異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
12話 出久VSかっちゃん(前編)
雄英はヒーロー養成校、その最高峰とは言えど仮にも国立高校。故に一般の座学も力を入れて行われる。進学校の最高峰の難易度と速度の授業が行われると考えてもよい。
「じゃあ次の英文のうち間違ってるのは?」
只今の授業は英語である。担当教師はプレゼントマイク。皆が普通だ、と思いながら唖然とする中、爆豪はクソつまんねえ、と思いながらも問題は真面目に解いており、出久はというと既に答えを出している上、プロヒーローに授業をしてもらえるとは光栄だ、と思っていた。
「「はい!」」
「いい挙手!んじゃ、一番早かった緑谷レッツゴー!」
「関係詞の場所が違うので、4番です」
「ザッツライト!クレバーボーイの緑谷に拍手を送ってやってくれ!」
『おー!』
「ちょっ、こんな時までおだてなくてもいいんじゃないかな!?」
(頭まで良いとか、流石緑谷……。イカすじゃん)
(……そんなに見つめられたら流石に照れるよ、耳郎さん)
普通の授業だろうと、出久の驚異的な学習能力や頭脳が発揮されており、やはりクラスの中での彼の人気は途絶えることはないらしい。
(早よくっつけ)
愛おしそうに出久を見つめる耳郎に気がついた爆豪は、そう思ったのだそうな。
また、昼には……クックヒーロー"ランチラッシュ"の作る一流料理が安価で頂けてしまう。
「……緑谷、めっちゃ食べるね」
「こんな沢山積み重なった食器見たことないわ……。食欲も凄いんや、緑谷君」
「"個性"発動した後からはこうらしいぞ」
「……流石にこれは知らなかった」
「しかし、これだけの量を美味しく食べるのはいいことだと俺は思うぞ!」
「そやねえ、飯田君!」
出久と共に昼食を食べている耳郎、爆豪、麗日、飯田、心操はそう言葉を交わし合った。
彼らの視線の先にあるのは、いくつも積み重なった皿。その数、既に15枚を超えていた。因みにだが、どれも出久が平らげた物である。
サイヤ人であるトランクスに、人間ながら大食漢であるエースの体質も受け継いでいる以上、こうなるのは当然である。
__トランクスの性格もあるのか、腹八分目にする分別はあるらしいが__
そして午後の授業は……生徒達お待ちかねのヒーロー基礎学だ。
「わーたーしーがー!」
(おっ)
「普通にドアから来たー!」
担当教師は、平和の象徴であるオールマイトその人。彼の登場に、教室は騒ついていた。
出久もまた尊敬の眼差しを向けるのみならず、ユーモア溢れる彼の振る舞いに感心してもいた。
「さあ、ヒーロー基礎学の時間だぞ!ヒーローとしての素地を形成する為に様々な訓練を行う!それがこの科目だ!因みに、単位数も最も多いから頑張っていこう!早速だが……」
自分の肉体を見せつけるようにポーズを取りながらオールマイトが提示したのは、BATLLEの文字が書かれたカードであった。
「今日はこれ、戦闘訓練だ!」
「戦闘っ……!」
「訓練……!」
トランクスの持つサイヤ人の本能が、メルエムの持つキメラアントとしての本能が出久の中で疼く。
彼もまた、爆豪程ではなくとも不敵な笑みを浮かべていた。
「そしてそれに伴って……こちら!入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた
なんとハイテクなことか。オールマイトがスイッチを押すことで生徒達それぞれの出席番号が描かれたケースの収まる、ロッカーが現れた。
ようやくヒーローらしいことが出来る故か、生徒達は皆ワクワクしていた。
「着替えたら順次、グラウンドβに集合だ!」
★
「おお……流石サポート会社。完璧だ」
