異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake   作:白華虚

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1話 巡り巡る異世界(前編)

「ふっ!はあっ!」

 

「そう!その調子だ、出久君!」

 

出久が白い刃の刀のようなものを振るいながら、ツーブロックをした銀髪の青年と剣戟を繰り広げている。

 

出久の体は以前に比べて遥かに鍛え上げられており、身長も大きく伸びて170cmに到達していた。

 

結論から言うと。彼はあの栗色の髪をした少年、綱吉以外にも、目の前にいる青年を含め、様々な人物との出会いを果たした。また、彼自身の体感時間では既に3年の時が経過している。

 

役目が終わると、出会った人物は皆出久の精神世界に入り込んできてくれ、更には鍛練までもつけてくれるようになった。そんな彼らに協力してもらい、彼は今の現状に満足することなく、鍛練を積み重ね続けているのだ。

 

さて、そんな彼が巡った異世界と出会った人物について話をしていくとしよう。

 

 

まず、1人目に出会った沢田綱吉。彼は己の精神世界に来た出久を(ないがし)ろにすることなく、色々なことを教えてくれた。

 

彼が謎の声から教えてもらった情報によると、実は出久には"個性"があったらしい。ただ、その発動条件があまりにも特殊すぎて、無個性と診断されたとのこと。

 

それを聞いた出久は、大変驚いた。

 

「ええっ!?僕にも"個性"があったの!?」

 

「その神様的な謎の声曰くそうらしいですよ。緑谷さんの"個性"は"異世界巡り"って言って……命の危機に陥るなどして意識を失うという特殊条件に当てはまった時のみ発動するそうです」

 

「リスク有りきのとんでもない"個性"だね……」

 

「本当ですよ。謎の声が"個性"についても色々教えてくれたんですけど、とんでもないです。で、その詳細はというと……自分とは違う世界にいる特定の人物の精神に入り込んで、その人物の人生を経験し、その経験を自分にも反映出来るんだそうです。因みに、対象となる人物は緑谷さんが"個性"を発動した時点で8人、ランダムに決定されるらしいです」

 

己の"個性"の詳細を聞いた出久は、絶句した。

 

「……強力な力には、リスクがつきものなんだね」

 

「漫画とかアニメによくあるやつです」

 

そして、己の"個性"の詳細を聞いた後、出久は早速綱吉の人生を体験した。

 

彼の人生を体験する中で、出久が最初に思ったのは、綱吉と自分は似ているということだ。

 

主にその性格などの面で。当初綱吉は、何かにつけて弱気で逃げ腰な性格であった。出久も馬鹿にされ続けた結果、常にオドオドとして自信のない弱気な性格になっていた。

 

加え、綱吉は運動も勉強も何もかも苦手で、周りから"ダメツナ"と馬鹿にされていた。出久にも、"木偶の坊"という言葉から取って幼馴染につけられた、"デク"という蔑称がある。

 

そんな綱吉だが、"ボンゴレファミリー"というマフィアの10代目候補として選出され、家庭教師のリボーンとの出会いをきっかけとして大きく成長を遂げた。

 

弱気で逃げ腰な性格は、正義感と勇気を持ち合わせる性格になり、彼は命を軽んずる行為を良しとはしない優しい男となった。

 

マフィアのファミリーとして集まった仲間達からもその信頼を勝ち取った。

 

綱吉本人は空回りした時、リボーンによって「お前はヒーローになんてなれない男」と諭されていたものの、出久はそんなことない、といつも思っていた。

 

何せ、綱吉は勇気と正義感を兼ね備える優しい男。もし彼が自分の世界に存在していたのなら、尊敬されるヒーローになっていたこと間違いなしだろう。

 

出久はそんな彼を尊敬し、こんなヒーローになりたいと思った。

 

結局、綱吉はマフィアの10代目ボスとなることは決意しないまま、穏やかに人生を終えた。しかし、彼が幸せを謳歌したことには間違いないだろう。

 

「凄かったよ、綱吉君……。かっこよかった」

 

人生を終え、すっかり大人の姿となって戻ってきた綱吉に、出久は言った。

 

その瞳は紛れもない尊敬に溢れている。綱吉は、照れくさそうに髪を掻き乱した。

 

「あはは、そんな。オレは大したことないですよ。こんなオレの人生が緑谷さんの参考になるんなら幸いですけどね」

 

「なるよ!死ぬ気の炎もそうだしさ、Xグローブもだし、君の超直感も!」

 

目を輝かせる出久を見て、綱吉はホッとしたように笑う。

 

「それなら良かったです。緑谷さん、オレは貴方の心の中にずっといます。見守ってますから、もし鍛練付けてほしいってなったらいつでも呼んでくださいね。あっ、話し相手とかでも全然OKですよ!」

 

「うん、ありがとう。必ず頼らせてもらうね」

 

「はい!それじゃ、この言い方はアレかもしれませんけど、お邪魔します」

 

そして、自分の話したいことも全て話した彼は、出久の精神世界に入り込み、彼と同化するのであった。

 

『これでOKです』

 

「わっ、凄いよ!綱吉君の声が脳裏に聞こえてくる。不思議な感覚だ……」

 

『オレ自身も凄い不思議ですよ。そうだ、多分そろそろ……』

 

精神世界に同化した綱吉が次の言葉を口にしようとした瞬間、タイミングよくゲートが開いた。

 

「!これって……」

 

