相手の攻撃と完璧にタイミングを合わせれば 受けるダメージを完全に無効化できる。

 

その際の動きが波に身を任せ漂う海月(くらげ)に似ていることから、【海月(くらげ)の構え】という名が付けられた、魚人武術の防御の奥義と形容される構えである。

 

「……………下らねぇ。」

「何ですって!?」

 

「そんなもん、この手でぶん殴れば終いだろぉがァ!!!!!」

 

アイズンは十八番の鉄柱魔法を使わず、哲郎に強襲した。それは誰の目にも 悪手としか言いようのない行動だった。

 

「くたばれやァ!!!!!」

 

アイズンは鋼鉄のグローブを纏った拳を哲郎の顔面目掛けて振るった。 しかし、哲郎はそれも予測していた。

アイズンの拳が到達する前に掴み、逆に引き寄せた。そのまま横方向に飛び上がり、アイズンの肘を自分の脇腹に掛けた。

 

「はいやァッッッ!!!!!」

ボキンッッ!!!! 「!!!!?」

 

そのまま身体をきりもみ回転させ、脇腹を支点にして てこ の要領でアイズンの右腕を破壊した。

 

「があぁぁあああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!」

『な、何とマキム選手、アイズン選手の右腕を奪ってしまった!!!!!』

 

アイズンは腕を折られた激痛に崩れ落ちた。

 

「これは魚人武術の技ではありませんが、僕が海月(くらげ)の構えから編み出した我流の技

 

安っぽい名前ですが、【ジェルフィッシュ・アームブリーカー】とでも呼ぶとしましょう。」

「~~~~~~~~!!!!!」

 

腕の激痛に苦しみ悶えるアイズンを哲郎は悠々と見下ろしていた。

 

「さて、そろそろあなたにもお見せしましょう。あなたが貧弱なお遊びとこき下ろした魚人武術 その真髄をね!!!」


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