異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake   作:白華虚

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10話 少年の無双、個性把握テストにて

雄英高校……そのグラウンドに集まった者達は皆、唖然としていた。それは勿論、相澤も含めてである。因みに、彼の強さを全部理解している爆豪は、苦笑いしていた。

 

彼らの視線の先にいるのは……。

 

「……ふう……」

 

吐息を漏らす、超サイヤ人2の姿となった出久だ。

 

何がどうしてこうなったのか。それを説明するには、数分前に遡る必要がある。

 

 

『個性把握テストォォォ!?』

 

相澤の指示通りグラウンドに出てきた生徒達は、衝撃を受けた。なんと、これから自分達は入学式をほっぽり出して"個性"を使用しての体力テストを行おうというのだ。

 

入学式やガイダンスを楽しみにしていた生徒達から様々な声が上がるものの……。

 

「ヒーローになるんなら、そんな悠長な行事に出る暇はないよ」

 

と、相澤によってそれは一蹴されてしまった。

 

因みに、好奇心もあってか……出久が見聞色の覇気による感情感知能力で相澤の感情を察した所、「面倒くさい」という感情が感じられた。それを察した彼は心の中で、ですよねー……と呟いたとか。

 

先程説明した通り、個性把握テストとは"個性"を使用して行う体力テストである。行う種目は中学からやってきた"個性"使用禁止の体力テストと同じで、50m走、握力、立ち幅跳び、反復横跳び、ソフトボール投げ、長座体前屈、上体起こし、持久走の8種目だ。

 

己の"個性"の限界と、出来ること・出来ないことを知る……それがこのテストの目的である。

 

早速、ソフトボール投げでデモンストレーションを行おうと、相澤は出久を指名した。

 

「入試首席の緑谷、中学の時のソフトボール投げ、何mだった?」

 

「えっと……65mです」

 

「んじゃ、"個性"使って投げてみろ。そこの円から出なきゃ何してもいい。早よ」

 

「分かりました。……周りに被害が出ない程度の全力ってことで宜しいですか?」

 

ボールを受け取りながら歩み出る出久に尋ねられると、相澤は表情に出さないながらも、内心では彼に感心しながら頷いていた。

 

「了解です」

 

出久は、肩を回して軽く準備運動すると……砂埃と風圧を巻き上げながら超サイヤ人2に変身した。

 

「あっ、入試の時に変身したやつや!」

 

入試の時に彼が変身するところを一番近くで見ていた麗日は、真っ先に反応した。

 

他の生徒達も、何が起こるんだろうかとワクワクしているらしい。

 

そんな中、爆豪はというと……。

 

(ワクワクしていられんのも今の内だぞ)

 

と、内心で吐露しながら、彼の強さを実際に見た時の生徒達の反応を期待していた。

 

「どうするかな……。……よし」

 

様々な経験の内から最適解を見出した出久はまず、適度に調節した温度の炎によってボールの形を遠くまで飛ばすのに適した弾丸のようなそれに変形させた。

 

そして、それを上空に投げると……。

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド」

 

スタープラチナを出現させると共に、その時間停止能力を発動させる。

 

「……さてと、やりますか」

 

そして丁度いい位置に降りてきたボール目掛け……

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……オラァッ!」

 

最適な角度で飛ばせるように、スタープラチナの腕を己の腕に重ねて発現させ、正確な方向から何千発もの打撃を1秒と経たずに打ち込んで、運動エネルギーを蓄積させる。

 

「それと……ほいっと」

 

その次は、己の腕を炎に変質させて爆発を巻き起こすことで、爆風を加えながら投擲を行い、爆風のエネルギーをも蓄積させた。

 

そのボールを再び最適な角度になる位置に調整して配置した所で......物体を押し出す性質に特化した気弾をボールに添えて仕上げを行う。

 

__これで準備完了__

 

「そして時は動き出す」

 

__そして、出久が時間停止能力を解除した瞬間……凄まじい衝撃音と風圧に炎が巻き起こると同時に、ボールは勢いを落とすことなく空の彼方に消えていったのであった。

 

 

__そして、話は冒頭に戻る__という訳である。

 

