異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
マスコミ騒動の起きた日から、2日が経過した。2日後……即ち、出久の仮定した襲撃が行われるタイミングである。
午前中は普通に授業を終えて、昼食を済ませ……いよいよ午後のヒーロー基礎学の時間だ。
教室にやってきた相澤が言う。
「今日のヒーロー基礎学だが……急遽、俺とオールマイト、それと特別講師の3人で担当することになった」
どうやら、2日前に話し合った通りの形でいくらしい。
(……もしもの時は僕も……)
今後、予知が反応する可能性は十二分にある。微塵も油断は出来ない。
「はーい、何するんですか?」
「災害水難なんでもござれ。
「
「ねー」
「何言ってんだ、これこそヒーローの本分じゃねえか!鳴るぜ、腕が!」
「水難なら私の独壇場♪ケロケロッ」
これから行う訓練の概要を聞けば、生徒達はワクワクして心を躍らせる。
それとは反対に、出久は気を引き締めていた。
★
「こういうタイプだったか!くそぉ!」
「やる意味なかったなー。ドンマイドンマイ!」
芦戸に肩をポンポン叩かれ、慰められながら一人頭を抱えているのは……緊急時ヒーロー活動許可証を受け取った出久に代わってクラス委員長に就任した、飯田である。
何故彼がクラス委員長になっているのかと言うと……許可証を受け取った出久本人からの指名だ。緊急時にヒーローと同等の権限を持つ以上、出久にはいつでもクラスメート達の側にいられる保証がない。
それを鑑みた相澤から、「お前が適任だと思う奴に、信頼出来る奴にクラス委員長は譲れ」とアドバイスを受けた出久は、副委員長である八百万にも事情を説明した後、本人にクラス委員長の座を明け渡したのであった。
閑話休題。そんな飯田が何故頭を抱えているのか。それは、乗り込んだバスの席の配置にあった。飯田としては、バスの席が前向きシートであると予想したらしく、スムーズに乗れるようにと生徒達を名簿順に並ばせたのだが。現実は、三方シートと前向きシートの両方を兼ね備えた配置であった。
これでは、名簿順に生徒達を並べたところで意味がない。結局は自分の好きな席に座ることとなり、飯田の努力は水の泡となってしまった。
__委員長らしいフルスロットルだが、いきなり空回りしてしまった飯田には、出久達も苦笑しながら「ドンマイ」と声をかけてやるしかなかったとか__
好きな席に座った結果……出久は窓側の前向きシートに座り、その隣には耳郎が座った。
(……それはいいんだけどさ)
勿論嬉しいには嬉しいのだが……出久は必死に自分の理性と戦っている。
理性と戦う訳は耳郎にある。彼女は、バスに乗り込むや否や出久の隣の席を勝ち取ってガッツポーズするわ、今に至ってはこっそりと手を繋いで「緑谷の手、おっきい……」と嬉しそうに呟くわで可愛い一面を曝け出しているのだ。
(あまり煽らないでくれると嬉しいな、耳郎さん!)
