異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake   作:白華虚

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14話 まさかのエキシビションマッチ

その後、特に何事もなくトントンと戦闘訓練は進んでいき、無事に全チームの訓練が終了したのだが……。

 

「えー、本当に申し訳ないんだけどね……緑谷少年」

 

「?どうしましたか、オールマイト」

 

「君には、もう一戦戦闘訓練をやってもらうぞ!いわゆるエキシビションマッチって奴だ」

 

オールマイト曰く、相澤とも話し合った結果らしい。教師側も、既にそこいらのプロヒーローがちっぽけに見えてしまう程の強さと志を持つ出久を見て、様々な分析を行いたいのであろう。

 

勿論、出久本人にとってもこれは悪い話ではない為……彼は快くそれを引き受けた。

 

「おおっ、ありがとう緑谷少年!それじゃあ……緑谷少年を相手に、戦闘訓練がしてみたい人!」

 

オールマイトが尋ねると、意外や意外。出久の強さを目の当たりにしようが、全員が挙手していた。自分の訓練の後、気絶から復活した爆豪もまた挙手している。少しでも出久から何かを学び取ろうとして、皆が必死な様子が(うかが)えた。

 

そんな様子に感心するように頷きながら、オールマイトが言う。

 

「うんうん、やっぱり皆戦ってみたいよね〜。こういうこともあろうかと、くじを用意してきたぞ!この箱の中から一人一つずつボールを取り出してくれ!星がついたボールが当たりで、3球入っているからな!」

 

即ち、この19人の中から選ばれた3人だけが出久と戦える。それが分かった生徒達は、緊張しながらボールを取り出した。

 

その結果……。

 

「よし、当たりか」

 

「......」

 

「!やりましたわ!」

 

心操、轟、八百万の三人が当たりを引いた。

 

(推薦入学者の八百万さんと轟君は勿論……心操君も着実に実力上げてるしな。面白くなりそうだ)

 

選び抜かれたメンツ一人一人の顔を見ながら、出久は闘志を燃やす。

 

「うん、相手は決まったようだね!さて、エキシビションマッチのルールも、先程の戦闘訓練とあまり変わりないぞ!一つ変更点があるとすれば、今回は核兵器を使用しない!」

 

「つまりは……ヒーロー側の場合は、(ヴィラン)チーム全員の確保。(ヴィラン)チームの場合は、ヒーローチーム全員の確保か、時間切れのどちらかが勝利条件になるということですね」

 

「YES!理解が早いね、緑谷少年!因みにチーム分けだが、緑谷少年が(ヴィラン)チーム、轟少年達がヒーローチームだ!5分後に開始するから、早速準備をしてくれ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

「さて……どうするか」

 

待機場所であるビルの5階にて、出久は頭を回していた。

 

「僕の"個性"で得た力って、小細工に特化したものがないんだよね。メルエムさんの力で個性因子を少し奪えば話は別なんだけれど。後、機械があれば、波紋で機能をトチ狂わせるとかいう芸当も出来るか。で、今出来ることといえば……この波紋伝導率が高い糸で結界を作ることか、予め気弾の包囲網を設置するかってところか。やっといて損はないよな。3人を試す意味でも」

 

そして、出久は早速それらの配置を行った。5階中に糸を張り巡らせ、誰かがそれに触れると波紋が流れるように細工し……予め気弾をいくつも設置して包囲網を形成しておく。

 

後は、部屋で堂々と待つのみだ。

 

「取り敢えずは、3人の気が気弾を設置した位置に来た時点でボン……だね。気弾の形質変化がもう少し出来るようになれば、花京院さんのやってた法皇(ハイエロファント)の結界が再現出来ると思うんだけど……まあそこは練習あるのみだな」

 

そう呟く内に、5分が経過して戦闘訓練が開始された。

 

「始まった!……3人共、せめてすぐには詰まないでおくれよ」

 

 

戦闘訓練が開始され、轟達は心操を先頭にして建物に侵入した。

 

「緑谷の得た力、小細工に特化した奴はないからな。大量にあれこれ設置してるってことはないと思う。せめて一つ二つくらいだ。本人が、他人から個性因子を拝借してんならまた別になるが……『まだ分析不足だから使えないな』ってテストの時もぼやいてたし、心配はないってのが俺の考え」

