異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
出久は
そうしているうちに、彼が蛙吹に向けて五指を突きつけ、それで彼女に触れている光景が頭に流れ込んでいく。
それを知っていたからこそ……出久は行動出来た。彼女の危機に間に合ったのだ。
「……梅雨ちゃん、怪我はない?」
「ケロッ……緑谷ちゃんのおかげよ……。ありがとう……」
表情には出ていないが、彼女の声は震えている。
死の危機に瀕したのだ。それこそ、恐怖を感じないはずがないだろう。
それを感じ取った出久は、微笑みを浮かべながら言う。
「大丈夫、梅雨ちゃん。俺がいる。もう君に手出しはさせないよ。……かっちゃん、梅雨ちゃんと峰田君を連れて下がってくれ」
「!分かった」
引き続き、出久が手だらけの黒服男の未来を視ながら言うと、爆豪は素直に頷きながら2人を連れ、迂回しながら入り口の方へと向かっていった。
彼を追いかけようとする
(何はともあれ、梅雨ちゃんは無事。一安心だ)
手だらけ男が、鳩尾を押さえながら立ち上がる。
「はは……
「……あんたの言う彼奴ってのは、オールマイトのことか」
「察しがいいな、小僧。そうだよ、俺はオールマイトを殺したいんだ。つーか、黒霧の奴は何してるんだ……?俺に報告にすら来ないじゃないか」
出久の問いに端的に答えると、手だらけ男は周囲を見渡す。
(……次に動くのは……脳が剥き出しの彼奴!)
引き続きその男の未来を視ていることで、出久には彼が脳が剥き出しの化け物に指示を出している光景を見た。
「ったく、何をやってるんだ彼奴は……!入り口のところで棒立ちしてやがる!脳無、行け!俺達の出入り口を取り返す!」
(させるか!)
男の声に従って、脳が剥き出しの化け物……脳無が動き出し、出久もまたその行く手の先を阻まんとして更に速く動き始めた。
★
「こいつ、俺達を飛ばしやがった靄野郎じゃねェか。なんで棒立ちなんだ?」
「俺の''個性''。洗脳するって意志を持ってやった問いかけに、まんまと引っかかって答えてくれたからな。成功して、一生抵抗せずに棒立ちしてろって命令した」
一足先に戦線を離脱した爆豪達は無事に入り口に辿り着き、元々飛ばされることを逃がれた麗日、心操、瀬呂、障子、芦戸、砂藤と合流した。
「ケロ……!13号先生は大丈夫なの?」
蛙吹が焦った様子で尋ねる。彼女の声に振り向いて見てみれば、13号の体の後ろ半分が無くなっていた。
「この靄男がね、先生の攻撃を利用したの!それで、13号先生が自分の体を吸い込んじゃって……!」
「な、なんとか一命は取り留めたみたい……」
蛙吹の質問に、芦戸と麗日が瞳を潤ませ、声を震わせながら答えた。
爆豪と峰田も、彼女が一命を取り留めていることにホッとする。
「てか、飯田はどうしたんだ?瀬呂達の話じゃ飯田もここにいたんだろ?」
「飯田はUSJを一足先に脱出してな。心操のおかげもあって、この靄男の妨害も受けずに済んだ。今は雄英の校舎に全速力で向かって、救けを呼びに行っているところだ」
次に峰田が飯田について尋ね、障子が彼の行方について答えた。
「救けを呼びに!?よっしゃあ、勝った!」
飯田が救けを呼ぶ為に脱出したことを聞くと、峰田がガッツポーズを取る。
「取り敢えず一安心ってとこだな。後は俺達が持ち
峰田に同意しながら瀬呂が答えて提案した。
「だな。強い衝撃与えない限りは俺の''洗脳''が解けることはないし、早いところそうした方が良さそうだ」
「っし。強い衝撃さえ与えなけりゃ、こいつはこのままなんだな。そりゃいい」
瀬呂の提案に乗る、心操と爆豪。彼らに則り、他の皆も靄男の拘束に乗り出すも……次の瞬間。
「ッ!?爆豪、心操!離れろ!」
「「ッ!?」」
砂藤の叫び声が響くと共に、2人の目の前に脳が剥き出しで……筋骨隆々な藍色の肉体を持つ化け物、脳無が現れる。
