異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
「せ、先生……あれって……?」
凄絶な悪意を感じ、震えながら誰かが言った。
「さっきも言った通り動くんじゃないぞ、お前ら……!あれは
切羽詰まった相澤の表情に、生徒達は広場の中央にいる集団が
「いやいや、待て待て……。ヒーローだらけの雄英に乗り込むとか、馬鹿だろ!?」
上鳴が声を上げるが……。
「いや」
彼の一言を否定したのは、轟だった。
「奴ら、馬鹿だがアホじゃねェ。ここは校舎と離れた隔離空間だ……。そこに
「……何らかの目的があって、
轟の一言を引き継ぎ、爆豪が言う。
それに加え、八百万もまたUSJにおける侵入者用センサーの有無を13号に尋ねていた。
__現実逃避は出来ない。彼奴らは本当の
そんな状況が、全員に非常事態を確信させた。
「チッ、やるしかねえか……!13号、避難開始だ!上鳴は学校に連絡を試せ!それと、緑谷。……もしもの時は頼んだ」
「分かりました」
ゴーグルをかけ、指示を出す相澤。周りから見る生徒達からしても、彼が戦うつもりであることは明らかであった。
「せ、先生!一人で戦うんですか!?」
麗日が真っ先に相澤を引き止めようと声を上げるが……。
「心配するな、麗日。
その声を一蹴した相澤はたった一人、下で待ち構える
「……行こう、麗日さん。相澤先生を信じるしかない」
「っ、うん……!」
相澤を心配してしばらく様子を見ていた麗日だったが、出久に避難を促されたのに加え、彼がとある
(きっと大丈夫!緑谷君の言う通り、相澤先生を信じよう!)
相澤を信じると結論付けて避難を開始した。
順調に戦いを続けていく相澤と、避難を開始した生徒達であったが、相澤の"個性"の効果が切れたタイミング__即ち、彼が瞬きをしたタイミングだ__を突いて、黒靄の男が生徒達の前に立ち塞がる。
「易々と逃がしはしませんよ。……初めまして、雄英高校1年A組の皆さん。我々は
『ッ!?』
わざわざヒーローの巣窟に侵入するなり、平和の象徴を殺したいと宣言する黒靄の男の姿は、生徒達をゾッとさせた。
(こいつらには、オールマイトを殺せる算段がある。気の大きさからして、それが出来るのは……脳が剥き出しの彼奴!)
相手側にオールマイトを殺せる算段があるのだと確信を得たことで、出久はそれが可能である人物を分析。彼らに対して警戒を強めるとともに、自分が相手をすべき者を絞った。
ぺらぺらと目的を話す黒靄の男。凡ゆるものを吸い込む"個性"、"ブラックホール"を持つ13号に相手をさせた方がいいと考えた出久は、彼女とアイコンタクトを交わすと彼女の隣に立った。
(これで、13号先生も"個性"が……っ!?)
しかし、一安心したのがいけなかった。新たに入ってきた予知。それに従って振り向けば、その予知に映っていた二人は既に飛び出している。
(しまった!)
「だあっ!」
「うらぁっ!」
黒靄の男にむけて振るわれるのは……ガチガチに硬まった手刀と、派手な爆破。
「オールマイトを殺る前に俺らにやられるってのは考えなかったのか!?」
飛び出した二人の人物とは、爆豪と切島であった。
彼らが一番前に出ていることで、13号の射線上に被っている。これでは彼女が"個性"を使えないし、黒靄の男にも攻撃は効いていない。
故に、彼の行動を許してしまった。
「私の役目はこれ……!散らして、嬲り殺す!」
「っくそっ!」
黒靄の男の体が展開して、闇のドームへと変化する速度の方が出久が飛び出すよりも早かった故、出久も彼の行動を阻止出来なかった。
(大炎戒か火柱、もしくはヒートドームアタックでこれを振り払うか!?いや、駄目だ!皆や13号先生を巻き込む!)
これを振り払う方法が出久にはあるが、それを行えるのは周りに誰もいない時に限る。よって、その選択肢はすぐに却下した。
「ッ、なら!」
それならばと出久が選んだのは……。
「っ!?」
「うおっ!?」
一番前線にいた爆豪と切島を下げることであった。二人の襟元を掴み、乱暴になってしまうが、彼は二人を力任せに後ろに放り投げた。
(頼む、皆!無事でいてくれ……!)
そして、出久もまたクラスメート達の無事を祈りながら黒い靄の中に飲み込まれてしまった……。
★
空間が開けると、出久の目の前に広がっていたのは山岳地帯であった。
(山岳ゾーンに飛ばされたのか……!他の皆は……!?)