出久が身を包んでいるのは、タイムパトローラーとして活動していた時のトランクスも着用していた黒いロングコートだ。これは、出久の要望に従って彼の扱う死ぬ気の炎である、"大空の炎"を纏っており、強大な防御力を誇る。その背中には、彼の扱っていた剣を再現したものがある。勿論のことだが、この剣は人間を斬るのには使わない。遠距離攻撃を捌く為に使う物だ。__まあ、気の刃を纏わせた状態で使えば手加減可能なので、問題はない__
その下には、深緑のノースリーブアンダースーツに、灰色の長ズボンを着ており、中指と小指には、指輪状に変化しているボンゴレギア、"大空のリング Ver.X"が装着されている。
因みにこれは、己の技術を駆使して再現したサポートアイテムであり、波紋を良く通す材質に変化している。
また、
「おォ、洒落てんな」
「!かっちゃん」
コスチュームを着用し終えて、集合場所にやってきた出久に声をかけてきたのは爆豪だ。
彼のコスチュームは、黒い長ズボンとオールマイトへのリスペクトか、彼に似たような橙色のラインが入ったタンクトップだ。長ズボンには膝の部分に金具が付いている。他にも、目元も覆える爆発のエフェクトのような飾りが後頭部にはある。また、腰のポーチには自分の汗を溜め込める小型手榴弾も用意されていた。
何よりの特徴は、二の腕全てを覆う緑色のガントレット。これは汗を溜め込んで最大火力の爆破をノーリスクで放てる上に、衝撃吸収の役割も兼ねるハイテク装備だ。
「……うん、かっちゃんらしくてかっこいいね!小さい頃から言ってた全身ダイナマイトって感じか」
「そういうことだ。お前も似合ってんぞ」
「ありがとう」
「早いな、爆豪も緑谷も」
「心操君……!おおっ、シンプルなのもいいね。黒一色ってのが、またかっこいいや」
「ありがとな。緑谷も洒落てるが……単なる飾りって訳でもなさそうだな、全部」
「勿論。色々考えて、最適解を導き出した結果だよ」
次に声をかけて来た心操のコスチュームは、黒い長袖のシャツに長ズボン。黒一色に統一されたクールなものだ。加えて変声可変機構マスク__彼はこれを、ペルソナコードと呼んでいる__を装着していた。
そうして話している間にも、他の生徒達がぞろぞろと集まってくる。
「み、緑谷。ウチのコスチューム……どうかな?似合ってる?」
やはり、乙女としては好きな人からの評価が気になるものなのだろう。耳郎が緊張した様子で尋ねてきた。
黒いジャケット。赤いシャツに、黒い長ズボン。それに加えてヘッドホン。そして、頬に施した三角形のメイク。まさしくロッキンガールという印象だった。
「イメージはロッキンガールって感じかな?耳郎さんらしくてイカしてる。ロックだよ!」
「!ほんと!?ありがと!」
嬉しい評価を得られたようで、耳郎は満面の笑みを浮かべながら背中を向けて、小さくガッツポーズしていた。
(うん……サバサバしてるようだけど、本当は乙女。このギャップが可愛いんだよな)
出久にとって、まだ彼女は特別に尽くしてくれる友達でしかない。しかし、入学初日の放課後に彼女の想いを知ってから、彼女を意識しているのは確かなことだ。それは、本人も自覚している。
「それはそうと耳郎さん、お揃いだね。ヘッドホン」
「!本当だ!み、緑谷のもかっこいいよ……!」
「!ありがとう」
コスチュームを褒められたと知れば、出久は嬉しそうに微笑む。それを見た耳郎は耳まで真っ赤に染まった顔を両手で覆い隠していて。
((早よくっつけ))
側でそんな彼女を見守っていた爆豪と心操はそう思っていた。
(あっ、確認しないといけないことがあったんだ)
耳郎と話していた出久だったが、ふとそんなことを思いつく。そして、それを尋ねるべき人物の元へと歩みを進めた。
「葉隠さん」
向かった先は、葉隠の元である。彼女は"個性"の影響で透明人間なのだが……普段のことを考えれば、彼女の着る衣服は目に見えている。彼女が今、コスチュームとして装着する手袋とブーツもそうである。もし、彼の懸念が正しければ、彼女の名誉の為にも戦闘中は封じておかなければならない力を出久は持っている為、彼女に確認を取らなければならなかった。
