IS Let's make you a happy days   作:AK74

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 第十話

「行きなさいブルーティアーズ!」

 

「この!」

 

 何度目か分からなくなる位、オルコットの秘密兵装が俺に向かってくる。

 それが放たれれば一気に形勢を翻され、不利な状況へ持ち込まれる。いや、もう不利な状況に持ち込まれていて、ほとんどオルコットの独壇場だ。

 オルコットに間合いをとらせた事で。

 

「舞いなさい!」

 

 空中を自在に動く秘密兵器は、まるで意思があるかのように宙を舞い、俺を貫かんと迫ってくる。

 数としては1対5あらか様に俺がおされている。オルコットが言うブルーティアーズは威力こそ、主兵装のライフルより劣るが、数と防御を考えれば驚異すぎる戦力差だ。それにオルコットが言うには、ミサイルビットがあるはずだ。それも含めれば1対7、差が開きすぎる。

 それを出される前に一つでも落としたいところだが、そうすれば残りの3機に狙われる。

 文字通り、蜂の巣になる。そのことは白騎士の事を考えれば不利だ。

 たとえ、オルコットに近づくことが出来ても自爆覚悟のミサイルを打ち込まれる。エネルギー差を考えれば、完全にオルコットに分がありすぎる。

 

「その程度ですか?」

 

「大事だ、奥の手はきちんと残ってる」

 

 

 皮肉を言うオルコットにそういうは良いもの、言葉と裏腹に余裕なんてない。

 

(ミサイルビットがあることを考えれば、ヒットアンドアウェイになる・・・な)

 

 試合時間のカウンターとオルコットの残りシールドエネルギーを照らし合わせる。

 

(間に合うのは、五分五分ってところか)

 

 間に合うかどうかが分からなくても、手段が1つだけでもあるなら試すだけ。ない訳じゃない。

 ブルーティアーズの射撃を危なげなく横に回避し一直線上に捉え、そのスキを逃さない。

 スラスターへエネルギーをいつもより多く割り振る。

 一瞬のチャージを経て、加速。瞬く間にトップスピードに到達。

 

「っ!?瞬時加速!?」

 

 驚き一瞬硬直するオルコットの懐へ割り込み、[白雪]を振るい離脱するはずだった。

 いたずら好きのカミサマとやらは俺を見捨てなかったらしい、違う神様なら見捨てないで欲しかった。

 

「・・・・・・畜生、それも計算の内か」

 

「もちろん、演技ができてこそ淑女ですのよ?」

 

 俺の一太刀は防がれていた。オルコットの手の中にいつの間にかあった近接ナイフで。

 そしてそれは全て見抜かれていた事を意味していた。

 

「ミサイルを警戒していたのは先ほどの行動で見抜けましたし、織斑先生がコーチをしているのは知っていました。織斑先生がコーチをするのだから、これくらいのことはあるかと予想はつけましたわ」

 

 さすが、候補生だと感心できた。勝つために姉さんにコーチを頼んだのが、ここに来て裏目に出てきやがった。あくまでアリーナ使用条件にあったのは、俺が許可した人物のみの立ち入りを許可したとしかない。誰がコーチをしているかぐらい、すぐにわかる。

 裏をかかれた。

 

「これで終わりですわ」

 

 4機のブルーティアーズ、2機のミサイルビットが俺に狙いを定め、

 放たれた。

                                                                                          

 

 

                                             「オルコットめ、裏をかいたな・・・」

 

 思わず千冬が苦虫を噛み潰したような表情になる。原因は先ほどの言葉だ。代表候補生に恥じぬ推測を披露してきた。

 千冬自身も、コーチしたことによりそこまで推測されるとまでは、頭が回らなかった。      モニターには、ブルーティアーズの全火力が打ち込まれアリーナの地面に倒れこむ一夏の姿が映っていた。

 残りのシールドエネルギーはわずか”3”雀の涙どころの話では無い。その涙よりも少ない。

 たった3のシールドエネルギーなど、速度にもよるが壁に激突すればなくなるほどはかない。セシリアのメイン兵装[スターライトmkⅢ]どころか、数で押すブルーティアーズの射撃で0になる。

