異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#70 Demonstrate

「…………じゃあ何だ?

お前、2分で俺に勝つ気でいるのか?

 

アイズンをぶちのめした程度でいい気になるなよ。 俺の強さはアイツとは比にならねぇ。 それは地上(ここ)でも同じだ!!!」

「…………………………。」

 

ハンマーの言葉に偽りは無かった。

アイズンを蛸鞭拳(しょうべんけん)で打ちのめした時のように上手くいく筈は無く、ましてや自分の立てた作戦が全て都合良く通用するとは到底思えなかった。

 

「…………どうした? もたもたしてたら2分なんてすぐに経ってしまうぞ。」

「…………!!」

 

ハンマーは地面を蹴って哲郎と距離を詰めた。

 

「魚人波掌 杭波噴(くいはぶき)!!!!」

「ッッ!!!」

 

ハンマーの掌底を半身で躱した。

そしてその手首を両手で掴む。

 

「はっ!!!」 「!?」

 

哲郎はハンマーの腕に体を掛け、鉄棒の前回りの要領で回転し、そのままハンマーの身体を崩す。

ハンマーは背中から倒れ、哲郎に腕を掴まれたまま仰向けになった。

 

哲郎はハンマーの肩に足を掛け、手首を掴んで身体を仰け反らせ、彼の腕の関節を極めた。

 

「…………………ッッ!!!」

 

ハンマーの腕の関節に痛覚が走り、彼の顔が一瞬 歪む。

 

(…………なるほど。 確かに水から出て動きが格段に良くなってる。

だが忘れてないか? マキム・ナーダ。

 

こいつは公式戦みたいなルールに守られたやわな《試合》とはわけが違う。

どっちかがくたばるまで終わらない ルールもへったくれも無い《潰し合い》だ!!!!!)

 

「!!!?」

 

哲郎の身体が浮いた(・・・)

そしてそのままハンマーの振り上げた腕に引っ張られて宙を舞う。

 

「ッッ!!!」

 

哲郎はハンマーの腕を離し、地面に激突する寸前で踏みとどまった。

 

「……………!!」

「確かに俺の水中から出て 動きのキレは格段に上がっている。

 

が、

 

お前の動きは所詮 人間族の範疇に留まっている。 アイズンを打ちのめして いい気になっていただけだ!!!」

「!!!」

 

ハンマーは魚人波掌の構えで哲郎に仕掛けた。 例え地上であっても彼の身体能力は健在だと 考えるまでもなく分かった。

 

「ッッ!!!」

 

哲郎はハンマーの掌底が直撃する寸前 彼の手首に手を掛け 起動をずらして攻撃を防いだ。 そして 反撃に転ずるために彼の手首を掴む。

 

「甘いぞ!!

このハンマー・ジョーズが 2度も同じ手を食うと思うか!!?」

 

当然 哲郎はそんな甘い事を思ってはいない。ハンマーを投げるのではなく身体を自分の方へ引き寄せた。

 

「!!?」

魚人波掌 《引き潮》!!!!!

 

バチィン!!!!! 「!!!!?」

 

哲郎はハンマーの身体を引き寄せた力を最大限に乗せて腹に掌底を見舞った。

ハンマーの身体は吹き飛び、後方の壁へ激突する。

 

魚人波掌 《引き潮》とは、カウンター特化でも迎撃(・・)特化ではない。

 

その真価は相手が向かってきている時、つまり 自分に向かって動いている時に適応される。

 

「…………………!!!!

ガフッ!!!」

(…………やっと……………………!!

やっと一発まともなのを撃ち込むことができた………………!!!)

 

ハンマーは口から血を吹いた。

その一撃は、哲郎が水中という不利な状況にいた時から耐え抜いて狙い続けていた貴重な一撃だった。

 

(…………間違いなく動きのキレは上がってる。それは認めてやる。

魔界コロシアムを勝ち抜いたってのも頷けるくらいにな。

 

だがな、テツロウ君(・・・・・)よ。

水中じゃなくたって 攻撃の手段はいくらでもあるんだぜ!!!)

 

ハンマーは哲郎に気づかれないようにさりげなく壁に手を当てた。 その壁が次第に流動化していく。

 

魚人武術 《水切り》!!!!

ピジャンッッ!!! 「!!?」

 

ハンマーは手首の動きを使って手のひらに乗せていた流動化した壁を打った。

それは薄くなって刃状になり、哲郎に強襲する。

 

哲郎はそれをかろうじてバク転して躱した。

 

《水切り 時雨鎌(しぐれがま)》!!!!

 

ハンマーは両手で《水切り》を打ち、哲郎の動きを乱す。 そしてついに哲郎の動きに一瞬の隙が出来た。

 

「!!!?」 「貰ったぜ。」

 

一瞬の内にハンマーは哲郎との距離を鼻頭が付くか付かないかの近さまで詰めた。

 

ハンマーの渾身の掌底が 体格差を最大限に活用して上から襲う。 何とか両腕で防御するも、その上からも衝撃が全身に響き、哲郎の身体は床に押して倒された。

 

「今度はこっちの番だな。」 「!!!」

 

魚人波掌 《水圧轟打(すいあつごうだ)》!!!!!

 

ドガァン!!!!! 「!!!!!」

 

ハンマーの掌底は床に巨大な亀裂を走らせる程の威力があった。 それを何とか横に飛んで避けるが、ハンマーはそれも想定していた。

 

ハンマーは哲郎に対して馬乗りになった。

 

「!!!」

「フフフ。 読み違ったな。 マキム・ナーダ。 2分までもう少ししかないが、それを待ってやる義理もないか。

こいつで終わらせてやる!!!!」

 

ハンマーは哲郎に掌底を振り上げた。


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