「……己の"個性"の限界を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」

 

微かに溜息を吐きながら、相澤は記録用の端末を生徒達に見せる。

 

……そこには、∞の文字が書かれていた。

 

『無限!?』

 

「無限とか、流石すぎんだろ緑谷!」

 

「やってくれると思ったぜ!俺達に出来ないことを平然とやってのける、そこに痺れる憧れるゥ!」

 

「緑谷君エゲツな〜い!」

 

「強すぎる……自信無くすわ……」

 

「……そうこなくちゃな」

 

そんな生徒達の称賛を受ける緑谷をジト目で見ながら、相澤が言った。

 

「緑谷……。お前はこれから先、"個性"は加減して扱うようにな……。全力でやってたら、いつか必ず死人が出る……。今回の個性把握テストは、辺りに被害が出ないようにしながら全力でやってくれ……」

 

『手加減の指示が出た!?』

 

「分かりました。それと……手加減する為の訓練は既にやってますから、安心してください」

 

「そうか……。それならいい……」

 

少々お疲れな様子の相澤。そんな彼を見て、出久は……彼に今度胃薬をプレゼントすることを決めたのであった。

 

しかし、

 

「"個性"思い切り使えるなんて、流石ヒーロー科!」

 

「面白そう!」

 

彼の態度は、とある生徒の言ったお気楽な一言で一変した。

 

「……面白そう……ねえ。これからの3年間、そんな心づもりで生活する気なのかい?よし、分かった。それならこのテストで最下位だったものは……見込み無しとして除籍処分にしよう」

 

『さ、最下位除籍!?』

 

冷たい威圧感を放ちながら下された宣告に、生徒達は驚愕した。__やはり、未来を視ていた出久は驚いてはいないらしいが__

 

驚くのが当然である。折角死ぬ程努力を積んで念願の合格をしたというのに、入学初日に除籍されるなど話にならないし、格好がつかない。

 

「最下位除籍って……!初日ですよ!?いや、初日じゃなくても理不尽すぎます!」

 

相澤の宣告に麗日が抗議の声を上げたが……出久が彼女の肩に手を置きながら言った。

 

狼狽(うろた)えちゃだめだ、麗日さん。ヒーローである以上、常にもしものことを考えて行動するのは大切だよ。それに、場に応じて臨機応変に対応するのもね」

 

「!」

 

「本気でヒーローになろうって思うなら……自分に出来ることを全力でやるんだ。自分に出来ることがあるのか、ないのか……。それで全部決まるよ」

 

一切迷いのないその姿勢に、相澤は大変満足していた。既に彼の中で、出久を除籍する選択肢は失われた瞬間である。

 

「ま、そういうことだ。理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー……。お前達が憧れたのもそういうヒーローだったはずだ。放課後友達同士で談笑したかったのならお生憎……。我々雄英は、これから3年間君らに全力で苦難を与え続ける。更に向こうへ、Plus Ultra(プルスウルトラ)さ。全力で乗り越えて来い」

 

共にかけられる相澤の発破。それによって、萎縮していた生徒達も皆、やる気に満ち溢れる表情を見せたのであった。

 

 

第1種目は、50m走。出久は周りを観察しながらも、適度にこっそりと皆から個性因子を奪うことで、分析を行なっていた。

 

(皆、面白い"個性"持ってるなあ……)

 

「次、爆豪と緑谷」

 

「っし」

 

「はい」

 

そして、とうとう出久の出番が来た。軽く準備運動しながら、爆豪と言葉を交わし合う。

 

「頑張ろうね、かっちゃん。それはそうと、出力ってどこまでいったんだっけ?」

 

「40%。こちとら絶好調だァ。ま、やれるだけお前に食い下がってやんよ」

 

「うん、そうこなくちゃ。それでこそかっちゃんだ」

 

(さて)

 

クラウチングスタートをしながら、出久は反復動作によって集中力を極限に高めた。彼の場合は、救けを求める人__彼が一番初めにヒーローらしく救けた人が耳郎である為、対象が彼女に固定されてしまうのだが__を救けると決めた瞬間の気持ちを思い出すことでそれを為す。

 

(後はこれだな)

 

