異世界に適応する少年   作:Yuukiaway

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ラドラ寮 全面衝突 編 第二幕
#95 Breaktime in the enemy land


『…………何だと………………!!!?

お前今 なんて言った………………!!!?』

「………ですから このままこの5人でラドラ達と戦うと言ったんですよ。」

 

「バカな!!! 君は今 こんなにもボロボロじゃないか!!!

そんななりでは戦いに行くなど死にに行くようなものだぞ!!!」

「………ガリウムさんも分かりませんか。

これは又と無いチャンスなんですよ………!!」

「!!!」

 

ガリウムは哲郎の身を案じて諭したが、哲郎自身の決死の表情に気圧される。

 

「ここで身を引いたら、奴らはきっと拠点を移すはずです。

そうなってはエクスさんがずっと練ってきた作戦が全て水の泡でしょう………!!?

僕には責任があるんです。 絶対にエクスさんに迷惑をかける訳にはいかなかった。だから僕は戦ったんです。そしてまだ戦いは続いている。今こそ奴らをやっつけるチャンスなんですよ…………!!!!」

「…………………!!!!」

 

ガリウムだけでなく その場にいた全員が哲郎の言葉に聞き入り、そして己を恥じた。

エクスと幾許の面識しかない目の前の少年が長年 エクスに仕えてきた自分達より遥かに固い決心を胸に秘めていた。

 

『戦うと言ってもテツロウ、 勝算はあるのか?』

「…………それに答える前に教えてください。

ラドラ達は7人組ですか? それとも8人組ですか?」

七本之牙(セブンズマギア)の事を聞いてるんだな? それなら7人組だ。

ラドラを頭に6人の配下で7人だ。』

「………そうですか。

なら既に5人に減った訳ですね。」

『?!! まさか!!』

「ええ。 追っ手はハンマーを助けに来たあの男でした。

今は通路内に拘束してあります。 武器を持っていたので回収しました。」

『…………そうか。

たった一人でよく戦ってくれた。』

「………その言葉の続きは帰ってきてからちゃんと聞きますよ。」

 

哲郎とエクスの会話はそれで終わった。

エクスには襲撃のことを考えて待機を続けてもらうことにした。

 

 

***

 

 

エクスとの話も終わり ラドラ達との決着をつけるための作戦会議が始まった。

追っ手を警戒してファンとミゲルが通路の端を見張っている。

 

「それからガリウムさん、」

「? 何だ?」

「ここでたくさんの人形達と戦ったんですよね?」

「ああ。 それがどうした?」

「人形から戻った人の中に エクスさんの部下の人はいましたか?」

「いなかったがまさか、俺の他にも攫われた人がいるのか!!?」

「ええ。 僕の前に潜入した人が おそらく人形の腕に捕まったんです。

十中八九 人形に変えられているでしょう。」

 

ガリウムは息を飲んだ。

まさか自分の他にもラドラの術中に嵌っている仲間がいるとは思ってもいなかった。

 

「それが誰か分かるか!?」

「いえ。 ですが一緒に行動していた人たちの名前が確か 《ガイマム》と《バウラール》だった筈です。」

「………そうか。 ならばそいつの救出もしなければな。」

 

「ガリウムさん! テツロウ君!」

「「!」」

 

ファンの声が聞こえた。

 

「通路を見張ってますが、依然として追っ手のような者は現れてません!」

「こっちも同じだ。」

 

「そうか。」

 

追っ手が来ていないことが分かり、その場にいた全員に微かな安堵の感情が芽生えた

 

その時

 

ガシッ ガシッ ガシッ!!!

 

「「「!!!!?」」」

 

ファン ガリウム そしてアリスの脚を茶色の腕が掴んだ。

 

「な、何だ!!!??」

「ま、まさかこれは!!!!」

 

かろうじて無事だった哲郎とミゲルが思考する暇もなく3人は引きずり込まれた。

 

「い、一体これは!!!??」

「分かりませんかミゲルさん ()()()()()()()()()があったでしょう!!?」

「!!!! ま、まさか!!!」

「そうですよ。 僕も()()()()()あの部屋から攫われたんですよ!!!」

 

 

***

 

 

十数分前

ラドラ達が机を囲んでいた。

 

「…………レイザーが負けた。」

『!!!!?』

 

ラドラが冷静かつ驚愕して告げたその事実はその場に居た者全員を驚かせた。

 

「それから奴ら このまま私達と戦う気でいるぞ。」

 

そこにいた全員に緊張が走った。

どこからとも無く現れてアイズンを全校生徒の前で叩きのめし、あまつさえ襲撃してきたハンマーを返り討ちにし、レイザーすらも倒して見せたのだ。

 

「狼狽える必要は無い。

先手さえ打てば事は有利に進められる。」

「そうか。 ならまた同じように」

「いや、仕掛けるのはテツロウ以外にしろ。 奴に二度も同じ手が通じるとは思えない。」

「分かりました。 すぐに向かいます!」

 

そう先手役を買って出たのは他でもない 哲郎を拉致してみせた男だった。


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