 

実際、心操の予想通りであり……。出久は糸の結界と気弾の包囲網しか仕掛けていない。

 

小細工に関する手が少ないというのはその通りなのだが、裏を返せば出久が小細工を必要とせずに戦える強者だということだ。そんな光景は、逆に3人の緊張感を高めていく。

 

そして3人は5階に辿り着いた。

 

その瞬間。

 

「「「!?」」」

 

3人に向けて、全方向から次々と気弾が迫ってきた。

 

「ッチッ!小細工少ないとは言ったが、仕掛けた奴はそう簡単に突破出来ねえ感じの奴か!」

 

咄嗟に轟が心操と入れ替わるように前に出て、氷の壁を形成。気弾をなんとか防ぎ切った。

 

「危ねえな……当たってたら、俺達意識失ってたぞ……」

 

「ええ……。これは一時も気を……ひゃっ!?」

 

「八百万!?どうした!?」

 

今度は、八百万に電撃のようなものが流れる。

 

「い、糸でしょうか……?それに引っかかったと思ったら、電流のようなものが流れてきましたわ……。恐らくは、電流のような生易しいものではないと思います。一度喰らっただけなのに、ほんの少し目眩がしますわ……!何度も喰らっていれば、確実に気を失います」

 

八百万の言葉に、心操も轟も目を凝らして5階を見回す。すると……そうしなければ見逃してしまう程の細さの糸が張り巡らされていることが分かった。

 

「成る程な……。波紋を流した糸の結界か。本当、厄介な小細工しやがる……!」

 

出久の得た力のことを3人の中で最も知る心操は、そうこなくてはと言わんばかりに笑っていた。

 

「……5階中を一気に凍らせてお前らを巻き込む訳にもいかねえ。適宜(てきぎ)、範囲を絞って凍らせながら……緑谷の居場所を探るしかねえな」

 

途方もない集中力を使うことになるであろうことを覚悟した3人は、腹を括って出久の捜索に乗り出す。

 

そして、4分後。波紋を流した糸の結界を無効化しながら、なんとか出久のいる部屋に辿り着いた。

 

3人共無事に辿り着いたことに感心しながら、出久は腰を上げる。

 

「おめでとう、3人共無事に辿り着いたんだね。そうこなくちゃ面白くない。さてと……それじゃ、さっさと始めようか。すぐに詰まないでくれよ……?

 

そう言いながら構えを取る出久。ハイパー死ぬ気モードと超サイヤ人を同時発動した彼から、凄まじいプレッシャーが放たれる。

 

「「「ッ!」」」

 

そして、体を強張らせる3人。その隙を出久が見逃すことはなく、彼は八百万に容赦なく殴りかかる。

 

「っ、八百万!」

 

出久の速さを見慣れていない轟は、当然反応が遅れる。今この場でその速さを慣れており、多少なりとも対応出来るのは……。

 

「っぐうっ!」

 

咄嗟に八百万の前に出てその拳を防いだこの男、心操のみだ。

 

「流石は心操君」

 

そう言いながらも、出久は一切手を緩めることなく、思い切り拳を振り抜いて心操を吹っ飛ばす。吹っ飛んだ心操もまた、受け身を取りながら地面に着地した。

 

「すみません、心操さん!」

 

「ありがとな」

 

「気にするな。緑谷の速さを見慣れてない以上、反応出来ないのは仕方ない」

 

轟と八百万に感謝を述べられながら、心操は出久のことを洗脳する意志を持って再び口を開く。本人も、簡単に通用するとは思っていない。だが、何事もやってみなければ分からないではないか。

 

「それにしても……女子を真っ先に狙うなんて、卑怯だな。将来ヒーローになる奴がそんなんでいいのか?」

 

出久が確実に反応するであろう言葉を選び抜いて、口に出した最適解。

 

(良ければ答えてほしいんだが……)

 

しかし。心操の懸念した通り、出久は答えない。心操との間合いを詰めて飛び蹴りを放ってきた。

 

「かはっ……!やっぱ、バレてるか……!」

 

肺の中の空気を吐き出させられて心操は膝をつき、ここでようやく出久が口を開く。

 

