異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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#91 Tactics No.3

(………今度こそ絶対に失敗は出来ない。

この作戦に僕の全てを賭ける!!!!!)

 

哲郎は手の中に隠し持った【ある物】を握りしめて己を鼓舞した。

その間にもレイザーは冷たく凍りつきそうな鋒を哲郎の方へ向けている。

 

「あなたに稼がせる時間は1秒たりとも無いのですよ。 一瞬で終わらせます。」

(………一瞬か。 僕もそのつもりだよ。)

 

レイザーは鋒を動かして哲郎に狙いを定め 確実に仕留められるタイミングを伺う。

哲郎が自分から仕掛けに行くという無謀な策を取らない人間である事は既に理解していた。

 

 

鋒が射程に入った瞬間、地面を蹴る音が爆発音として響き、レイザーの身体が眼前に迫って来た。

 

( 今だ!!!!!)

 

ジャラッ!!!!

「!!!??」

 

レイザーの足に手に持っていた【ある物】を巻き付けた。

 

(金属音?!! 何だ!?

何をしたんだ!!!?)

「フンッ!!!!!」

「!!!!?」

 

自身の足に起こった異変を確認する暇を与えることなく身体を翻してレイザーを投げ飛ばす。

投げた先は無論 地下水道の水の中だ。

 

ドブン!!!! 「!!!」

(よし!! ここまでは良い

次だ ここからが重要なんだ!!!)

 

 

レイザーも水中ではまともに呼吸ができず、冷静さを乱される。

 

(…………!!! 小癪な真似を!!

脚に巻き付けたのは 恐らくは鎖か!!

地下水道に逃げ込んだのは水中(ここ)に投げ込む為か………!!

だが私がカナヅチだと思っているならとても甘い考え

 

!!!!?)

 

水中から浮上しようとした瞬間、足が何かに固定(・・)されたように動かない事に気がついた。

 

(こ、これは……………!!!!)

 

水中にも慣れ視界が晴れてきたレイザーの目に入ったのは握り拳大の【球体】だった。

 

(これはまさか あの足枷か!!!?)

 

それは紛れもなく自分達が拉致監禁した少女達を拘束していた足枷だった。

 

哲郎はレイザーの攻撃から身を躱し続けている間に自分が水晶の魔法具で切断した足枷を拾って隠し持ち、それと【地下水道】という要素からこの作戦を考えついたのだ。

 

(………この程度の足止めで!!

!!!!)

 

浮上しようと顔を上げたレイザーが見たのは水面の上から構えを取っている哲郎の姿だった。

ぼやけてはっきりとは見えないが、跳び上がって手を上に伸ばし、打ち下ろす(・・・・・)体勢を取っている。

 

(まずい!!! あの構えは!!!!

奴はこれを狙っていたのか!!!)

 

 

レイザーの予感は当たっていた。

《魚人波掌海鼓(うみつづみ) 》!!!!!

 

全体重を乗せて地下水道の水面に全力の掌底突きを叩き込んだ。

その衝撃波は水中を一本の槍となって圧倒的な速度で突き進んでいく。

 

(!!! まずい!!!!)

 

レイザーは慌てて脚に巻きついていた鎖を切断し、自分自身に魔法をかけて衝撃波の槍を躱し、水中から脱した。

 

(なんと抜け目のない少年だ!!

ここまで読んでいたとは ですが今度も上を行ったのは私の方だ!!!)

 

 

しかし、無防備な空中で彼は信じられない物を目にする。

 

「!!!!? なっ………!!!!?」

「それをやると思いましたよ。

上を行ったのは僕の方だ!!!!」

 

哲郎が跳び上がり、水中から飛び出たレイザーの眼前に迫っていた。

その手足はまるで骨が抜けてしまったかのように弛緩しきって(・・・・・・)いる。

 

 

(まずい!!!! あれ(・・)が来る!!!!!)

蛸鞭拳(しょうべんけん) 奥義

蛸壺殴(たこつぼなぐ)り》!!!!!

 

ビタビタビタビタビタビタビタビタァン!!!!!

「!!!!!」

 

両手両足による8回の打撃がレイザーの腹部を集中的に襲った。 そこから全身に激痛が走り、身体が一瞬 硬直する。

公式戦でアイズンの痛がりぶりを見ていたレイザーでも、実体験はその想像を遥かに超えていた。

 

(……………………………!!!!!

つ、次が来る…………!!! ガードを………………!!!!)

「これで最後です!!!!」

 

哲郎は再び手を上に振り上げた。

狙いはレイザーの腹部 一点である。

 

《魚人波掌 打たせ滝水》!!!!!

「!!!!!」

 

レイザーの鳩尾に哲郎の全体重を乗せた掌が突き刺さった。

 

「ぬあアッ!!!!!」

「!!!!?」

 

そのまま手を振り、レイザーの身体を叩き落とす。

レイザーは高速で落下し、そのまま地下水路の水に落ちた。

 

そこからあまりにも巨大な波が発生し、それはさらに大きくなって哲郎の勝利を讃えるかのように響き渡った。


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