異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#66 The chaser underground

「分かっているだろうが、突入は3日後だ。」

「それはもちろん 分かっていますが、どこからどうやって敵陣に入るんですか?」

 

「お前が情報を得るために忍び込んだ隠し階段があっただろう?

あそこはそのまま敵の本拠地に通じている。

俺ならそこを自分で開ける事が出来るから、そこから突入する手筈になっている。

 

ちなみにこれはファンとアリスには既に説明済みだ。 あの二人にも戦力として戦ってもらう必要があるからな。」

 

「………それと、もう1つ良いですか?」

「どうした?」

 

エクスの話をある程度聞いて 哲郎は手を挙げた。

 

「……エクスさんの家庭には軍隊とかもあるって言ってましたよね?」

「ああ。 だが それがどうした?」

「いや、 それなら どうしてその方向の人達から協力を要請しないのか 少し疑問に思っていまして。」

 

「何を言うかと思えば。

頼める筈が無いだろう。 これは学園内の問題だぞ。 第一 軍隊は毎日のように仕事が詰まっている。 俺個人の要請が通るくらいなら初めからそうしている。」

「ああ。 そうですか。

じゃあ 戦力がどれくらいあるのか教えてください。」

「まだ完全には分からないが、少数精鋭で行くつもりだ。 入口が狭いし、何より目立った行動は出来ないからな。」

 

「なるほど。

それで、時間帯は何時ぐらいを予定しているんですか?」

「夜を予定している。

奇襲は成立しないだろうが、それでもなるべく可能性は多くしておきたい。」

「分かりました。」

 

そこまで言って哲郎は質問を止め、代わりに1つの意見を出した。

 

「もし迷惑で無ければ、僕から1人 戦力になりそうな人を推薦したいんですけど。」

「構わないが、 それは誰だ?」

「マキムの時に同室だった マッドさんです。 彼もあなたから見ればかなり荒削りに見えるかもしれませんが、それでも即戦力としては十分だと思うんですが。」

 

「そいつなら知っている。

考えておこう。」

「ありがとうございます。」

 

哲郎は素直に頭を下げた。 彼のこういう表面上に出ない人間性への接し方にも慣れてきた所だ。

 

「ところで、御手洗ってどこにありますか?」

「そこを出て角を曲がったらすぐに見える。

迷うことも無い。」

「分かりました。」

 

 

哲郎は部屋を後にした。

 

 

 

***

 

 

「フゥー」

 

哲郎はトイレから出た。

妙な緊張で催していたのは本当の事だ。

 

(えーっと 角を曲がってすぐだから…………)

 

ドアのすぐ傍にある角を曲がってエクスの部屋に戻ろうとした━━━━━━━━━━━━

 

 

「!!!!?」

 

その時、足元に奇妙な感覚が走った。

まるで地面が消えてしまったかのように身体が傾いたのだ。

 

(!!!!? な、 こ、これは━━━━━━━━━━)

 

地面に視線を送ると、その地面が流動化し、足首が飲み込まれていた。

足首からズブズブとどんどん飲み込まれ、地面に引き込まれる。 哲郎は少なからず 恐怖を覚えた。

 

咄嗟に助けを求めて口を開こうとした時には身体全体が流動化した地面に引き込まれてしまった。

 

 

 

***

 

 

(……………………!!

…………な、 何が起こったんだ……………!!?)

 

全身に冷感が走り、息が出来ずに右も左も分からない状況 それは正しく水中の状況だった。

 

 

『………目ェ覚ましな。

マキム・ナーダ(・・・・・・・)。』

「!!!?」

 

マキム・ナーダ

それは、哲郎がパリム学園で生活するために身につけた仮の姿

公式戦が終わった時点で捨てたその名前を呼ばれて哲郎ははっと 目を開いた。

 

「!!!?」

 

目も呼吸器も【適応】して問題なく視界が鮮明になって動けるようになり、哲郎は前方を確認した。

 

そこには男が立っていた。

そこがどういう状態かは分からないが、 見知らぬ男が1人 立って哲郎を見つめていた。

 

『やっぱり息はできるようだな。

しかしどうだ? 浮力に足が捕らわれている気分は?』

「……………………………………!!!!」

 

その男は 黒色の短髪に 限りなく白に近い肌をしており、服は黒の繋ぎをしていた。

 

『どうやら 俺が誰なのか気になって仕方ないって顔だな?

教えてやるよ。 俺はお前がぶちのめしたアイズンの上に立つ者だ。』

「……………!!!」

 

『お前は出過ぎたんだよ。 ラドラさんの目的を邪魔するお前は 殺す もしくは少なくとも3日間は大人しくして貰わなければならない。 そのために俺は来た。』

 

泡の出る音と水に響きすぎて聞き取りにくいが、彼の目的と素性の大まかな予想はついた。

 

「………あなた、【七本之牙(セブンズマギア)】の差し金ですね?」

『そこまで予想がついたか。

そうだ。 俺はハンマー・ジョーズ。

お前を仕留める男の名前だ。』


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