「そりゃ、1年A組の誰よりも心操君の"個性"は知り尽くしてるから。今、俺は(ヴィラン)なんだ。卑怯も何もないだろう?それに、女の子相手だからって変に手加減するのは侮辱でしかない。君も知る通り、俺はやるべき加減以外しない主義だ」

 

「……はは、そうだったな。二人共、まだやれるよな?」

 

「勿論ですわ!」

 

「当たり前だ……!」

 

未だ闘志の消えない3人の目を見て、出久は大層楽しそうに微笑んでいた。

 

 

「おいおい……緑谷ハンパねえって……!」

 

「今に始まったことじゃねェわ」

 

唖然とする生徒達を代表して口を開いた切島と、それでこそ出久だ、と言わんばかりに笑いながら言う爆豪。

 

モニターの先では、凄絶な戦闘が繰り広げられている。

 

八百万が、"創造"で作り出した鉄パイプを用いて繰り出す格闘術。出久はそれを悉く(かわ)して彼女の持つ鉄パイプを、黒く染まった腕で繰り出した手刀でへし折った。

 

無防備になった彼女に掌底打ちを繰り出そうとしたところ、二人の間に轟の繰り出した氷塊が割り込み、八百万に叩き込まれるはずだった掌底打ちがそれを粉々にする。

 

八百万が後退した代わりに、心操が前に出て殴り込んでいく。洗練された正拳突きに、拳による幾重もの連撃。それを出久は全く同じ攻撃で対抗して相殺するどころか押し切っていた。

 

心操も出久に鍛えられている故、他の生徒と比べれば実力があるのだが……彼もまた出久に敵いはしない。その事実は生徒達を奮い上がらせた。

 

「ケロ……凄いわね、緑谷ちゃん……。このクラスで比較的強いはずの心操ちゃんと推薦入学者の二人を圧倒してるわ……!」

 

「緑谷ハンパない〜!強すぎるよ〜!」

 

生徒達は口々に言いながらも、出久から何かを学び取ろうとする意志を捨てることなく、食い入るように戦いを見守っている。

 

「くうっ、強いな緑谷少年……!やっぱり私なんか足元にも及ばないぞ……」

 

『え?』

 

オールマイトが戦いを見守りながらこぼしたその一言に、生徒達は耳を疑ったという。

 

 

「やあっ!」

 

八百万が、創造した機関銃から次々とゴム弾を放つ。

 

人間では到底対処出来ない速度で迫るそれらだが、

 

「ッ!?機関銃で撃ってんだぞ……!?なんて奴だ……!」

 

出久はそれらを一つ残らず掴み取った。

 

驚いて八百万が動きを止める。その隙に、出久は部屋の壁を蹴って移動しながら彼女の背後に回り込み……。

 

「ッ!?しまっ……!」

 

首筋に一撃、手刀を叩き込んで彼女の意識を刈り取ると共に、彼女にテープを巻きつけた。

 

『八百万少女、確保!』

 

一人チームメンバーを失った。相手が相手である故、一人の戦力差があまりにも大きすぎる。

 

それが心操を焦らせた。焦って全集中の呼吸が乱れ……見事に懐に潜り込まれてしまう。

 

「ッ!?」

 

「粘ったけど、最後の最後で焦ったね。今度は精神面も鍛えなきゃな」

 

「かっ……!?」

 

呟きと共に出久は、心操の鳩尾に右フックを叩き込む。心操もまた意識を刈り取られ、テープを巻きつけられてしまった。

 

『心操少年、確保!』

 

「さて、轟君。後は君一人だね」

 

「くっ……!」

 

残るは轟ただ一人。テープでの確保を狙おうにも隙がない。その上、純粋な強さで敵わない。

 

(どうする?どうしたら勝てる?)