舞空術で空中に留まりながら、咄嗟に周りの気を探ってみる。すると、取り敢えず孤立したメンバーはいないことが分かった。
(……良かった。孤立した人はいないみたいだな)
ホッと一息ついた出久は、次に同じ山岳ゾーンにいるメンバーの気を探る。
「……耳郎さんと上鳴君か!ッ、まずい!」
耳郎と上鳴が飛ばされているのを知ると共に、二人の近くに
「じ、耳郎!?一緒か!はあ〜、俺一人だったらどうしようかと思った!」
「はいはい……。取り敢えず、そんなのはいいからさ。皆とさっさと合流しよう!靄の奴、ウチらを嬲り殺すって言ってた。散らばったままだったら、何するか分かんないよ!」
「た、確かにな!急ごう!」
丁度二人の姿が見えた。どうやら、二人は周囲の状況を把握したところらしい。
そんな二人の背後には息を殺して忍び寄った、ナイフを構える
気を感じ取って、既に彼の存在に気がついている出久は……。
「ごげぇっ!?」
「「!?緑谷!?」」
二人の背後に迫っていた
急降下してスピードが付いている上、出久が繰り出した蹴りなのだ。当然それを喰らった
「てか、背後に
「緑谷!無事だったんだ……!」
「そっちも無事だったみたいで何よりだよ」
軽く言葉を交わし合う三人。一人と合流しただけで……しかも、その一人がクラスNo.1の実力者なのだから安心感が大きく、上鳴も耳郎もホッとしていた。
そんな三人を、30人近くもの
「「「ッ!」」」
「何だよ、三人かよ?面白くねえなあ」
「いいじゃねえか。楽だし!ぶっ殺せば、報酬がたんまりだぜ!」
相手がヒーロー志望と言えど、学生であるが故だろうか。
(……逆にチャンスだな)
そんな油断した状態の彼らを見ながら、出久は思った。どちらにせよこの包囲網を突破しないことには、自分達の無事は保証されないのだ。油断してくれていた方が好都合である。
そんな中、
「おい、見てみろよ。一人だけ女がいるぞ!」
「へ?」
「おっ、本当だな。サバサバしてる感じで……いいなあ!楽しみがいがありそうだぜ!」
「うへへへ、確かになあ……。ああいう子に言うことを聞かせるのがいいんだよなあ……」
「よっしゃ、決まりだ。俺達で小僧二人をボコボコにして、俺達があの嬢ちゃんで楽しんでるところを見せてやろうぜ!」
「「は?」」
(……楽しむ……?耳郎さんで……?)
出久は、彼らの言葉を
「っ……!」
「!」
更に、耳郎が出久の
加え、耳郎からは恐怖の感情を、
それにより、出久は……
「おいおいおい、ちょっと待てよおっさん達。そりゃちょっと聞き捨て……」
上鳴も
「「「「はげばぁっ!?」」」」
「「!?」」
上鳴がセリフを言い切る前に、出久が軽率な発言をした
「フウウウウッ……!」
辺りに漂う霞がかった霧のような呼吸音をさせながら、出久は残りの
彼の中には、ジョナサンと承太郎の……ジョースター家の高潔な黄金の精神と血筋が受け継がれている。
加え、義星の宿命を背負って生きたレイの精神をも。
故に、女性をぞんざいに扱う発言をした
怒りに満ちた瞳を向け、出久は言う。
「女をぞんざいに扱う発言が平然と出来るなんて恥ずかしい奴らだな。あんたらのやろうとしていることは人間の尊厳を奪うことだ。ましてや女の尊厳をな」
そして……かつての承太郎がやっていたように、片手をロングコートのポケットに入れて人差し指を突きつけた。
「かかってきな。あんたらは誰一人容赦しない。ぶっ飛ばされたい奴から前に出ろ」
『ひっ!?』
__激情した出久の姿は、威圧感を纏っており、
★
「ありがとな……梅雨ちゃん」
「ケロッ。いいのよ、爆豪ちゃん」
「おい、蛙吹!オイラの扱い雑すぎるだろ!」
「自業自得よ」
「酷えよ!オイラは自分の欲望のままに……「静かにしてちょうだい」
「ぐべらっ!?」
出久に投げ飛ばされた爆豪は、蛙吹と峰田の近くまで飛んでいき……近くにいた二人と共に水難ゾーンに飛ばされていた。
今は水中にて襲ってきた
どさくさに紛れて蛙吹の胸を触ったことで、雑にボートの上に下ろされた峰田が自分の扱いの雑さに対して抗議して喚き、そんな彼を黙らせる為に蛙吹の舌によるビンタが炸裂したという光景を呆然と見ながら、爆豪は拳を握りしめて己の行動を悔いていた。
(何やってんだ、俺は……!俺のせいで出久や13号が動けなかっただろうが!)