 対してセシリアのシールドエネルギーはかなり減少しているものの、150を切るか切らないかというほど残っている。誰の目から見ても一夏が不利にしか見えない。                たとえ一夏がまだ戦えたとして、150もののシールドエネルギーを削るのは不可能に近い。ひと振りで削り切れるものではないのだ。

 それに加えて瞬時加速すら使えない。

 瞬時加速は一瞬でトップスピードに乗れる代償として、それなりにエネルギーを使う。それは”3”しかないエネルギーで使えるものではない。

 

「織斑君詰んじゃいましたね・・・・・・。いいところまで追い込めたのに」

 

「ふむ・・・だがアイツの事だ。まだ終わっていないとでも言うんじゃないか?」            

                                          「え?」

 

 真耶は千冬の言葉が信じることができない。一発の被弾も許さず、単純計算で自身より50倍のエネルギーを持つ敵を落とすなど、不可能としか思えないからだ。

 ゲームだったらならハメ技と言うような戦法を取れるが、これは紛れもない現実だ。ハメ技のような安全に倒す方法など、途方もないほどの戦力差がない限り無理でしかない。           その絶望的な状況を覆すほどの何かを一夏は隠し持っているというのか。

 

「一夏は言っていただろう?負けるのは大っ嫌いだ、と」

 

「は、はい」

 

 確かに試合開始前にそんな事を言っていたはずだ。

 

「あんな事を言うからには何かしらあるはずだ、それに一夏は強い」

 

「え・・・え?」

 

「負ければ負けるほど強くなって行く、一夏はそうゆう奴だ。どんなに負けても絶対に這い上がってくる、どんなにボロボロになろうとな。一夏は昔あまりにも敗北し続けた、今のアレが強いのはその敗北全てを糧に這い上がってきたからだ。それにこうゆう土壇場でラッキーカードを引くような、面白い所がある。見てみろ」

 

「?・・・・・・・・・あ」

 

 千冬が指差した先にあった一つのディスプレイ。

 

――――――一次移行完了

 

 

 

 

 強い、オルコットはやっぱり強かった。

 口だけじゃなくて実力もあった。

 負ける。

 たった三文字の言葉がとてつもなく重く感じる。

 嫌だ。負けたくなんてない。

 絶対に負けたくない。

 だけどオルコットとは実力の差がありすぎる。

 もう、弱い俺になんて戻りたくない。

 でも、エネルギーがほとんどない。

 手を貸してくれよ白騎士。

 俺は負けたくないんだ。

 ホンの少しでいい、手を貸してくれ。

 負けるのが、怖いんだ。

 だから、頼む。

 絶対に負けないから。

 

――――頑張って、君なら行けるよ。

 

 頑張るから。

 だから、手を貸してほしい。

 全力を見せつけてやろう。

 誰もが驚く位の全力を 

 

――――君なら、使いこなせるはずだよ。この力は。

 

 あぁ、絶対に使いこなしてやるさ。

 だから行こう白騎士。

 

 

 

 

 

「あら、少し残っていましたか」

 

 セシリアはデータリンクで映された、一夏のエネルギー残量を見てつぶやく。だがこんなわずかなエネルギーなどたやすく削り取れる。

 

(あなたは強かったですわ、でも勝ちはいただきますわよ)

 

 一週間でここまで来るとは思っていなかった分、成長の速さには目を見開くものがあった。

 だが代表候補生には一歩足りなかったと、セシリア自身思っている。たやすく撃破されれば、一夏には悪いが候補生の名が泣く。

 スコープ越しに一夏の姿を捉える。動かない標的を貫くことなど造作もない。

 

「まだ・・・終わっていない・・・!」

 

「っ!?」

 

 唐突として聞こえた一夏の声。この後に及んでまだ諦めないというのか。

 一夏は立ち上がり[白雪]の切っ先をセシリアに向ける。その姿は戦意が少しとして失せていなく、それどころか始まった時よりも増えている。

 思わずセシリアは一夏を倒すことも忘れ、叫ぶ。

 

「何を言っているんですかアナタは!?そんなボロボロで、残りわずかのエネルギーで何ができるというのです!?そこまで頑張ったのですからもう休んでください!」

 

 一夏の姿は誰の目から見ても疲弊しているのがわかる。嫌っている事も忘れて心配する、

 が、一夏の返答は予想もつかないものだった。

 

