異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake   作:白華虚

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13話 出久VSかっちゃん(後編)

__侵入成功__

 

遂に戦闘訓練が開始され、出久は耳郎を横抱きで抱えると、すぐに建物内に侵入した。

 

「……どうかな、耳郎さん」

 

「少なくとも、三階に核はないと思うよ。足音一切聞こえない」

 

「了解」

 

ぶっちゃけてしまえば、気を感知できる出久は……核兵器の場所とそれを守っているであろう飯田に、こちらに向かってくる爆豪。どの位置も目星がついている。

 

しかし、一人で自己完結して耳郎の活躍の場を奪うのはヒーローとして以っての他である。それを理解しているからこそ、出久は彼女の長所を生かした立ち回りを行っているのだ。

 

(!かっちゃんの気が二階まで移動してきた……!来る!)

 

「耳郎さん!プラグを壁から離して!」

 

「!う、うんっ!」

 

見聞色の覇気による未来予知によって、爆豪の行動が判る故に迫真で伝える出久。彼の様子から、耳郎はただならぬ事態を察して即座に耳朶を壁から離した。

 

……その刹那。

 

「っ!?」

 

耳郎が先程までプラグを挿していた壁から、耳を(つんざ)くような爆音が聞こえた。

 

「ば、爆音……!?」

 

耳を押さえながら唖然とする耳郎に、出久は言う。

 

「かっちゃんがやった爆破だよ。擬似的な音響兵器を爆破で再現して、音を貫通させたんだ」

 

「つ、つまり……ウチの聴力を潰す為?」

 

「ご名答。あのままだったら、耳郎さんは一発でノックアウトされてたよ」

 

「っ……ヤバいね、爆豪……」

 

そう呟いて立ち上がりながら、耳郎は爆豪のセンスの高さに脱帽していた。

 

(兵器を爆破で再現するとか、センスが高すぎる……!)

 

更に。今度は爆音が建物中を反響して、あちこちから聞こえてくる。

 

「こ、今度はあちこちから爆音!?」

 

「はは、流石かっちゃん。本当……昔と比べたら変わったな。傲りもしないし、妥協もしないで徹底的に耳郎さんを潰しに来てる」

 

「っ!?」

 

出久の発言に一瞬、肩をビクッとさせた耳郎だったが……出久はすぐに彼女を安心させるよう声をかけた。

 

「大丈夫、耳郎さん。俺がいる。君のことは俺が守りきるから……俺を信じて」

 

「!うんっ……!」

 

__さて、見聞色と透き通る世界、超直感を併用するか__

 

爆豪を迎え撃つ為の力の選択肢を絞った出久は、その額に大空の炎を宿し、ハイパー死ぬ気モードを発動すると共に、透き通る世界に介入した。

 

そして、見聞色の覇気によって爆豪の意志や気配を読み取ろうとして……気がついた。

 

「……マジか、かっちゃん」

 

(自力で無心になって、意志を消してる……!)

 

爆豪が自分の意志を消去していることに。

 

「なら、直感しかないか」

 

そして、出久は腹を括る。

 

__まあ__

 

「俺の直感が外れたことは……一度もないけどねっ!」

 

「っが!?」

 

次の瞬間、彼は自分の背後にいた爆豪に裏拳を叩き込んだ。

 

「えっ!?」

 

出久のすぐ側に立っていたはずの耳郎は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()驚いた。

 

(い、いつの間に緑谷の背後に!?)