(俺が何もしなけりゃ、あそこであの靄野郎も片付けられたかもしれねェのに……!)
自分のせいで、クラスメート達を危険な目に遭わせてしまうかもしれない。
その事実は、彼の中で大きな罪悪感を生んでいた。
「……」
「?どうしたんだ、爆豪の奴。もしかして、オイラと同じで彼奴らに……」
「峰田ちゃんは黙ってて」
「アッ、ハイ」
蛙吹には、爆豪が何を思っているのか何となく分かった気がした。
「……爆豪ちゃん」
彼女は爆豪に歩み寄り、彼を元気付けるようにそっと手を握った。
「……!」
「落ち着いて、爆豪ちゃん。大丈夫、大丈夫よ……。まずはここを生きて切り抜けましょう。謝りたいなら、その後に謝れればそれでいいわ。それに……きっとこのクラスには貴方の行動を過度に責める人なんていないはずよ。私だってそうだもの」
__いつの間にやら、爆豪の中では他人に許されることが救いとなっていたらしい。
言いたいことを言い終えて、「ねっ?」と言いながら微笑む蛙吹を見ながら、爆豪は暖かいものを感じ取っていた。
「……そうだよな……。ありがとよ、梅雨ちゃん」
「いいのよ。ヒーローなんだから、余計な世話焼いて当然よ。爆豪ちゃん、ここを切り抜ける為には……貴方の強さとセンスが必要だわ。力を貸してちょうだい」
「わーっとる、任せとけ」
(本当に……ありがとな、梅雨ちゃん)
内心でもう一度蛙吹への礼を述べながら、爆豪は笑い、
「っし、取り敢えずだ……。改めて"個性"のこと聞かせてくれ」
「分かったわ」
「ちょちょちょっ!待てよ!何勝手にいい雰囲気になって、オイラのこと蚊帳の外にしてんだよ!?」
「あァ、忘れとった」
「酷くねえ!?つか、戦う前提かよ!?やめようぜ!」
慌てて話に入ってきた峰田が戦うのをやめるよう懇願する。曰く、「オールマイトが来るまで待とう!オールマイトなら、全員けちょんけちょんにしてくれるぜ!」とのこと。
しかし、どう考えても……そこまでのんびりと待ってくれる程、相手は甘くはないだろう。
「峰田ちゃん。相手にはオールマイトを殺す算段があるのよ?オールマイトが来てくれたって無事で済むとは限らないわ。そんな連中に私達は嬲り殺すとも言われたのよ?このまま何もしなかったら殺されるだけよ」
「第一な、ヒーローは命懸けて人を救ける仕事なんだぞ。将来は死と隣り合わせつっても過言じゃねェんだ。今ビビっててどうする?てめェはそうやって、プロになってからも
故に、爆豪も蛙吹も峰田に正論をぶつけ、彼の意見を一蹴した。
「はぁぁぁ!?おまっ、覚悟決まりすぎだろ!?ふざけんなよ!オイラ達は少し前まで中学生だったんだぞ!?それにオイラの"個性"は戦闘に不向きだ!」
わんわん泣き叫ぶ峰田。……ヒーロー志望として、あまりにも情けない姿だ。
それを見兼ねた蛙吹が励ましの一言を言った。
「……峰田ちゃん。他の皆は分からないけれど、少なくとも私は怖いわよ。大した経験も積んでいないのに、いきなり
「じゃ、じゃあなんで……」
「でもね、峰田ちゃん。私は……恐怖に屈して、誰かを救けることを諦めるような情けないヒーローにだけはなりたくないの。あの動画で、率先して響香ちゃんを救けた緑谷ちゃんみたいに、かっこいいヒーローになりたいって思うわ。……爆豪ちゃんだってそうでしょう?」
__あの日の貴方もそうだったものね__
そう語る蛙吹は、恐怖を一切顔に出してなどいなかった。__因みに、後者は彼女が内心のみで吐露した言葉である__プロヒーローたるに相応しい精神力……。それに爆豪は感心し、こういう言い方はあれだが、彼女のことが気に入った。
「たりめェだ。……で?やんのか?やらねェのか?女にここまで言わせといて、背中見せるなんて情けねェことは……言わねェよな?」
峰田だって、腐っても男でヒーロー志望なのだ。女であるのに、恐怖に耐えてヒーローらしい姿を見せる蛙吹にここまでやらせておいて、自分が逃げるなどという愚かなことは出来なかった。
「だぁぁぁぁ!もうっ、分かったよぉ!やってやるよ!」
「っしゃ、んじゃ作戦会議といこうや……!」