「緑谷君?どうしたの?っていうかコスチューム凄いかっこいいね!」
「ありがとう、葉隠さん。えっと、確認したいことがあってさ。……ごめんね、耳貸して」
「ふぇ?うん」
出久が耳を貸すように促すと、彼女はすぐに耳を貸してくれた。
「……念の為確認しておくけどさ。葉隠さんが着てる服って、僕達でも視認出来るんだよね?」
「うん、そうだよ!流石に服まで透明にするってのは無理なの!」
「あー……オッケー。教えてくれてありがとう。ごめんね、変なこと聞いて」
「うん。でも……急にこんなこと聞いてどうしたの?」
葉隠が、(恐らく)首を傾げながら尋ねてくる。
(それ聞いちゃうのか)
出久はそう思いながら、微かに顔を赤くして彼女の耳に囁いた。
「その……僕が持ってる念能力って奴のことも全部話したでしょ?」
「うんうん」
「えっと……それでさ、"円"って技術の話を覚えてるかな?」
「"円"?確か……緑谷君の体から出るオーラっていうのに触れた対象の位置や形状を肌で…………はっ!?」
出久が何を言わんとしていたのかが分かったのか、葉隠もみるみる内に顔を赤くしていった。
「本当ごめん……こんなこと聞いて……。変態くさいよね……」
恥ずかしそうに口元を片手で覆う出久を見て、葉隠は恐縮しまくって何度も頭を下げていた。
「そ、そんなっ!ごめんね、私の方こそ気を遣わせちゃって!ど、どうすればいいかな!?緑谷君の出来ること制限するようなことしたくないし……」
「今の技術なら、SFでよくある光学迷彩の技術も開発出来るだろうし……それを組み込んだコスチュームを要請したらどうかな……?」
「それだぁっ!ありがとう、緑谷君!帰ったら、早速申請しとく!」
「う、うんっ」
出久がいい案を出してくれたことに感謝して、葉隠は彼の手を握りながらぴょんぴょんと跳ねた。
(困ったなあ、変に意識してしまう)
顔が赤いままの出久はそう考えて、最後にもう一言アドバイスしてから元いた場所に戻ることにした。
「あの……葉隠さん」
「なあに?」
「女の子なんだから……自分の体大切にしなきゃダメだよ……?」
「ふぇっ……。は、はい……本当ごめんね、何度も気を遣わせて……」
「うん……」
互いに顔を赤くしたまま良さげな雰囲気の二人を見て、峰田と上鳴は血涙を流して切島達にドン引きされ、耳郎は葉隠を羨ましく思いつつも、嫉妬したという。
「あのー……こんなアオハルされちゃったら、おじさん出て行きにくいな!」
「「!?すみません、オールマイト!」」
因みに、オールマイトはと言うと、数分前から影でこの様子を乙女のようにこっそりと
★
「うぉっほん、さあ気を取り直して!今日の戦闘訓練の説明をしていくぞ!」
仕切り直しでオールマイトが授業の説明を始めた。
まず、白いフルアーマーのコスチュームに身を包んだ飯田が、真っ先に尋ねた。
「先生!ここは入試の時の演習会場のようですが、何を行うのでしょうか!?」
「ふっふっふ……今回は入試の時のようなロボの破壊程、単純にはいかないぜ!今回行うのは、屋内での対人戦闘訓練だ!」
『おお……』
感嘆の声を上げる生徒もいる中、不安な者もいる。その代表である蛙吹が首を傾げながら尋ねた。
「基礎訓練も無しに行うのかしら?」
「その基礎を知るのが今回の訓練だ!このヒーロー飽和社会において、真に賢しい
オールマイトに、カンペを見ながら説明された状況や概要を簡単に整理すると……。
・核を保有した
・
・ヒーロー側のクリア条件は、
・
・捕獲証明用のテープを巻き付けることで、相手を確保したことになる。
・ヒーロー側には核の場所は知らされない。
・チーム分けはくじで決める。
先述の通りである。
