「………まんまとしてやられましたね。」
「ああ。 認めざるを得ない。
今回はヤツらに一杯食わされた。」
哲郎とエクスは部屋の中で自分たちが敗けたという事実に呆然としていた。
「……恐らくあのハンマー はお前について分かったことを洗いざらい話す事だろう。」
「……返り討ちしたつもりが、逆に彼らに情報を流した という事ですか…………。」
「そういう考えたかをする物じゃない。
万が一 お前という戦力を失うことが一番避けねばならない事だった。」
エクスにとって哲郎は、ラドラ達と関わりを持ち、それでいて自分と一緒に戦ってくれる数少ない戦力だった。
「……そうだ。 情報と言えば、」
「? 何だ?」
「エクスさんは、ラドラ達について何か知ってることは無いんですか?」 「!!」
「言い忘れてましたがあの男、何か変な人形のような物を抱えてたんです。
そう。 大きさはこれくらいの、赤ちゃん位の。 顔は泣いてるのか分かってるのか分からないような、 とにかく不気味で気持ち悪かったのを覚えてます。」
「…………………!!!!」
「そこで僕なりに考えたんですが、彼ってもしかして━━━━━━━━━━━━」
「正解だよ。」
「!」
「ヤツ、 ラドラ・マリオネスは人形魔法の使い手だ。」
「………やっぱり………………。
ですが、その情報は確かなんですか?」
「間違いない。
実を言うと、ついこの前、俺の部下がその術中に嵌って返り討ちにあった。」
「!!!?」
***
約1か月前
「これより突入するが、その前に、今回の目的をおさらいしろ。」
「はい!ラドラ共の陰謀の手がかりを掴むためであります!!」
「よし! それから 分かってるだろうが、無謀な交戦は絶対に避けろ。少しでも危険だと判断したらすぐに引き返せ。 そして俺に情報を提供しろ。」
「「「はっ!!!!!」」」
エクスは自分の部下の中でも特に隠密や潜入に優れている者 3人をラドラの元へ向かわせた。
理由は ラドラがこのパリム学園に何かやるという噂を耳にしたからだ。
「いいか? ヤツらはこの場所に地下室を作り、そこを魔法で隠蔽ている。
その魔法を こいつで解くんだ。」
「それは?」
エクスは懐から水晶のような物を取り出した。
「こいつは魔法解除に特化した魔法具だ。
これを使って隠蔽魔法を解き、そこから侵入しろ。
それから分かっているだろうが、こんな大それた物を使えば間違い無くヤツらにもバレるだろう。 だから侵入できる時間は15分と見ておけ。」
***
「………ラドラ様」
「言わなくても分かっている。
エクスの手先がここに来るんだろう。」
「はい。それで、如何しますか?
入口にて迎撃しましょうか?」
「いや。 迎撃よりもいい方法を考えている。」「?」
「こちらの戦力拡大と奴らの戦意喪失を同時に行える策がな。」
***
エクスの部下たち3人は予定通りに魔法を解除して現れた階段を降り、通路を進んでいた。
「エクス様、現在は異常ありません。」
『良いか? 決して気を抜くな。
ラドラ共は間違いなくこちらの侵入に気づいている。
場合によっては攻撃してくることも考えられる。 現にこの近くで生徒複数人が行方不明になっている。
奴らの仕業とみて間違いないだろう。』
エクスは自室から通話魔法で部下たちに指示を飛ばしていた。
「!」
『どうした!?』
「何か落ちています!」
『気をつけろ。 有害なものかもしれない』
「はっ!」
エクスに言われた通りに男は手袋をして落ちているものを拾い上げた。
(………これは……………
糸…………?
いや、髪の毛?)
『どうした? 何が落ちていた?』
「報告します。 通路に毛髪が落ちていました。」
『毛髪? 分かった。持ち帰って行方不明者の物かを確認するぞ。』
「了解しました!」
男は髪の毛を袋に入れ、さらに歩を進めた。
「報告します。
只今 曲がり角に到着しました。」
『十分に注意しろ。
待ち伏せされているかもしれない。』
男は明かりを照らしながら角を曲がった。
そしてその目に奇妙なものが入る。
「………?」
『? 何だ どうした?』
「……何か、細長いものが見えます。」
『細長いもの?』
「はい。 三本、蛇のように動いているような。」
男の目には確かに曲がり角から細長いものが動く という光景を映していた。
『馬鹿な。 ここは学園内だぞ。
蛇なんているはずが』
「………近付きます。」
『慎重に行けよ。』
男は恐る恐る ゆっくりとその動く何かに近づいて行った。
「!!!!!」
『!? おいどうした!!?
何があった!!?』
男はその動くものの正体に気付いた。
それは、人間の腕だったのだ。