咄嗟に距離を取る心操、咄嗟に爆破の構えをとる爆豪。2人を庇おうと飛び出す障子に、その化け物と距離の近い爆豪を救けようと勇気を振り絞って舌を伸ばす蛙吹。
そして、そんな彼らに拳を振り下ろさんとする脳無。
__13号も動けない今、彼らの命運は全てこの男に託された。
「させるか……よぉっ!」
「出久っ!?」
「緑谷君っ!」
爆豪の目の前に割り込むように飛び込んできた出久は、脳無の拳を真正面から迎え打つ。
『うわっ!?』
真正面からの力と力のぶつかり合い。凄まじい風圧が巻き起こり、入り口にいる一部の者達は尻餅をついていた。
そして、風圧もまた間接的であれど、強い衝撃だ。
「っ!?わ、私は今まで何を……!?」
それによって靄男の洗脳が解ける。
「ッ、まずい!」
「火拳ッ!」
靄男の洗脳が解けたのを見越した出久は、脳無の肉体を巨大な炎の拳で押し出しながら叫ぶ。
「かっちゃん、心操君!それに皆!その靄男を……黒霧を逃がすな!そっちは頼む!」
『ッ!』
叫んだ後、出久は肉体を押し出されて吹き飛んでいった脳無の元にすぐさま飛んでいった。
「オラァッ!」
「ぐあっ!?」
怯むことなく靄男こと黒霧の背後に回り込んだ爆豪は、彼の実体部分である首元らしきところを覆った金属に掌を押しつけながら、彼をうつ伏せに押し倒す。
「ははっ、やっぱりな。あそこで飛び出したのも全部が全部無駄じゃあなかった……!物理が全部無効ならよォ、『危ない危ない』なんて言葉は出ねェよなァ!?」
「つまり……靄になれる部分は限られてる!」
「ぐっ!」
麗日と爆豪の発言は全て図星である。黒霧は苦虫を噛み潰したように顔を歪ませた。
「余計なことする素振り見せてみろ。俺が掌で押さえつけてるここに、ありったけの爆破をぶち込んでやっからな」
「ッ……!」
「ヒーローらしからぬ言動だけど、グッジョブよ爆豪ちゃん」
ここまで脅されてはどうしようもなく、黒霧は大人しくせざるを得ない。それに、黒霧は脳無の恐ろしさや強さをよく分かっている。
__それの攻撃を真正面から受け止めた金の卵がいる。更に、彼はそれを受け止めてもなお余裕綽々。そんな彼が、自分を「逃がすな」と生徒達に指示を出した。
__私はもう、逃がれられない。私はもうここで終わりなのだ__
彼はそう悟ってしまい、抵抗の意志を失くした。
(申し訳ありません……先生……死柄木弔……)
彼自身の内心で、虚しく響き渡るのは謝罪のみである。
★
「は……?」
手だらけの黒服男、死柄木は唖然としていた。
「はあっ!」
自分達、
「っ、こいつ……!」
死柄木が唖然としている中、相澤が脳無を押さえつける出久に駆け寄ってきた。
「緑谷!」
「先生っ……!多分、連中がオールマイトを殺せるって確信してる算段はこいつです!そもそものスペックが、オールマイト並みのパワーとスピード……!それと、''個性''が''ショック吸収''と''超再生''……!こいつ、まさに対オールマイト用に造られた改造人間って感じ……ッ!?」
今も、その学生は……脳無が必死の抵抗で振り払った腕を易々と躱した。
「造られた……!?あり得るのか、そんなこと……!」
「見聞色の覇気での感情感知能力で察せます……。あの化け物自身にすらも分からない潜在意識の奥底から、体を作り変えられることに対する恐怖を感じました。透き通る世界で視ても、普通の人間の体の構造からはかけ離れてます」
「なんてこった……。とんだことしやがるな……!」
挙げ句の果てには、脳無のスペックの何もかもすらも見抜かれている。
「は、はは……よく分かったな。そいつは改人''脳無''。''ショック吸収''と''超再生''を兼ね備えた対オールマイト用の殺人兵器。最強のサンドバッグだ!だが、それが分かったところでお前にはどうしようもない。オールマイトですら倒せないんだぜ?それを倒せる相手なんざ、この世にはいない!」
乾いた笑いを見せながらも、死柄木は啖呵を切る。
(大丈夫、大丈夫だ。所詮相手はただの生徒だ。どれだけ強かろうが勝てる訳がない……!)