その度に出久は心の中で叫びながら、変な気を起こさないものかと気が気じゃなかったし、理性がブチン、と切れないように祈るしかなかった。
__自分の精神内にいる仲間達は恋愛経験がある者がいるが、出久は決してそうではない。どちらかと言えば初心な類の彼には、耳郎の行動はたまったものじゃないのだ__
(あ〜、エース兄さんの
今でも時折精神世界に行くことはある訳だが……昨日はエースに散々
こうして理性と戦う今ですら、「ヒュー!隅に置けねえなあ」と口笛を吹きながら
しかし……それのおかげで変な気はだいぶ紛らわせることが出来る為、出久は密かに感謝した。
そんな中、蛙吹が隣に座る爆豪に尋ねた。
「爆豪ちゃん。私、思ったことをなんでも言っちゃうの」
「んァ?なんだ、梅雨ちゃん」
「貴方の"個性"、オールマイトに似てる。あっ、"爆破"じゃなくてもう一つの……」
「"フルカウル"か?」
「そう、そっちのことよ」
爆豪にとって核心を突く質問だが、彼は動じはしない。こういう時の為に捏造しての説明を用意しているので、そちらを説明することにした。
「まァ、身体能力跳ね上げる点じゃ似ちゃいるが……強化の倍率がそもそも違ェ。俺のは全力出しゃ、体ぶっ壊れるまで強化出来るしな。それでもオールマイトにゃ届かねェし」
「ケロッ、似て非なるアレってやつね。すっきりしたわ、ありがとう」
「おう」
これを機に、バス内が"個性"の話で賑わう。気を紛らわせられる話題が増えたことに、出久はホッとしながら耳を傾ける。
「にしても、爆豪の"個性"はどっちも派手で出来ることも多いよな!その点、俺の"硬化"は対人戦じゃ強いけど、いかんせん地味でよ〜。弱点も多いしな」
続いて腕をガチガチに硬めながら会話に参加したのは切島だ。
出久は、彼の言葉から何となく自分の"個性"に対するコンプレックスを感じている印象を受けた。実際、見聞色の覇気による感情感知能力を発動させてみても同じようなものを感じ取れる。
本人は地味だと言っているが、出久はそうは思わない。故に、彼は切島をフォローすることにした。
「地味だなんてそんなことないよ、切島君。君の"個性"なら、誰かを守れるし、"絶対に負けないヒーロー"になれる。どんな
続けて爆豪も発言する。
「倒れねェってことはクソ強えだろ。出久も言ってたことだが、勝てなくとも負けなけりゃ結局は強え。お前はそういうヒーローになれるだろ」
「"絶対に負けないヒーロー"……!?凄え……!かっけえな、それ!よっしゃ、なんか自信出てきたァ!ありがとな、緑谷、爆豪!」
二人の発言で明るくなった切島を見て、彼らは満足そうに微笑む。
二人を見た生徒達は、息ぴったりだなあ、と思ったのだとか。
「じゃあ質問!さっき切島が爆豪の"個性"を派手って言ってたけど、皆は誰の"個性"が派手だと思う!?あっ、爆豪のが派手なのは確定事項だからそれ以外!」
「確定事項なんかい」
芦戸が挙手しながら元気よく尋ねた質問を機に、再び話は転換して大層盛り上がった。
その話題の中で名前が上がったのは轟と出久である。
「派手な上に、緑谷ちゃんはヒーローらしくて、しかも有名だものね。人気が出ること間違いなしじゃないかしら?」
「マジそれな!動画のあれはシビれたぜ……!『最強だなんて、笑わせないでくれよ。オールマイトの足元にも及ばないあんたがそう自称するのは......少なく見積もっても100年早いんじゃないか?』ってさ!」
あの日、出久が対峙した
「「「ナメてんの(か)?」」」
「ウェ?」
「それで真似たつもりかよ。もうちょっと頑張れよ」
と、呆れた様子の心操。
「てめェがやったってかっこよくもなんともねェんだよ。調子乗んなよアホ面」
「アッ、アホ面!?」
と、軽蔑の視線を向けながら上鳴をあだ名で呼んだ爆豪。
「本人のそれを目の前で見たウチの前でよくそんなことが出来るね、上鳴。あんたがやってもかっこよくない。緑谷がやるからかっこいいの。勘違いすんな」
と、0度以下の冷気を放つが如く冷たい視線を向けた耳郎。
上鳴に向けられた三つの視線は、この三人のものであった。
「じ、耳郎!?なんか俺に当たり強くね!?つか、目の前って何!?」
「ウチがあとちょっとで死ぬってところを救けてもらったの」
『きゃあああ〜!』
耳郎があの現場に居て、更には救けられている。男子生徒達はその事実に驚き、女子生徒達は黄色い悲鳴を上げた。
「耳郎ちゃん!救けられた本人からして、緑谷君はどうだったん!?」