くじ引きでチームを決めることに対し、飯田が「適当なのですか!?」と質問したが、出久が「プロは他の事務所と急遽チームアップすることがあるし、そういうことだよ」と発言すれば、すぐに納得してくれた。
そしてくじを引いた結果……。
「緑谷と一緒……!」
「宜しく、耳郎さん」
「うんっ!」
(わっ、凄い嬉しそう)
出久はAチームで、耳郎と2人組になった。
「よし、チーム分けは決まったな!それじゃあ早速最初の対戦カードを決めていくぞ!さあ、最初の対戦チームは……こちら!」
そして、オールマイトがヒーローと
「ヒーローチームがAコンビ、
(Dコンビ……よしきた)
自分の対戦相手を知った出久は、大層楽しそうに不敵な笑みを浮かべた。
何せ対戦相手は……。
「おっしゃ、来たァ!そう来なくちゃな!」
「緑谷君のいるチームが相手か……!気を抜けない!」
飯田と、幼馴染である爆豪のいるチームなのだから。
__絶対負けない(負けねェ)__
闘志に満ち満ちた目で爆豪と出久はアイコンタクトを取る。飯田も耳郎も、二人の視線の間にバチバチと火花が散る光景を幻視していた。
★
「見取り図結構複雑だね……」
「そうだね。一見すると難しいけれど……」
「あっ、緑谷は記憶力もいいから問題ないか」
「そういうこと」
「やばい、ウチも足引っ張らないようにしっかり覚えないと……!」
耳郎と出久は、言葉を交わしながら建物の見取り図を記憶している。
今は、準備時間。ヒーロー側は作戦会議、
(取り敢えず、二階窓から侵入は確定かな。一階は、耳郎さんの聴覚潰しの為にかっちゃんが色々と仕掛けてくる)
出久は見聞色の覇気による未来予知を併用しながら、頭を回して作戦を練っていた。
(耳郎さんには索敵に集中してもらうのと、飯田君の相手を頼むか)
「耳郎さん。ある程度目星はついてるけど、改めて君の''個性''を聞かせてほしいな」
「ん、分かったよ。ウチの''個性''は''イヤホンジャック''。このプラグになった耳朶を挿して、ウチの心音を爆音の衝撃波にして放てるんだ。えっと……どっちも6mは伸びる。あと、壁に挿したりすれば索敵に使える。ついでに言うと、普段から聴力もいいよ」
「成る程……。飯田君相手に音速ってのは……中々いい妨害になりそうだね。ブーツのスピーカーからも、爆音を放てるってことでいいのかな?」
「うん、合ってる。ウチは索敵に集中するってことでいい?」
「宜しく頼むよ。それと、飯田君の相手をお願いするね。かっちゃんは
「!ありがと、緑谷。ウチも飯田を上手く相手取れるように頑張る」
「それは頼もしいな」
「侵入する時はどうするか決めてる?」
「決めてるよ。二階の窓からにする。一階は、耳郎さんの聴覚潰す為に色々仕掛けてるだろうから」
ツラツラと作戦を述べていく出久。その姿もまた、耳郎はかっこいいと思った。そして、いつかこんな頼もしいヒーローになりたいとも思っていた。
「幼馴染ってだけあって、色々分かってんだね」
「そりゃあもう飽きるくらい。とあるヒーローからかっちゃんの教育者認定もされてるし……伊達に見てきてないよ。元々、僕は昔からかっちゃんを尊敬してるから」
「……緑谷に尊敬されるって、凄い奴なんだね」
「うん、かっちゃんは凄いんだよ。才能も、努力も、タフネスも、最近じゃ自分に対する厳しさも。僕だってまだまだ彼から学ばなきゃ」
「そっか……。尊敬する相手なら、余計勝たなきゃね。頑張ろ、緑谷」
出久の話を聞いて、耳郎は微笑む。
「うん……絶対に勝つさ!」
彼女の微笑みを見て、出久もまた微笑み返したのであった。
『さあ、5分が経過したぞ!両チーム準備はいいな!?それじゃあ、Aコンビ対Dコンビの屋内対人戦闘訓練……スタート!』
そして告げられる、訓練開始の合図。
「さて、行きますか」
それを聞いた出久は、再び不敵に笑って気合を入れ直した。