異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#81 A voice of a crane

「エクス様、この屋敷をくまなく探しましたが、テツロウは何処にもいません!!」

「そうか。 やはり拉致されたと見て良さそうだな。」

 

ミゲルの報告をエクスは冷静に受け流した。

しかし、心の中ではかなり焦っている。

 

(まずい事態になった…………!!

ヤツらはテツロウがハンマーを倒したことを知っている。 それを見込んで戦力にしようものなら、テツロウだけでなく俺達全員に被害が出る………!!!)

 

今のエクスに出来るのは、哲郎に渡した水晶の魔法具と通信を取ることだけだった。

 

 

 

***

 

 

 

哲朗は心の中で頭を抱え、そして苦悩していた。

そして彼が求めたのは、ミリアが信頼できるという確固たる証拠だった。

 

「!」

 

その時、手の中にしまった水晶がぼんやりと光った。 そして初めて、この水晶に通話機能が備わっている事を思い出す。

 

『聞こえるか!? 俺だ エクスだ!!

出ているのは誰だ!!?』

「エクスさん!!! 僕です、 僕が水晶を持ってます!!!」

『……そうか。まずは一安心だな。

一体何があったんだ!? まずはそこを教えろ!!』

「……はい。 分かりました。」

 

哲郎はエクスに部屋で待機している時に何者かに背後から襲われ、その後どこか分からない場所に放り込まれた事を説明した。

 

『そうか。 実を言うとだな、お前がいた部屋から魔素が見つかった。 敵は何かしらの魔法を使って潜伏し、隙をついてお前を襲ったと考えている。』

「なるほど。 ところでエクスさん、

学園内の行方不明者の名前って分かりますか?」

『? リストなら渡されているが、それがどうした?』

「僕のいるこの場所に、拉致されたと主張している僕と同年代の女性たちが十数人いるんです。」

『何?! という事はそこは監禁場所ということか?!』

「ええ。 彼女の言ってることがほんとうならそうなります。 それでエクスさんに頼みたいことがあるんですが、そのリストの中に【ミリア・サイアス】という名前はありますか?」

『? ちょっと待ってろ

…………あるぞ。 ミリア・サイアス 捜索願いも出ている。』

「では、いつ失踪したか分かりますか?」

『3日前だと記録がある。』

「…………!!!」

 

哲郎は心の中で旨を撫で下ろした。

気を張らなくていいという安心と、確証を得られた喜び、そしてミリアを疑ってしまった申し訳なさが一気に彼の心に押し寄せた。

 

「それからもう1つ頼みたいことあるんですが、これに拡声機能は付いてますか?」

『ああ。 お前の操作で可能だ。』

「なら、僕がその機能をつけたらこういって欲しいんです━━━━━━━━━━。」

 

 

 

***

 

 

「━━━━━━━━━━━━では、そういう事ですのでお願いします。」

 

そこまで伝えて哲朗は通話を切った。

 

「………あの、マキム さん?

さっきから後ろを向いて何を…………?」

 

ミリアの声に振り返った。

その目を見て、謝る決意を固める。

 

「………ミリアさん、すみません。」

「?」

「僕はひとつ、あなたに嘘をつきました。

僕の名前はマキム・ナーダではなく、【テツロウ・タナカ】といいます。

あなたが【危険人物】かもしれないという可能性を恐れ、偽名を使ってしまいました。」

「偽名? それに私が危険ってどういう……」

 

ミリアの純粋に疑念を抱く声を聞く度に哲朗の良心は痛んでいく。

そして哲朗は打ち明ける決意も固めた。

 

「言い訳する気はありませんが、理由を言わせて頂くと、僕には【責任】があるんです。」

「責任?」

「はい。 詳しくは【彼】が説明してくれるでしょう。」

 

哲朗は手に持っている水晶を揚げ、【話す】とイメージした。 それで通話は可能になる。

水晶が光り、哲朗は次に【拡声する】というイメージを固める。

 

「エクスさん、もう大丈夫です。」

『そうか。分かった。

諸君、私の声が聞こえるか!!?』

『!?』

 

暗い通路にエクスの声が響き、その場に居た全員が一斉に振り返った。

 

『私の名はエクス・レイン!!!

パリム学園の寮長を務めている。』

 

「エクス!?」

「寮長って言った!?」

「本物!!?」

 

エクスの名前を聞いただけでその場に居た少女達の目に光が戻り、哲朗の方を向き始めた。

 

『私は諸君らが行方不明になっていることを知り、そして救出のために今動いている!!

今腕を掲げているであろう少年も私の仲間だ!! 君たちの救出は約束する!!!

 

どうか今しばらく耐え忍んでくれ!!!!』

 

エクスの鶴の一声は彼女たちに希望を与え、活力を与えた。

 

『これで良いか?』

「はい、完璧です!! ありがとうございます!!! それで、この水晶のある場所が何処かは分かりませんか?」

『それは今 逆探知をやっている所だ。 だが いかんせん時間がかかっている。 恐らくその場所に妨害系の魔法が仕掛けられているのだと見ていいだろう。』

「なるほど。 ではそれまでは僕が彼女たちを━━━━━━━━━━━」

 

 

「嫌あああ!!!!!」

『「!!!?」』

 

通路に絶叫が響き、哲朗がその方向を向くと、そこに居たのは先程 哲朗を襲った2人組の怪物だった。

その怪物が 一人の少女の上に馬乗りになっている。

 

「ば、馬鹿な……!!

さっき僕は確かに………!!!」

『おい どうした!!?

何が起きてる!!? 応答しろ!!!!』

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