異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#89 We are ONE

(食らえ!!!まだ1度も見せていない技だ!!!!)

 

《ジェリーフィッシュ・スープレックス》!!!!!

「!!!!?」

 

ドゴォン!!!!!

 

レイザーを頭から叩き落とし、周囲に轟音と土煙が舞った。

 

(……………もうこれで終わってくれ……………!!!)

 

「………残念でしたね。」

「!!!!!」

 

極限状態にあった哲郎の精神を突き落とすレイザーの声が聞こえた。 土煙が晴れて目に入ってきたのは刀身を地面に突き立てて受け身を取っている彼の姿だった。

 

咄嗟に反撃に備え、レイザーとの距離をとる。

 

「本当に冷や汗をかきました。 あのまま地面に落とされていたら負けていたのは私の方だった。」

「………………!!!!!」

 

「もう万策尽きたようですね。 ならば今度こそ終わらせて貰いましょう!!!!」

 

哲郎の眼前にレイザーの刃が迫って来た。

 

 

 

***

 

 

ガリウムは通路内を走っていた。 といっても、脚を負傷している少女達に合わせているので少しずつ離れる程度になっている。

 

「諸君! たった今 エクス寮長から援軍を送ると連絡があった! 君達はかならず助かる!! だから、もう少し持ち堪えるんだ!!」

 

長時間の監禁によって精神が半壊しており、なおかつ脚の激痛を耐えている少女達の心に訴えかけ鼓舞する。

 

「彼らを信じろ!! テツロウ君は必ず奴を食い止めてくれる!!! 希望はあるのだ!!諦めずに頑張ってくれ!!!!」

 

微かではあるが少女たちの掛け声が通路に響く。

 

(彼女達も身を粉にして頑張ってくれている。俺もそれに応えなければ

 

!!!!)

 

背後に気配を感じてガリウムは振り返った。

 

「…………!!!! な、何だと……………!!!!」

 

暗視の魔法をかけた眼に映ったのは人形の怪物だった。 それも一体ではなく、二体も三体もぞろぞろと迫ってくる。

 

「い、嫌ァ!!!!」

「た、助けて助けて!!!!!」

「こ、殺させる!!!!」

 

(!!! まずい!!!)

 

かろうじて落ち着いていた少女達の情緒が崩れ、悲鳴が響き渡る。

 

「落ち着け皆!!!! パニックになってはいけない!!! 俺の後ろにつくんだ!!!

 

大丈夫だ!!! 君達の無事は俺が保証する!!!」

 

エクスの息がかかったガリウムの言葉に少女達のパニックは一時的に収まった。

 

(………とはいえどうする!!?

どうやってこの大軍から彼女達を守れば

 

!?)

 

そこまで考えてガリウムは自身の異変に気付いた。 既に暗視の魔法を使い続け、全力とも言える攻撃を何回も使っているというのに、身体の疲労が全く感じられないどころか疲労がじわじわと回復している感じさえしていた。

 

「………こ、これは…………………!?」

「ガ、ガリウムさん…………!!」

「!?」

 

ガリウムが振り向くと、自分の方に手を伸ばしている少女がいた。

 

「き、君は確か……!」

「はい。 このパリム学園のミリア・サイアスです。 今、あなたに強化魔法をかけています。 それに、皆の魔法ももうすぐ掛かる筈です。 だから、あいつらをやっつけて下さい!!!!」

「……………!!! 分かった!!!」

 

自身に掛かっている全幅の信頼を胸に、ガリウムは拳を構えた。

 

(テツロウ君が俺に言っていた、ヤツらが男性を優先して襲ってくるという推理が正しいなら、必ず俺を狙ってくる筈だ。

ならば、そこを叩くだけだ!!!)

 

怪物の内の一体が全身のバネを使ってガリウムに飛びかかった。 その迫力に少女達の間に緊張が走る。

 

「ぬゥン!!!!!」

ドゴン!!!!!

「!!!!!」

 

全身の筋肉を振るって怪物の顔面に鋼鉄の硬さを持つ拳を叩き込んだ。 ミリア達の強化魔法によって攻撃の威力も上がっているのが実感できる。

 

(……………!!!

これならやれる!! 彼女達を守り通せる!!!

 

いや 違うな。 彼女達は庇護者じゃない!!

彼女達も一員だ!!! 俺達は皆で一つなんだ!!!)

 

「皆!!! 俺を信じてくれ!!!

皆で無事に帰るぞ!!!!」

 

今度は微かではなく少女達が一致団結したのが分かる歓声が響き渡った。 既に 少女達も意識しない内に皆が一つになって無事に帰る という目的に向かって進み始めていた。

 

 

 

***

 

 

「 伝えることは以上だ。 総員 すぐに支度をしろ。状況は一刻を争う。ミゲル・マックイーン、ファン・レイン、アリス・インセンス 直ちに拉致監禁された少女達の救出及びテツロウとガリウムの加勢に向かえ!!!」

 

「「「はっ!!!」」」

 

エクスの自室にて、3人の掛け声が響いた。


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