異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake   作:白華虚

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19話 第一関門突破

山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)ッ!」

 

「はぎゃあ!?」

 

出力を加減すれど、命中すれば相手の意識を一撃で刈り取る波紋。それを纏った出久の拳撃によるラッシュが、(ヴィラン)を滅多打ちにする。

 

「「「「「うぉぉぉぉ!」」」」」

 

5人の敵がまとめて出久に飛びかかるが、彼にとってはなんの障害にもならない。

 

「スタープラチナ!」

 

『オラオラオラァッ!』

 

「なっ、なんだこの幽霊みないなの!ぎゃあ!?」

 

「こ、こいつ強すぎッ、はぼぉっ!?」

 

「チートかよぉ!?はぐぉっ!?」

 

出久の発現させたスタープラチナのラッシュにより、5人はまとめて殴り倒された。

 

「こいつ、本当に学生か!?いくらなんでも強すぎる!」

 

この場にいる(ヴィラン)達の内、25人程を出久が相手取っている訳だが……その殆どは既に倒されていた。それも、なす術なくである。

 

学生にも、この世界にいるヒーロー達にも到底放てないプレッシャーを放つ出久の姿は、対峙する(ヴィラン)達を硬直させた。

 

出久の立ち回りと、そのプレッシャーは……「あんたらには身動き一つすら許されない」と言わんばかりのものであった。

 

「緑谷ぱねェ……!」

 

「確かにそれはそうなんだけどさ……!集中しよ、上鳴!緑谷があれだけ引き受けてくれてるんだから、ウチらもウチらで突破しないと!てかあんた、電気でなんとか出来ないの!?電気男なんでしょ!?ロックに決めちゃってよ!」

 

一方で、上鳴と耳郎も残った(ヴィラン)を相手に奮闘していた。耳郎が上鳴の''個性''をなんとか頼れないものかと尋ねたが、肝心の上鳴はそれを否定した。

 

「無理なんだよ、これが!俺の''個性''は''帯電''つって、あくまで電気を纏うだけなんだ!放電は出来るけど、方向コントロールしたり、範囲絞ったりすんのは無理だ!今放電したら、緑谷も耳郎も巻き込んじまうの!それと、救け呼ぼうにもジャミングやべえ!」

 

彼は自分の''個性''のことをざっと説明した後、ギリギリのところで(ヴィラン)の繰り出してきたパンチを(かわ)しながら……

 

「そういう訳で、俺は頼りにならねえ!頑張ってくれ、耳郎!」

 

なんともまあ情けないことに、清々しい笑顔でサムズアップしながら耳郎に全てを託したのだった。

 

「はあっ!?もうっ……!緑谷と違って、あんた本当情けないな!」

 

耳郎は戦闘服(コスチューム)のブーツに自分の耳朶のプラグを突き刺し、そこのスピーカーから自分の心音を爆音として放出することで、(ヴィラン)の放り投げてきた岩を粉々にしながら、彼に対して愚痴を吐いた。

 

そんな彼らの様子を見兼ねた出久が、(ヴィラン)の持つ鉄パイプを南斗水鳥拳の手刀で真っ二つにしながら声を上げる。

 

「上鳴君!発想を変えろ!君の''個性''の''帯電''は電気を纏うんだろ!?なら……!」

 

(ヴィラン)の大振りな蹴りを躱しながら、出久は予め上鳴から少しだけ奪っておいた個性因子で''帯電''を発動する。そして、両拳に電気を纏わせ……

 

「霞の呼吸・弐ノ型 八重霞!……こういうことが出来るんじゃないか!?」

 

電撃と化した、幾重もの連撃を(ヴィラン)に叩き込んだ。

 

「はっ!?全く考えたことがなかった!そっか、電気を纏って殴りゃいいんだ!」

 

目を輝かせる上鳴に向けて、出久は引き続きスライディングするように(ヴィラン)の懐に潜り込み、電気を纏った下段蹴りを叩き込みながら声を上げる。

 

「ついでにアドバイスしておくと!W(ワット)数は許容範囲ギリギリじゃなく、そこから余裕を持った数値にしておくといい!もう一つ言うとするなら、その条件を満たした上で(ヴィラン)の意識を一撃で刈り取れるW(ワット)数が一番望ましい!」

 

「な、成る程……!分かりやすいアドバイスサンキュー、緑谷!これで俺も戦える!耳郎、遠慮なく俺を頼れ!」

 

「思ってたけど、あんた本当軽いね!?」

 

戦う術を見つけた上鳴も加わったことで、(ヴィラン)達はみるみるうちに殲滅されていき……それ程時間も経たずに、山岳ゾーンには気絶した(ヴィラン)達の山が出来た。

 

「緑谷!本当サンキュな!俺もなんとか戦えた!」

 

「いやいや、大したことはしてないよ。それより二人とも、怪我が無さそうで良かった」

 

「み、緑谷。ありがとっ」

 

「……本当に無事でよかった」

 

「あんたが頑張ってくれたから……」

 

「?あれっ、耳郎さん?俺は?俺も頑張ったよ?俺、蚊帳の外?電気悲しい!」

 

敵を撃退したことに一安心して会話を交わし合う3人だったが……出久は決して逃しはしなかった。

 

「……2人共、ちょっと失礼するね」

 

「ふぇ?緑谷っ!?」

 

「ウェッ!?俺も抱えられんの!?」

 

(地面を伝わる波紋……!)