そして出久は……スタートの合図と共に全集中の呼吸によって、一瞬で脚部を強化することに加えて超サイヤ人2に変身し、地面をひと蹴りした。更に、隣にいる幼馴染以上に圧縮させた爆破で高速移動を行う。

 

爆豪もまた、橙色の火花を纏い、一点集中の圧縮爆破をその掌から行うことによって、同時にスタートを切る。

 

次の瞬間には、落雷が降り注いだ時のような衝撃音を響かせながら、出久はゴールに辿り着いていた。

 

その結果は、0.24秒。

 

そして、少し遅れて爆豪も到着し、結果は2秒45であった。

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

生徒達は皆驚愕の声を上げた。

 

「いやいやいやいや、待て待て待て待て!お前ら2人ともエグすぎだって!」

 

金髪に黒いメッシュが特徴のチャラそうな少年、上鳴電気が声を上げる。

 

「はァ?俺なんざまだまだだろうが」

 

爆豪がそう言って抗議の声を上げたが……

 

「ふざけんなよぉぉぉ!イケメンな上に強いとかハイスペックかよぉ!?お前ぇ!"エンジン"の"個性"持った飯田より1秒近く速えじゃねえか!」

 

「な、なんだてめえ急に!?つか、出久!後でまた圧縮爆破見せろ!」

 

「オッケーオッケー、また後で!」

 

上鳴が血眼で掴みかかってくる為、口を閉さざるを得なかった。

 

そんな2人を他所に、出久に歩み寄る者がいる。

 

「相変わらずで安心したよ、緑谷」

 

「!心操君」

 

「悪い、朝から囲まれてたもんだから、声かけるタイミング逃してた」

 

この紫色をした、バック気味に立てた髪が特徴の少年は、心操人使。

 

彼の"個性"は"洗脳"で、洗脳する意志を持って行なった問いかけに対象が反応したならば洗脳出来るという名前通りのものだ。周りの者達から『(ヴィラン)向きだ』と言われ、自身もまたそう認めている"個性"である。

 

そうでもありながら、彼はとある動画をきっかけにヒーローに憧れてしまった。しかし、どうすれば自分が強くなれるのかに悩んでいて……その最中に出久と彼は出会いを果たした。

 

自身の"個性"がコンプレックスであった彼に、出久は言った。

 

「君の"個性"は素晴らしい"個性"だよ。敵を戦わずして制圧出来る優しい"個性"だ」

 

と。その励ましによって、心操は自信を持てるようになり、ヒーローへの執念を更に強くして、出久に教えを乞うたという訳である。

 

血反吐を吐くような訓練の末に、彼は出久も扱っている全集中の呼吸と、反復動作を会得している。

 

「心操君もいい調子みたいだね。良かった良かった」

 

「お前や爆豪に比べたら霞んじまうけどな」

 

「……霞の呼吸だけに?」

 

「ふはっ、なんだその冗談。言っちゃなんだが、面白いには程遠いぞ」

 

「でも、緊張は解れたでしょ?過度な緊張は良くないし」

 

「……!そうだな。ありがとよ」

 

笑い合う2人であったが……。

 

「お前ら、くっちゃべってないで早く次に行け。どうしても話したきゃ放課後にしろ。時間が勿体無い」

 

鋭く冷たい瞳で睨みをきかせた相澤の一言により、他の生徒達と共に慌てて次の競技に移るのであった。

 

続く第2種目、握力では。

 

「……」

 

波紋の呼吸と全集中の呼吸で身体能力を強化した上で、己の腕にスタープラチナの腕を重ねて発現させてから握力計を握り……。

 

『あっ』

 

見事に破壊した。

 

「お前……エグいな……。分かった、測定不能だ。左側も同じと考えるぞ。二つも握力計を破壊するのは合理的じゃない……」

 

「すいません……」

 

……サイヤ人の握力に、本気でやれば人間を一殴りで木っ端微塵に出来るメルエムの力もあるのだ。握力計が壊れるのは当然である。

 

"個性"によって万力を創ることで驚異的な記録を叩き出した八百万と、"複製腕"の"個性"で腕を複製することで540kgw(キロ)の記録を叩き出した障子目蔵は、唖然としながら出久を見ていた。