必死に脳無の勝利を自分に言い聞かせながら、死柄木は微かに祈っていた。頼むから、脳無を易々倒すようなことはしてくれるなよ、と。
しかし、死柄木は出久の実力を分かっていない。彼が今見せているのは……実力の5%もないのだから。
「''ショック吸収''に''超再生''……。打撃は効かねえし、ぶった斬ろうが、焼こうが、千切ろうが再生する……。どうする……!?」
「大丈夫です、先生。やりようは幾らでもあります」
「何?」
「は?何言ってんだ?」
出久の言葉に、相澤と死柄木が同時に聞き返した。
「……''ショック吸収''が作用しなくなるまで超パワーで殴り続ける、''ショック吸収''が通用しなくなる程のダメージをたった1発の打撃で叩き込んでノックアウトする、炎で奴の脳を消し炭にして細胞を死滅させる、俺以外には溶かせない超圧縮エネルギーによる氷で彼奴を仮死状態にする、覇気を流し込んで内側から破壊する、''超再生''が作用しなくなるまで細切れにし続ける、奴の機能をトチ狂わせてあの男の命令が一切通じないようにする」
聞き返されると、出久はつらつらと幾つもの脳無の倒し方を述べていく。
「お、お前……!」
「お、おい?何言ってんだ?」
相澤は、出久の実力を多少知っている。だが……ここまでだとは思っていなかった。死柄木も、信じられないと言わんばかりに顔を
「なんなら、最初に挙げた……''ショック吸収''が作用しなくなるまで超パワーで殴り続けるって手段を使って、脳無がオールマイトにすら敵わないってことを教えてやろうか?」
「ッ!?何を言ってやがる!?ふざけるな!くそっ、脳無!思い知らせてやれ!あの緑髪の小僧を殺せ!」
死柄木が首をガリガリと引っ掻きながら脳無に命令を下す。すると、脳無は地面を蹴って出久に肉迫してきた。
「……先生。行ってきます」
「お前、マジでやるつもりか……!?分かった……。せめて、最低限の補助はさせてもらうぞ」
「お願いします」
相澤と少し会話を交わした出久は、ハイパー死ぬ気モードを発動し、超サイヤ人2に変身する。
同時に、地面を蹴って己も脳無に向けて肉迫した。
2人の距離が縮み……それがゼロ距離になった瞬間。
__ドパァァァァン!!!!!
「っぐ!?」
「うおっ!?」
2人の拳がぶつかり合い、大気が破裂するような音が鳴り響くと共に激しく風圧が巻き起こる。
多少距離が離れているというのに、相澤と死柄木は吹き飛びかけた。
そして……!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」
出久はスタープラチナのパワーにも頼ることなく、己の拳で脳無の拳撃のラッシュを迎え打つ。
力と力のぶつかり合いが始まった瞬間、相澤は''抹消''を発動して''ショック吸収''と''超再生''を無効化した。
「!?の、脳無が押されているだと!?」
そうなれば当然、ダメージの吸収も何もない脳無はただのサンドバッグと化す。
「み、見えねえ!あの小僧、オールマイト以上の速度でラッシュを!?」
オールマイト以上の速度を持つ出久のラッシュを、サンドバッグが受け止められる訳などない。脳無に出久の強靭な一撃が次々と叩き込まれていく。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」
そして。あろうことか出久のラッシュの速度はみるみる増していき、衰える様子を見せない。
(いや、これはイレイザーヘッドに''個性''を消されているからに決まっている!奴の''抹消''さえ切れてしまえば!)
現実を受け止め切れない死柄木は、自分の考察を信じて相澤を観察し続けていた。
数十秒後、相澤の髪が垂れ下がったのを見て彼は脳無の勝利を確信する。しかし……。
「なっ!?」
再び戦いに目を向けてみれば、脳無は変わらず一方的に殴られているではないか。
「な、なんでだ!?なんで''ショック吸収''が通じない!?」
死柄木が疑問の声を上げると同時に……
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!!!オラァァァァッ!!!!!」
出久が気合の一声と共に、死ぬ気の炎を収縮させた拳を叩き込んで脳無を上空向けて殴り飛ばす。そうすると……脳無はたちまちUSJの屋根を突き破って遥か彼方に飛んでいってしまった。
「……簡単なことだ」
死柄木の疑問の声に、一息吐きながら出久は答える。
「''ショック吸収''で吸収し切れないダメージを宣言通りに蓄積させたんだ。奴を殴り続けることによって……ね。知ってるか?ヒーローって常に
そして一息置き、出久は己とその目から凄まじいプレッシャーを放ちながら言う。
「……ヒーローをナメるなよ、
「っ……くそっ!くそっ!くそぉぉぉっ!脳無がやられた!黒霧も結局捕まったままだ!ふざけるな!こんなところでゲームオーバーになってたまるか!脳無の仇を取ってやる!」
死柄木が激しく怒り狂いながら片手を構え、出久に向けて走っていく。
出久も彼を迎え撃とうとしたが……次の瞬間。
__落ち着くんだ、弔。もう大丈夫だとも__
「「ッ!?」」
何処か心臓を鷲掴みにするような……穏やかであれど、悪意に満ちた声が響き、黒い臭気の漂う液体が溢れ出す。
その中から現れたのは……。
「せ、先生……!?なんでここに……!?」
死柄木が先生と呼んだ、骸骨を模したマスクで顔全体を覆う黒いスーツ姿の男だった。
20話でした。今日はここまでにしておきます。次回からは以前通りに1話ずつの投稿に戻ります!
……まさかまさかの、あのお方登場です。彼と出久君は戦うのか。彼が一体何をしにここまで来たのか。それは、次回のお楽しみです。
では、また次回!