 

出久は上鳴と耳郎を抱えた後に、脚に波紋を纏わせ……

 

藍色の波紋疾走(インディゴブルーオーバードライブ)ッ!」

 

震脚で地面を踏み抜き、その足先から地面を伝わる波紋を流した。

 

出久の流した波紋は、地面中を伝わっていき……。

 

「ぎぃやあああああ!?」

 

不意打ちを狙って、地面に潜っていた(ヴィラン)に見事命中。その意識を刈り取った。

 

「じ、地面の中から(ヴィラン)が!?」

 

「不意打ちを狙って地面に潜んでたみたいだね」

 

「危なっ……。重ね重ねありがとね、緑谷」

 

「うん。……取り敢えず、ここの(ヴィラン)達は皆片付いた。2人は他の皆と合流してほしい」

 

出久がそう指示を出すのを見て、2人はなんとなく出久は共に来ることがないのだと勘付いた。

 

「……緑谷は……どうするの……?」

 

耳郎が、再び出久の羽織るロングコートの裾をぎゅっと掴みながら尋ねる。

 

「僕は、相澤先生を救けにいく。相澤先生……イレイザーヘッドの得意な戦法は、相手の''個性''を消して、奇襲を仕掛けてからの捕縛だ。そこいらのチンピラレベルの(ヴィラン)達が相手ならどうってことないけれど、無理してるのには変わりない。それに……相澤先生やオールマイトでも太刀打ち出来ない相手だっているんだ。そいつが出てきた時は、僕がやるしかない」

 

「……そっか……緑谷がそこまで言うなら仕方ねえ……。俺らにはなんも出来ねえのが悔しいぜ……」

 

自分の弱さを悔やむように、上鳴は歯を食い縛る。そんな彼を励ますように出久は声をかけた。

 

「……君達は君達に出来ることを全力でやればいい。(ヴィラン)は俺達で食い止める。皆のところには行かせない。だから君達は、皆を救けてやってくれ。俺の代わりに」

 

__出久が一人称を''俺''に変えるのは、真のヒーローとして動かんとする時である。今もまた、彼はヒーローとして皆を救け、守る為の覚悟を決めた目をしている。

 

「緑谷……。…………うん、分かった……。じゃあ、約束。相澤先生も連れて、皆で生きて帰ろ。もし心配かけさせたら、いっぱいお詫びしてもらうから」

 

「!分かった。心配かけさせない保証は出来ないかもだけど……絶対に生きて帰るよ」

 

「ん、約束ね。……頑張って、緑谷。ウチ、待ってるから」

 

「ありがとう、耳郎さん」

 

そんな彼を、耳郎は快く見送った。出久もまた、手を振る彼女に軽く手を振り返した後に、相澤が戦闘を繰り広げている中央広場へと飛んでいったのだった。

 

「……なあ、耳郎。お前、緑谷と……」

 

「そんなこと言ってる暇あったら早く行くよ」

 

「おっ、おう」

 

(耳まで真っ赤じゃねえか!やっぱ付き合ってんのな。そりゃ当たり強くなるわ!イケメンで彼女もいて、強い!ズリーよ緑谷!それとおめでとう!)

 

2人に出来るのは……ただ出久の勝利を願い、クラスの皆を救けること。それだけだ。

 

 

「……行くぞ」

 

「ケロッ」

 

「チクショウ、やってやんよ!」

 

一方。水難ゾーンの方でも、爆豪達が動きだしていた。

 

作戦はこうだ。

 

(ワン・フォー・オール、フルカウルッ!40%!)

 

「死ぃねェェェ!」

 

「はは、やっぱガキだぜ!やるぞ、お前ら!」

 

『おう!』

 

まず、爆豪が子供っぽい冷静さを失ったかのような啖呵を切りながら上空に飛び、(ヴィラン)の視線を釘付けにする。

 

「ハッ、所詮ガキだと甘く見やがってよォ……!痛い目見やがれ、(ヴィラン)共が!」

 

次に……。

 

「キラウエア……!」

 

「!?ま、待て!何かやべえぞ!」

 

(もう……遅ェ!)