「言っただろ?俺は負けるのが嫌いだって。まだ終わりじゃないだろ、決着がついていない。ぜってぇ負けない。それに試合はコレからだろうが」

 

 そう言うが同時に白騎士が光り輝く。

 光が晴れるとそこにはボロボロだった装甲が元通りになり、灰色のかかった白から名前の通り、全くの混ざりけを感じさせない白い騎士の姿があった。

 それはかつて2000発以上のミサイルが飛来し、大混乱した日本を救ったISを彷彿させた。

 

「白式[雪羅]・・・?」

 

 

 アリーナにいた生徒がふとつぶやく。

 それは世界初のISでありながら、未だ現在のIS技術では超えることができないとされているIS。

 ISの登場を飾り、10年たったいまでも最強の座を揺るがない、篠ノ之束が作ったにふさわしい究極のIS。

 それが白式[雪羅]だ。

 誰もが一夏を注目し、行動を起こすのを待っていた。                    

 

                                             「俺は、お前に勝つ」

 

 その言葉がアリーナに響くと、それまで静かだったアリーナが歓声に包まれる。まるで第一回モンドグロッソ決勝戦を彷彿させる。                               

                                            (わたくしは、一次移行も終わってない相手に追い込まれていたというわけですか・・・)

 

 普段のセシリアなら喚くかもしれないだろう、だが相手(織斑一夏)は一次移行すら終わっていない機体でここまで追い込んでくるほど強い。

 そう認識できたからこそ、セシリアは素人(織斑一夏)に言う。

 

「かかって来なさい!その翼もぎ取ってあげますわ!!」

 

 一夏はその言葉に笑い返す。

 

「そうこないとな!」

 

 それと同時に、一夏の唯一の兵装である[白雪]が光り輝き、物理刀としての意味を失う。

 そして代わりに現れたエネルギーの刃。

 誰にでも見覚えがあるものだった。それはかつて世界最強の座に上り詰めた、織斑千冬が使っていた

 ”単一仕様能力・零落白夜(れいらくびゃくや)”

 だがそれに驚く者はいない。違う所に驚くべきことがあった。

 ”一夏のシールドエネルギーが減っていない”のだ。

 零落白夜は絶対なる攻撃力を持つ代わりとして、莫大なエネルギーを喰らう。

 それを使っていた本人からすれば、展開すらできないというほどのわずかなエネルギー量にもかかわらず、だ。                                                                                    「行くぞ?」

 

 それを言うと同時に加速。その加速速度は紛れもない、エネルギーを使い発動する瞬時加速。

 

「舞いなさいブルーティアーズ!」

 

 対するセシリアは自身の特殊兵装を展開一夏に向けた。どんなに早くても、かすることさえできればいいのだから。

 だが一夏は止まらない。全方位からレーザーが放たれるのにもかかわらす、全て”視えている”かのように軽々と避ける。                                  

 

                                             (止まらないっ!?)

 

 あっという間にビットの追撃を抜けられる。苦し紛れに放ったミサイルまで軽々と避けられた。  

                                            「くっ!」

 

 手の中の[スターライトmkⅢ]で打ち抜くことも考えたが、ビットを全てよけられた。今更当たるとは思えない。

 攻撃という手段を全て捨て、真後ろに回避。直後にエネルギー刀となった[白雪]が振り抜かれる。

 

                                            (とったっ!)

 

 声に出すような馬鹿ではない。心の中で叫び、ブルーティアーズに命令する。

 撃ち抜けと。

 この状態ならよけられない、はずだった。

 

「馬鹿め。お見通しだ」

 

「っ!?」

 

 

 背後にせまっていたブルーティアーズが打ち抜かんとレーザーを射出するが、すでに遅かった。

 一夏はその攻撃をガードせずに、白騎士の機動力を活かし車線上から身を引く。

 

「ぐぅっ!」

 

 

 放たれたレーザーは命令通り撃ち抜く。だがすでに標的はいない。放たれたレーザーは代わりに自身の主であるセシリアを撃ち抜く。

 それにひるんだのが、命運を分けた。

 

「俺の勝ちだ」

 

 [白雪]が振り抜かれ、絶対防御が発動。セシリアのシールドエネルギーが一瞬で底をついた。

 

 

―――――勝者、織斑一夏!!                                                                                                                          

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