 

第3種目、立ち幅跳び。

 

「……いつまでいける?」

 

「体力が続く限りいつまでも」

 

「無限」

 

『ふぁっ!?』

 

舞空術で空を飛ぶのに加え、メルエムがユピーを吸収したことによって会得している、形態変化(仮称)で翼を生やすことで無限を叩き出す。

 

第4種目、反復横跳び。

 

「み、見えねえ!?何が起こってんだ!?」

 

「めっちゃ残像出てる!」

 

全集中の呼吸によって、脚部を一点集中で強化した上に、反復動作、後はトランクスとメルエムから受け継いだ身体能力によって、測定不能を叩き出した。

 

第5種目、ソフトボール投げ。

 

出久はデモンストレーションの時と変わりなく、無限を叩き出す。

 

因みに、"無重力"の"個性"を扱える麗日も無限を叩き出し、爆豪は……。

 

「爆・ぜ・ろぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

その圧倒的センスによって、"ワン・フォー・オール"の身体能力強化と"爆破"によって巻き起こす爆風を駆使した上、ボールに回転を加えながら投擲し……無限を除けば、ずば抜けた記録である、5645.9mを叩き出した。

 

心操は全集中の呼吸による身体能力強化と、反復動作、更に正しい体の動かし方とを駆使することによって525.1mを叩き出していた。

 

テストの前に軽く自己紹介を行なっていた為、クラスの男子達は彼の"個性"を知っていたのだが、それを鑑みても凄まじい記録を叩き出した彼は彼らに囲まれて、持て囃されていた。その中心にある彼は何処か嬉しそうで、出久もまた嬉しくなった。

 

第6種目、上体起こし。

 

"個性"が"硬化"で、硬さに自信のある切島に支えてもらいながら、地面につく瞬間に背中を、体を起こす瞬間に腹筋を全集中の呼吸で強化しながら行うことによって、1530回を叩き出した。

 

久々に数値化された記録であることに生徒達は声を上げ、その記録もまた常人に出せるものではない為にザワザワと騒いでいた。

 

出久を支えた切島曰く、

 

「俺とか障子じゃなかったら、多分吹っ飛んでるな。凄えぜ、緑谷!」

 

だそうだ。

 

第7種目、長座体前屈。

 

"蛙"の"個性"を持つ少女、蛙吹梅雨が舌を伸ばして記録を伸ばしていたのを見て、彼は相澤に尋ねた。

 

「先生、あれもありなんですか?」

 

「ん?ああ……蛙吹のあれか。ありだ。このテストは、結局のところ"個性"を使って何が出来るのかを見るテストだからな。自分の"個性"使ってりゃ、なんでもいい」

 

「……成る程」

 

そこからインスピレーションを得た結果……出久は、射程距離のギリギリまでスタープラチナに移動式のテーブルを運ばせた上、押し出す気弾を形質変化させて作り出した気の刃で更にそれを押し出したのであった。

 

「……緑谷。その剣みたいな奴、いつまで出せる?」

 

「体力が持つ限りいつまでもです」

 

「……無限」

 

『また無限!?』

 

結果は、やはり無限であった。その後、芦戸と、透明少女である葉隠透にお願いされて普通にやったところ……68cmを叩き出した。男子にしては非常に柔らかい為、彼女達に大変持て囃されたとか。

 

女子に囲まれる出久を、上鳴とぶどう頭が特徴の峰田実は嫉妬に満ちた目で睨みつけ、耳郎は何処か羨ましそうにしていた。

 

最終種目、持久走。

 

50m走の時と同じやり方を繰り返したことで、驚異の7.2秒というエゲツない記録を叩き出した。

 

「速すぎんだよ、畜生!」

 

「す、凄いな緑谷君……!」

 

続く2番手と3番手に到着した爆豪は大層悔しがり、飯田は感心していたが……前者は1分13秒、後者は1分31秒という記録を叩き出しているので、

 

((((いや、2人も十分に速すぎるだろ!))))

 

と生徒達は心の中で叫んだという。

 

こうして、個性把握テストは出久の無双で終わりを告げたのであった。

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