ビタァン!!!!!
、と けたたましい音が響き、哲郎の掌がアイズンの剥き出しの背中を捕らえた。
観客席では、ファンがその様子を困惑しながら見ている。
「!!? 何だ!? マキムさん、一体何を……………!!?」
「《
「「しょうべんけん??」」
エクスの口から出たその聞きなれない言葉に 2人は聞き返した。
それに構わず エクスは口を緩めて続ける。
「知らなくて当然だろう。
だが、これから爽快なものを見られるぞ。
見てみろ。 アイツを。」
***
「アガァああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!
ああああああああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
あぎゃあああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!」
観客席は、その異様な光景に戸惑っていた。
アイズンが、この世の物とも思えない程悲痛に絶叫しながら地面をのたうち回っているのだ。
『い、一体何が起こったのでしょうか!!??
アイズン選手が まさに
しばらくして、アイズンの身体から痛みが引き、絶叫は途絶えた。
息を絶え絶えとさせながら起き上がり、観客達はその目に飛び込んできた光景に度肝を抜かれた。
『な、一体これは!!?
あの背中の傷は 一体!!!?』
アイズンの背中に、真紅の色で掌の跡がべったりと刻み込まれていた。
その痛々しい光景にファンやアリスも思わず目を背けてしまう。
「分かったか? あれが《
《
全身の筋肉を極限まで弛緩させ、肉体を最大限まで脱力させる。
達人の行うそれは、敵愾心にすら蓋をし、攻撃を読むのが困難になる。
《
魚人武術の中でも、最上位の妙技と謳われる神技である。
「そして、この技の考案者はこう 言葉を残している。
『これこそが、全人類の意表を突く
「「………い、意表??」」
「正しくそうだ。 俺もその言葉の意味を理解した時には目が皿のようになったものだ。 このラグナロクに生き、そして強さを希う全ての人類には、【盲点】が存在するんだ。」
「「………盲点??」」
「そうだ。人間には、例えばグス。ファン、お前はあいつの身体をどう思った?」
「?? …………到底 女性のものとは思えない程に鍛え抜かれて、硬い筋肉に覆われていました。」
「その通りだ。 しかし、たとえその身体であっても、そこには弱点が存在する。
それは、《皮膚》だ。」
皮膚
戦闘、特に己の五体のみを用いた格闘や闘争の場では、拳や脚による殴打が重視されるが、有効打は他にも存在する。
皮膚とは、人間が持つ最大の広さを持つ器官であり、いかなる方法でも鍛えることは出来ない。たとえ出来たとしても、その完成度は筋肉などには遠く及ばない。
仮に生まれて間もない乳飲み子と筋骨隆々の巨漢の皮膚状態を比べても、その状態は酷似している。
その激痛は、到底 名状しがたい代物であり、五体のどこで受けても同じだけの激痛が襲う。また、強力な鞭で連打された場合、ショックによって死に至る危険性すらある。
今のアイズンには、それだけの激痛が走っていた。
***
「ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ…………………」
「……………………………………」
哲郎はアイズンの恐怖に歪んだ顔を見下ろしていた。頭には慈悲の心は全くなく、あったのはこれから二度といじめをする気を起こさせないように裁かねばならないという思考だけだった。
「……………今から味わう地獄の全てが、あなたがやってきた悪行の報いと心得なさい。
そしてせいぜい 祈っておいてください。
また明日 生きてこの地を踏める その
哲郎は再び
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッ!!!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!」
アイズンは再び激痛にのたうち回った。
その絶叫は最早 言葉にならないほどだった。