敵地で油断し、のうのうと休んで作戦会議をした事がそもそもの間違いだった
哲郎がその事に気づいた時にはあまりに遅すぎた。
既に謎の腕によってファンとアリス そしてガリウムが連れ去られてしまった。
「………それは間違いないのか?
お前もあの時
「…………ええ。 突然床から手が伸びて引きずり込まれました。
ほんの一瞬、抵抗する暇もありませんでした。」
「そいつの顔は見てないのか?」
「ええ。 ですが恐らく
「!!」」
話の途中、哲郎とミゲルは通路の奥に気配を感じて身構えた。
しかし、今までの人形の怪物とは明らかに一線を画す【人間の気配】がそこにはあった。
「………あ、あいつは……………!!!」
「はい。 恐らくは彼が僕をここへ拉致監禁した男…………!!!」
「そうだ 正解だよ。
《
通路奥から歩いてきたその男はハンマー達と同じように《マキム・ナーダ》の名前を哲郎に向かって言った。
「!! あ、あなたは………!!」
「何、彼を知っているのか!?」
哲郎はその男の容姿に見覚えがあった。
男は短めの黒髪に小型のサングラスをかけていた。
グスを尾行してラドラ達の隠れ家を突き止めた時にレイザーと話していたあの男だ。
「………なるほど。
だから俺は警備をもっと厳重にした方がいいって言ったんだ。」
「…………………!!」
追跡がバレてはいなくとも勘づかれていた
その事実は哲郎の心を動揺させるが、すぐに気持ちを立て直して目の前の男に警戒する。
「なぁ テツロウ・タナカ君よ。」
「!!」
不意に口を開かれて一瞬 たじろいだ。
「お前が倒したレイザー
今どこにいるか答えてくれねぇか?」
「…………!!
教えない と言ったら?」
「 そうだな。お前をぶっ倒した後で聞き出す事にするな。」
「二対一で勝てると思うんですか?
エクス・レインの側近 ミゲル・マックイーンを知らないわけではないでしょう?」
たった今 レイザーに勝ったばかりで 調子には乗っておらずとも精神はかなり研ぎ澄まされている。
加えて エクスが全幅の信頼を置くミゲルが傍にいるとなれば哲郎の心にも余裕が出来た。
「………レイザーを倒していい気になってるなら教えてやる。
俺は【ワード・ウェドマンド】
ラドラ様の配下の中では俺かレイザーが1番強いはずだからな。」
ワードと名乗ったその男は不敵な笑みを浮かべてそう言った。
***
「…………だ、大丈夫ですか? アリスさん………」
「う、うん。 何とか…………」
ファンとアリスは引きずり込まれて四方を壁に囲まれた一室に落とされた。
壁に窓は無く、一つの通路で繋がれている。
コトッ
「「!!」」
先程と同じように通路の奥から足音が聞こえた。
「あれ? なーんだ。
こっちには
「ハズレくじみたいに言うなよ。
こいつらがグスやロイドフと戦ったって事実を忘れたわけじゃないでしょ?」
現れたのは金髪を二結びにした少女と緑がかった茶髪を耳の辺りで切りそろえた少年だった。 二人の手にはそれぞれ 身の丈大の杖が握られている。
「そもそも ファンはエクスの実の弟
鍛えて強くなるのは当然だよ。」
「分かってるっての!
いつも通りにあんたがサポートして、あたしがぶっ放してやればいいんでしょ!!」
2人はそれぞれ 杖をファンとアリスに向けた。 それだけの行動で二人の心に緊張が走った。
***
「…………あなたの執念にはほとほと感心しますよ。 ガリウム・マイケル。
1度 我々に負けたのに拘束から逃れるだけでは飽き足らず、ラドラ様の大切な
「………その褒め言葉は是非 テツロウ君に言ってもらいたい。
彼を甘く見て敵地にわざわざ送り届けたのが貴様らの運の尽きだったのだ!!!!」
「…………………」
ガリウムも同様、謎の腕に引きずり込まれま後、隔離された部屋に落とされたのだ。
「それに今だってそうだ。
この ナイク・シュリカン の攻撃をあれだけ
そう。 今 ガリウムの身体には彼の攻撃によって刃物が数本 突き刺さっているのだ。
***
「…………と、まあ そういう訳だ。
楽しんでいけよ。」
「………それは ご丁寧にどうも。」
レイザーとの戦いで負った負傷や疲労を隅に追いやり、哲郎はワードと向かい合った。