 

いや、"まるで"ではない。実際その通りであった。彼女の反応を見ながら、出久が言った。

 

「驚いたな、かっちゃん。いつの間にか気配を消せる上に、意識的に無心になれるようになってたなんて」

 

「ハッ、お前に鍛えられてりゃ自然とそうなるわ。こちとらお前との鍛練で死なねェように日々必死だかんな」

 

「!?」

 

平然と交わされるそんな会話に、耳郎は密かに出久と自分達とのレベルの違いを思い知った。

 

「こう言うのもなんだけど、耳郎さんと組んでるのが俺じゃなかったら、彼女はノックアウトされてるね」

 

「だろうな。俺も全力で耳郎を潰しにいったからよ、断言出来るわ。喋る時間も勿体ねェ。さっさと始めんぞ!」

 

爆豪が両掌から爆破を起こし、橙色の火花を迸らせながら出久に肉迫する。

 

「耳郎さん、走れ!」

 

「うん!緑谷、気をつけて!核見つけたら、すぐ連絡する!」

 

「了解、そっちは……任せた!」

 

爆破による遠心力を利用した右回し蹴りを身を逸らして避け、その勢いを利用したままバク転で爆豪の顎を蹴り上げながら出久は耳郎を見送った。

 

「クッソ、逃がしたか……。だが……お前にゃ食い下がってやっかんな。勝てなくとも負けなけりゃ結局は強え……お前が教えてくれたことだ。時間いっぱい粘ってやらァ!」

 

「やれるもんならやってみなよ、かっちゃん。君の教育者である以上、負ける訳にはいかないんだ」

 

幼馴染VS幼馴染。男の因縁とも言うべき戦闘が、今ここで幕を開けた。

 

 

「いやいや……緑谷がやべえのは知ってたけどさ、やっぱ爆豪も大概だろ……」

 

上鳴が、モニターを通して繰り広げられる戦闘を見ながら唖然と呟いた。

 

「ええ……。恐らく、緑谷さんも爆豪さんも凄まじい予測を行っているのですわ……。緑谷さんは未来予知にも等しいそれを、爆豪さんはそこには及ばないまでも私達では到底為せないそれを……」

 

推薦入学者である以上、戦術眼にも長ける八百万がそう分析する。

 

事実、爆豪は出久に必死で喰らい付いていた。出久が先読みを併用しながら叩き込む拳や蹴りを、"爆破"と"ワン・フォー・オール"の二つの"個性"を併用してのアクロバティックな回避によって避けまくっている。

 

「ケロ……。それを鑑みたとしても、緑谷ちゃんの方が遥かに優勢ね」

 

「蛙吹の言う通りだな……。爆豪は超軼絶塵(ちょういつぜつじん)だが……緑谷は絶類抜群。先読みの精度に天と地程の差がある」

 

蛙吹と常闇の分析もまた正しい。爆豪は時折出久の蹴りや拳、それらをフェイントにして放たれる気弾や爆豪の"個性"を利用して放つ、死ぬ気の炎混じりの爆破を諸に受けていた。

 

「緑谷、どれだけ強えんだ……!最初、爆豪が背後にいるってのも俺達には全く分かんなかったってのに!」

 

「本当だよ!」

 

続けて切島と芦戸が興奮気味に言い、ほぼ全員が頷いていた。

 

(……相変わらず凄い奴だよ、緑谷)

 

出久の戦う姿を見ながら、心操はというと感心しており、

 

「っ……」

 

轟は何故か悔しそうに歯を食いしばっており、

 

「緑谷少年……君はとんでもないな……!」

 

オールマイトは舌を巻いて、彼のこれからに期待を抱いていた。

 

「!見て見て、耳郎ちゃんも核を見つけたみたいだよ!」

 

「うおぉ、(ヴィラン)側がピンチだな!?こっからどうなるんだ!?」

 

生徒達はこのチームの訓練をその目に刻みつけようと、食い入るように戦況を見守っていたのであった。

 

 

「っくそ……!」

 

爆豪は苦戦していた。

 

「余所見しない」

 

「ッ!?」

 

気を緩めれば、鳩尾に当たれば一撃でノックアウトされる程の威力を持つ幼馴染の攻撃に当たってしまう。

 

そして、必死になって避けた先には……

 

「!」

 

それを先読みしたように別の攻撃が迫っている。

 