『多分、次の人物の所まで導いてくれるゲートですよ。オレも他に誰が選ばれてるのかは知りませんから、楽しみです』

 

「次に出会う人はどんな人なんだろう……?楽しみだなあ……」

 

出久は、精神世界にいる綱吉と共にゲートに飛び込み、次の世界と人物の元へと向かっていく。

 

 

「緑谷出久というのは……君か。俺の名はレイ。よろしく頼む」

 

2人目に出会った人物の名はレイ。流麗な黒髪と、女性と見間違う程の端正な顔立ちが特徴の青年であった。

 

彼の人生を経験した出久であったが、その人生はまさに壮絶だと言えるものであった。

 

レイという男は本来、核の脅威によって世紀末と成り果てたその世界において、"義星"の宿命を背負って生を授かった男であった。

 

人の為に生き、命を懸けられる優しく強い男であり、友への無償の愛と友情の為に奔走出来る。それがレイの本質である。

 

しかし、彼の"義星"としての本来の性格には陰りが生まれてしまった。そのきっかけが、結婚を前にした妹のアイリを連れ去り、彼らの両親を殺した男、ジャギの存在である。

 

当初のレイは、彼への復讐の念に凝り固まり、非道かつ孤独な旅を繰り返していた。

 

そんな経緯を知った出久も、彼の精神世界からそれを見守る綱吉も絶句した。と同時に、復讐は望まないとは言えど、ジャギという男に対して怒りを抱いた。やはり、どちらも優しき男である。

 

しかし、非道かつ孤独な旅を繰り返した彼は、彼の生涯の友であるケンシロウや彼に愛を教えてくれた唯一の女性であるマミヤとの出会いを通して、再び"義星"としての輝きを取り戻した。

 

"義星"の称号に相応しい彼の生き様と、美しく、麗しすぎる彼の技の数々を出久は全て目に焼き付けた。人の為に生き、命を懸けるその姿もまた、ヒーローに相応しい姿であり……。

 

出久もまた、誰か困っている人に手を差し伸べられるようなそんな人間になりたい、と強く思った。

 

そんな生き様を出久に見せてくれたレイは、壮絶な死を遂げた。

 

ケンシロウと血の繋がらない兄であるラオウ。ケンシロウに借りを返す為に彼に挑んだレイであったが、3日後に全身から血を吹き出して死に至る秘孔、"新血愁"を突かれて敗北する。

 

その苦痛に耐える最中で、己に愛を教えてくれた女性であるマミヤの死の運命を握る男、ユダを死の期限を迎える前に倒すことを決意したレイは……発狂死する程の激痛にも耐え抜いて寿命を伸ばし、ユダとの決戦に臨むのだった。

 

結果として、レイは切れを増した美しき技の数々でユダと戦い抜き、起死回生の勝利を収めた後に、死の期限を迎えたことによって砕け散る姿を他人に見せることなく命を散らした。その死にゆく様を知るのは、出久と綱吉に、レイ本人だけである。

 

「済まない出久。幼き君に見せるには、俺の生きた人生は余りにも壮絶すぎたな」

 

出会った時とは違って、延命時の激痛によって白く変化してしまった髪のレイは申し訳なさそうに笑った。

 

「そんなことないです!」

 

そんな彼に対し、出久は尊敬の眼差しを向けながら即答する。

 

「あんな荒廃した世界の中で他人の為に生きれるなんて、凄くかっこいいことだって思います。自分の命が懸かってる時にだって、レイさんはマミヤさんの為に命を捧げることを決めたじゃないですか。そんなの……並大抵の人間に出来ることじゃないって思います」

 

そこまで言っては一息置き、出久はレイに笑顔を向ける。

 

「僕も、貴方みたいに他人の為に生きれるヒーローになりたいって思います。レイさんが僕の世界にいたとしたら、かっこいいヒーローとして尊敬されること間違いなしですよ」

 

出久の笑顔を見たレイは、彼の強さに感心しながら微笑み、彼の頭を撫でた。

 

「君は優しいな。君も間違いなく"義星"に相応しい男だ、出久。俺からは、俺自身も生前から使っていた南斗水鳥拳を授けよう」

 

「南斗水鳥拳……!僕も鍛練したら、あんな風に美しい技が扱えるようになりますかね?」

 

「勿論だ。君の努力が無駄になることは決してないだろう」

 

「……!僕、頑張ります……!貴方の授けてくれた技を、人を救ける為に使えるようになります!」

 

出久の返答に、レイは満足そうに笑う。

 

そうだ、それでいい。君の思うままのヒーローを目指せ。救世の為に俺の拳を使ってくれ、と願いながら。

 

レイもまた、出久の精神世界に入り込み、同化する。

 

『出久、これからもよろしく頼む。些細なことでも相談してくれ、"義星"であった男として、君の救けになろう』

 

「ありがとうございます、レイさん」

 

2人目との出会いも果たした出久の目の前に、再びゲートが開いた。

 

『あっ、開きましたね。次のゲート!』

 

『ああ。さあ、行こうか出久。3人目の人物との出会いが待っている』

 

「はい!行きましょう!」

 

異世界を巡る出久の旅は、まだまだ始まったばかりだ。




1話でした。

話の内容がほぼ変わっていないところは、今日のうちに少しでも投稿しておこうかと思います。変更があるところで投稿は止まるでしょうが……それ以降は、次回の投稿をお待ちくださいませ!
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