「へ?そ、そりゃ……かっこよかったよ……?」
『きゃあああああ〜!』
「ケロケロ、程々にしてあげるのよ」
「……保護者か」
「私には、ああいうのを見守る方が性に合ってるもの♪」
「ああ……成る程」
ここから更に話が盛り上がると思われたが、圧をかけた相澤によって、残念ながら話を中断させられてしまった。
静かになったバスの中で、生徒達は各々が
★
その後、バスは停車して目的の場所に着いた生徒達は下車した。
彼らの目の前に広がるのは、巨大なドーム状の施設。これぞ......嘘の災害や事故ルーム、通称USJである。
「皆さん、待っていましたよ!」
施設に足を踏み入れたA組一同を迎えたのは、スペースヒーロー"13号"。主に災害救助分野で活躍するヒーローだ。
生徒達が、特別講師である彼女の登場にワクワクしている最中……。
(やっと入ってきた。2分後か)
出久はというとピリついていた。ここに来て、ようやく予知が入ってきたのだ。しかも、そのタイミングは2分後。元々から分かっていたことだが、相澤達に伝えることは出来ても大した対策は出来そうにない。
(予想通りの2人が、手下達大量に引き連れてくるみたいだな。まあ……少し警戒すべき化け物がいる訳だけど)
先日侵入してきた手だらけの黒服男に、バーテンダー服の靄男。彼らは、その周りに群がる数々の
そして、鑑みるに脳が剥き出しの化け物は……オールマイトそっくりの体格をしている。それ以上のパワーを持っているであろうことが安易に予想出来た。
要するに、化け物には相澤達では到底敵わない。オールマイトが予知した光景に居ないことから、彼は諸事情で遅れて来るのだろうということも考えられた。
つまりは、自分が彼を倒さなければならない。
(……誰も死なせない)
一人、そっと拳を握りしめながら、決意を新たにした。
まずは、相澤に伝えなければならない。皆を混乱させない為にも、出久は気を応用してのテレパシーで伝えることにする。
(相澤先生。たった今予知が入りました。先日侵入した二人が、大量のチンピラレベルの
「!」
テレパシーを受けるとすぐさま相澤は出久の方を振り向き、「承った」と視線のみで伝えてくれた。
相澤が、そのことも含めて13号と少し会話を交わした。13号も、頷きながらそれを承ったようだが……生徒達を動揺させない為にも彼らは普通に振る舞う。
その会話の最中、13号が3本の指を立てていた。そんな彼女の行動と、呆れる相澤。更に、この場にいないオールマイト。
その三つから、出久は彼が通勤するまでに活動時間をほぼ使い果たしたことを悟ってしまった。
(あっちゃー……。オールマイトらしいというか、何というか……)
__出久もまた、相澤のように頭を抱えたという__
そして、彼女が施設の紹介を軽くした後に、この訓練での心構えと自分達の"個性"の在り方を話したところで……とうとうその時が訪れた。
「さて……お前ら。これから何があっても絶対動くなよ」
相澤が冗談抜きの真剣な瞳で、生徒達に声を発した。
『?』
生徒達は何がなんだか分からず、首を傾げながらも先生の言うことだし、取り敢えず従っておこうと決めた。
クラスメート達のそんな感情を感じ取ったところで、出久は皆の一歩前に歩み出て……
「来ます」
と、そう一言短く発した。
瞬間。空間に黒い歪みが生じて、その中から様々な姿をした集団が現れる。
体中に手を取り付けた男に、脳が剥き出しの異形の化け物。悪意に満ちた表情を見せる、人型や異形……様々な"個性"を持った人間達。
「13号にイレイザーヘッド……。おや?オールマイトがいらっしゃらないようですが……何か変更でもあったのでしょうか?」
黒い歪みが、バーテンダー服の靄男に変化して丁寧な口調で言った。
「なんだよ、折角こんな大人数連れて来たのに……肝心のオールマイトがいないなんて。まあいいや……。子供を殺せば来るかなぁ?」
首を軽く掻きながら、殺気に満ち溢れた発言をする黒服を着た手だらけ男。彼の邪悪な笑みと、発言は……生徒達に否が応でも凄絶な悪意を感じさせた。
彼らやプロヒーローが対峙するものは何か。
__それは、途方もない悪意__
大きく変更が入ってるので、今日はここまでです!
はい、オリジナルの敵が無かったことになりました!
さらば、オリジナル敵。心新たに、原作のキャラだけでやり繰り出来るよう奮闘させていただきます。
では、また次回!