 

「スマァァァァァッシュ!!!!!」

 

空中に止まったままの爆豪が、掌打に乗せて最大火力の爆破を起こしながら、爆風と衝撃波の二つを放出して水面を穿つ。

 

「梅雨ちゃん!峰田ァ!」

 

「行くわよ、峰田ちゃん!」

 

「うぉぉぉ!やってやらァ!」

 

そして、それと同時に峰田を抱えた蛙吹が"蛙"によって発揮される脚力を生かした大跳躍でボート上を離脱する。

 

何故、こうするのかと言うと……

 

「うぎゃあ!?なんだぁっ!?」

 

「う、渦がッ!?おい、誰か!どうにかしろ!」

 

「無理に決まってるだろ!」

 

爆豪が水面に凄絶な衝撃を与えたことで、水面には巨大な波が発生し、渦が形成されたからである。流石にこれをどうこうする方法はないらしく、(ヴィラン)達は大人しく流されるしかない。

 

爆豪達の作戦はここで終わりではない。

 

「オイラだって!オイラだってぇぇぇ!うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

仕上げに峰田が、己以外の全てにくっつく特殊な性質の髪の毛をちぎっては渦の中に投げまくっていく。

 

渦の中に投げ込まれたそれは、巻き起こった水流に逆らうことなく乗っかると……流される(ヴィラン)達に次々とくっつき、彼らを塊にしてしまった。

 

塊になって、身動きも取れない(ヴィラン)達。こうなると、もうどうしようもない。

 

『ぎゃああああああ!?』

 

彼らを引き()り込んだ波は、巨大な水柱へと姿を変えて彼らの体を空中に高く跳ね上げる。

 

そのまま落下していった(ヴィラン)達は、水面に強く体を打ち付けて気を失った。

 

「水面に強い衝撃を与えりゃ、広がった後にまた収束する」

 

「だから、一網打尽って訳ね。何にせよ、第一関門突破よ。凄いわ、二人とも!」

 

こうして、爆豪は蛙吹、峰田と共に水難ゾーンでの(ヴィラン)の包囲網を突破した。

 

その後、爆豪もまた相澤が無理して戦っていることを見抜いていたようで、少しでも助太刀が出来ればと思い、2人を連れて広場の方に向かった。

 

いざ、広場の方に向かってみると……。

 

「!」

 

目の前には、出久と相澤が背中合わせで(ヴィラン)達をボコボコにする光景が広がっていた。

 

相澤が捕縛布を操りながら、(ヴィラン)を次々と薙ぎ倒し、彼に不意打ちを狙う(ヴィラン)を出久が殴り倒す。

 

また、相澤の対応出来ない部分は出久が気弾や波紋といった様々な攻撃を駆使して打ち倒していく。

 

(ヴィラン)達は次々と制圧されていた。

 

「す、凄え……!まるでオールマイトだ!強えぞ、緑谷!」

 

「峰田ちゃん、声を抑えて。確かに貴方の言う通りだけれど、これで私達が(ヴィラン)に見つかったりしたら邪魔になっちゃうわよ」

 

声を抑えてヒソヒソと話し合う峰田と蛙吹。二人を横目で見ながら、爆豪も、

 

(出久がいんなら大丈夫だ)

 

と一安心していた。

 

ここを離脱して、他と合流するタイミングを見計らう為に引き続き様子を(うかが)っていると……。

 

(ヴィラン)達のボスだと思われる、手だらけの黒服男が突如動きだした。その動きは、彼の病的な細身の体からは想像出来ない程には戦闘慣れしたものである。

 

「ッ、本命か!」

 

彼が動きだしたことに一足先に気がついた相澤が、捕縛布を彼に向けて振るうも……男は振るわれたそれを鷲掴みにして地面を駆け、みるみる相澤との距離を詰めていった。

 

すると、そんなの想定内だ、と言わんばかりに相澤もまた距離を詰めて、肘打ちを叩き込もうとしたのだが……。

 

その男が相澤の繰り出す肘打ちを受け止めようと準備をしていた。どうやら、プロヒーローでもある相澤の体術を受け切るレベルには強いらしい。

 

それが目に入り、嫌な予感がした爆豪と蛙吹が同時に叫ぶ。

 

「「先生ッ!」」

 

「お、おい!?」

 

峰田は、何をしてんだよと言うように二人を見て、

 

「「ッ!?」」

 

手だらけの黒服男と相澤の視線は二人に向いた。

 

「へえ、(ヴィラン)の包囲網を突破したのか。流石金の卵」

 

「っ!?」

 

そう呟きながら、注意の逸れた相澤に向けて男は前蹴りを繰り出す。当然だが、相澤は彼を警戒してその蹴りを(かわ)す。

 

__しかし。距離が空いたことが、男にとっては好都合だった。

 

「取り敢えず……早いうちに平和の象徴の矜持をへし折ってやろう」

 

「ッ!蛙吹!」

 

距離が空いたことで、警戒対象が居なくなって自由に身動きが可能になった手だらけ男は……想像もつかない程の素早い動きで蛙吹の目の前に現れ、その五指で彼女の頭を鷲掴みにしようとしていた。

 

「ケロ……ッ!?」

 

爆豪も峰田も咄嗟のことで動けない。手だらけ男の"個性"を知っている相澤も、彼の"個性"を消すことで対応しようとするが、目の前に立ちはだかった(ヴィラン)の群れによって視界を塞がれてしまう。

 

誰もが、蛙吹の死を直感した次の瞬間。

 

霞がかった霧のような呼吸音がすると共に、男を蹴り飛ばす音がした。

 

「……今度は間に合った」

 

「!」

 

死の危機を迎えた蛙吹の前に立ち塞がったのは......陰りと輝きとを併せ持つ、1年A組最強の英雄。緑谷出久だ。

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