己もなんとか予測が出来るからこそ、そして他の誰よりもタフネスがあるからこそ喰らいつけている訳だが、防戦一方には変わりない。

 

「はあっ!」

 

「ぐああっ!」

 

爆豪は、出久の繰り出す、己のそれ以上の威力を持った爆破を喰らって吹き飛ばされる。

 

そして、ここで攻撃は終わらない。吹き飛んだ己の元に今度は気弾が迫ってくるではないか。

 

「っ!」

 

体を横に回転させてギリギリそれを避けるも、

 

「スタープラチナ!」

 

『オラァッ!』

 

「ごはぁっ!?」

 

今、爆豪のいる位置が半径2m以内であるが故、スタープラチナの拳による追撃を受けざるを得ない。

 

__はは、やっぱ強ェ__

 

床を転がりながら、爆豪は笑っていた。彼の強さを知った当初はほんの少し複雑な気持ちを持ったこともあったものだが、そんなものはどこかへ吹き飛んだ。

 

今や、自分は彼のことを誇りに思っている。爆豪は自分自身でそう断言出来るようになっていた。

 

「!耳郎さん。見つけた?……うん、分かった。すぐそっちに向かうから、時間稼いどいて」

 

(もう見つけられたか……早ェな畜生)

 

爆豪は、立ち上がって未だ闘志で満ち満ちた瞳で出久を見据えた。

 

「絶対ェ先には通さねェ……!」

 

__ワン・フォー・オール、フルカウル……40%ッ!__

 

先程よりも勢いを増して迸る橙色の火花と、身体中に巡る血流を表すような赤いライン。

 

腰を落として構えを取りながら、爆豪は笑う。

 

「いくぞコラァァァァァ!!!!!」

 

地面を蹴ると共に、圧縮して爆破を放つ。己が出せる最大限のスピード。以って爆豪は出久へと肉迫する。

 

出久が放った気弾を次々と死に物狂いで避け、ようやくその懐に入った。

 

「うん……やっぱり、君はかっこいいなあ……」

 

それを見た出久は、微笑みながら感慨深そうに呟き……。

 

「だあっ!」

 

「ゴフッ!?」

 

衝撃波を伴う掌底打ちを、爆豪の鳩尾に叩き込んだ。

 

__ああ、やっぱダメなのか__

 

そう内心で吐露して薄れゆく意識の中、彼は聞いた。

 

「本当に……凄い成長っぷりだよ、かっちゃん。これからも頑張ろう。君なら、もっと強くなれる」

 

(……その一言だけで救われるわ……。ありがとよ……)

 

出久の言葉を聞き、薄っすらと涙を流した爆豪は……そのまま意識を暗転させた。

 

「……」

 

そうして穏やかな寝顔になった彼に捕獲証明用のテープを巻きつけて抱えたまま、出久は耳郎の元へと向かっていく。

 

出久は、耳郎のいる部屋にドアを派手に蹴破りながら駆けつけた。

 

「緑谷!」

 

「うぉぉっ!?み、緑谷く……ん"ん"っ!ヒーロー!?我が相棒は!?爆豪はどうしたというのだ!?」

 

__真面目だなあ、飯田君__

 

飯田の発言から、彼が(ヴィラン)になりきっていることが分かったので、空気を読んで緑谷もそれに乗ることにした。

 

「君のお仲間は俺がノックアウトさせてもらった」

 

「っな!?爆豪ー!くそぉっ、俺の最強の相棒が負けてしまうとは!仇を取ってやる!」

 

飯田は、勇猛果敢にエンジンを起動し、青い炎を吹き出させながら自慢のスピードを持って上段蹴りを繰り出してきた。

 

対する出久は、それを同じく上段蹴りで受け止め……

 

「んなっ!?グハァ!?」

 

武装色の覇気、その応用によって本来は内部から破壊する一撃となる威力を加減し、内部に浸透してダメージを与える一撃として掌底と共に叩き込んだ。

 