 

頭を必死に回す轟に、出久が問う。

 

「轟君。確認するけどさ、君の"個性"って"半冷半燃"だろ?凍らせられて、燃やせる"個性"。見てる限り……君は氷を発生させる時に右腕を振り払う、振り上げるみたいにして右腕を動かす、もしくは右足で踏み込んでるね。察するに、左側でも同じことが出来ると思うんだ」

 

そして、ハイパー死ぬ気モードを併用していることで、ただでさえ据わっているその目に鋭い眼光を宿す。

 

「……なんで左側を使わないんだ?君は、俺をナメているのかい?俺は君が全力を出すに値しない相手ってことか?」

 

「っ……違え!ただ俺は……クソ親父の"個性"を使わないって決めてんだ!俺は右側の、氷の力だけで上を目指す!」

 

出久の問いに、轟の瞳が微かに揺らぐ。同時に、出久は見聞色の覇気による感情感知能力によって彼から微かな憎悪を感じ取った。

 

(……君にも何か事情があるんだろうな。でも、そんなこと……知ったことか。力を出し惜しみする理由にはならない)

 

何があったのかは分からない。それでも優しさを持つ出久は、彼に同情する。しかし、そんなことは知ったこっちゃない。世間はわざわざ彼の過去に目を向けてくれる程生易しいものではない。

 

世間とは、不平等で理不尽なもの。出久は"個性"が発動するまでの15年間でそれを知っている。

 

例え、世間が彼の辛い過去を知ったところで……「ああ、そうか。辛かったね」と同情するだけで終わるだろう。彼のこだわりを容認してくれる人はいないはずだ。

 

「余計なこだわりは捨てなよ、轟君。君の手加減は、"すべき手加減"じゃないんだよ。世間は、君のこだわりや過去を全部汲み取ってくれる程優しくない。今、訓練相手として戦う俺にとって……君のそれは単なる侮辱でしかないんだ」

 

(うるせ)え……!俺は右の力だけで這い上がって、クソ親父を見返すんだ!俺はクソ親父の道具なんかじゃねえって証明する!彼奴の力がなくとも這い上がれるって証明する!」

 

出久の言葉は届かない。轟の心は凍りついていた。憎悪という名の氷が纏わりついていた。

 

__彼の今後の成長の為にも、自分の間違いには自分が気づくべきだ__

 

そう思うが故、出久はその氷を溶かす炎を直接()べやしない。要するに、自分で掴み取れと……そういうことだ。

 

「轟君、君の行動はヒーローをナメているのと同じだ」

 

(うるせ)え……(うるせ)えェェェ!何も知らねえくせに、偉そうに語るなァ!」

 

出久の言葉を受け、彼の中の憎悪が膨れ上がる。

 

憎しみと共に轟は右足を踏み込んで、巨大な

氷塊を発生させ、それを出久に向けて放った。

 

__それが君の選択なんだね、轟君__

 

「南斗水鳥拳奥義……千塵岩破斬(せんじんがんはざん)

 

出久の縦横に渡る手先の動きが強靭な刃と化し、氷塊を賽の目状に斬り刻む。

 

『オラァッ!』

 

「ッ!?ごはっ!?」

 

氷が斬り刻まれ、威勢の良い掛け声が聞こえると同時に、轟は腹部に衝撃を感じた。見れば、守護神のような姿をした何か……即ちスタープラチナが己の腹部を右フックで殴っていた。

 

出久は迫ってきた氷塊に対して、それを賽の目斬りにする斬撃を繰り出す瞬間、同時に氷塊を透過出来るようにしてスタープラチナを発現させたのである。

 

(何をされた……?見えなかった……!)

 

実力の差に呆然とする轟。出久は彼に迫り、鳩尾に拳を叩き込みながらその耳元で囁いた。

 

「残念だよ、轟君。それに気づかないままなら、君は強くはなれない」

 

「っ……!?」

 

意識が朦朧とする中で、轟はその言葉を聞くと……悔しそうに歯を食いしばりながら吹き飛び、壁に激突する。

 

そして、彼はズルリと崩れ落ちて項垂れた。

 

『と、轟少年、気絶で戦闘不能!最終戦エキシビションマッチは……(ヴィラン)チームWIIIIN(ウィィィィン)!』

 

「轟君。今の生き方を続けていたら……必ず悔いが残る日が来るよ。君はまだ知らないかもしれない。けれど、自分の大切な何かを失うことは、怖いことなんだ」

 

据わったままながら、哀しみに満ちた瞳で出久は語り……ヘッドホンを首に掛けながら一息吐いたのであった。

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