「っぐうっ、なんという強さだ……!しかし、この程度で俺達の野望は止められん!」

 

不屈の闘志で立ち上がる飯田であったが、次の瞬間……。

 

『ヒーローチーム、WIIIIN(ウィィィン)!』

 

ヒーローチームの勝利を宣言する、オールマイトのアナウンスが部屋中に響いた。

 

「!?」

 

飯田が驚いて核の方を見てみると……

 

「……なんか、ごめんね。熱くなってるところに」

 

「いや、ナイス判断だよ!耳郎さん」

 

「あああああああっ!?核ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

核に触れて回収を終えていた耳郎の姿があった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」と嘆きの声を上げる飯田にドンマイ、という視線を向けながらも、出久と耳郎はハイタッチを交わしていた。

 

 

その後、気絶した爆豪は保健室に運ばれ、彼を除いた状態でモニタールームの方にて講評が行われた。

 

「今回のMVPはやっぱり緑谷少年だよね〜!何故だと思う〜?分かる人っ!」

 

「はいっ、オールマイト先生」

 

「では、八百万少女!」

 

オールマイトの質問に真っ先に挙手した八百万が、自分の分析を話していく。

 

「やはり、緑谷さんが一番活躍されたからではないでしょうか。一階には、耳郎さんの聴力潰しの為に爆音を放出する地雷やら何やらが配置されていた訳ですが、まず、緑谷さんはそれを見抜かれておりました。また、壁を貫通して放たれた爆音もそうですわね。次に、耳郎さんに核の捜索と(ヴィラン)の説得をお任せし、彼女にも活躍の場を与えていたのは素晴らしいことです。それと、何より圧倒的な戦闘力と判断力ですわね。爆豪さんを圧倒し、飯田さんを瞬時に押さえ込む戦闘力と、耳郎さんから核発見の報告を受けて即座に合流を決めた判断力。一番素晴らしかった点はこちらでしょう」

 

オールマイトも、彼女の分析を頷きながら聞き、生徒達は彼女に尊敬の眼差しを向けていた。

 

「かと言って、今回は皆様のうちの誰かに、これと言って悪い点があった……という訳でもなかったと思います。爆豪さんは、耳郎さんの"個性"を的確に分析してその対策を為されておりましたし、ご自分が気絶するまで緑谷さんを引き付けておられました。一般論としては、ある程度実力を把握して"勝てない"と分かれば撤退するのが一番なのでしょうが……人々を救けるヒーローには、敵わない相手であろうと挑む姿勢も必要なことですから、一概に悪いと断定するのは以っての他です」

 

「次に飯田さん。常に核に注意を払って、守ることに集中しておられました。緑谷さんの攻撃で意識を逸らされてしまったのは残念でしたが……人間あれ程強い相手がいれば、そちらに意識を集中せざるを得なくなるのは仕方のないことですわ。……緑谷さん、今の言葉が気に障るものであったら申し訳ございません」

 

「へっ?いいよいいよ、気にしてないから」

 

(((((やっ、優しい!)))))

 

「!ありがとうございます!では、気を取り直して、最後に耳郎さん。自分にやれること、やるべきことをしっかりと把握して徹底しておられたのは素晴らしかったです。そちらもまたヒーローに必要な要素ですから。……私の分析は以上ですわ!」

 

八百万の分析が終わると、オールマイトは体をプルプルと震わせながら「全部言われてしまった……!」と言いたげな顔をしていた。

 

__オールマイト、ドンマイです__

 

そんな彼を励ますような瞳を向けながら、出久はというと、八百万の分析力に感心していた。

 

こうして、戦闘訓練の幼馴染対決は出久が勝利を収めたのであった。




取り敢えず、今日はここまでにしておきますね!

次回の投稿をお楽しみに!この辺は特に変更はないです。
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