異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake   作:白華虚

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3章 雄英体育祭編
25話 体育祭、迫る


臨時休校の日の翌日。クラス内では、USJ襲撃事件に関するニュースや事件そのものについての話で持ちきりだった。

 

「ねえねえ、昨日のニュース見た?私全然目立ってなかったね!」

 

「ああ……言われてみればそうかも」

 

「葉隠さん、戦闘服(コスチューム)の都合上目立ちようがないもんね」

 

「そうなんだよ〜!」

 

耳郎、尾白の2人は葉隠の嘆きに付き合い……。

 

「しっかし、どのチャンネルでも結構デカく扱ってたよな」

 

「仕方ないだろ。プロヒーローを輩出するヒーロー科、しかもそのヒーロー科がある高校の中でも天下の雄英が襲われてるんだ。そりゃ騒ぎにもなる」

 

上鳴と心操は、襲撃事件の扱いについて話し合い……。

 

「あの時、先生達や緑谷が居なきゃどうなってたことか」

 

「やめろよ、瀬呂!考えただけでもちびっちまうだろ!」

 

瀬呂がつい口走ったもしもの展開に、峰田は全力で怖がりながら叫んだ。

 

「煩えんだよ、葡萄頭!過ぎたことをピーピー騒ぐんじゃねえ!出久に迷惑かかんだろうが!」

 

「いやいや、僕は大丈夫だから……ステイステイ」

 

喚く峰田を叱る爆豪に、彼を諫める出久。

 

「しかし……オールマイトも緑谷も凄まじいな。あれ程強い(ヴィラン)を見事に撃退したのだから」

 

「どっちもクソ強かったよな。緑谷に関しちゃ、動画の強さ健在って感じだったぜ。俺達もまだまだ強くならねえとな」

 

オールマイトと出久の強さを思い起こしながら感慨深そうに語る障子と砂藤。

 

つい一昨日起こった事件である以上、話が賑わうのも当然といえば当然のことである。

 

そんな中、クラス委員長である飯田が朝のHRの時間が近いことを見越して、私語を慎み、席に着くよう指示を出したが……全員席に着いた状態で話していた為、席に着いていないのは飯田だけだということとなり、彼は見事に空回りしてしまったのであった。

 

そして数分後、教室のドアを開けて相澤が入ってきた。

 

「おはよう諸君。取り敢えず……一昨日の事件は全員が無事に乗り越えられたようで何よりだ。だが……気を抜くなよ。まだ戦いは終わっちゃいねえんだからな」

 

教壇に立つなり、微かに威圧感を交えて相澤はそう言う。

 

まさか、また(ヴィラン)が襲撃してきたのかなどと生徒達は考え、息を呑んだが……。

 

「……雄英体育祭が迫ってる」

 

『クソ学校っぽいのキタァァァァァッ!』

 

直後の相澤の一言によって様子が早変わり。何時ぞやのように皆が大騒ぎし始めた。

 

しかし、そんな中でも不安が拭い切れない生徒は当然いるようで。

 

「待て待て」

 

切島の顔を押さえつけるようにしながら、彼を制止した上鳴を筆頭に何人かが発言する。

 

(ヴィラン)に侵入されたばかりなのに、体育祭なんてやってもいいんですか?」

 

「また襲撃されたりしたら……」

 

彼らの意見は最もであるが……相澤は、昨日出久が根津から聞いた趣旨と同じようなことを述べた。

 

「いや、そこは中止しよう?体育の祭りだよ?」と、彼の話を聞いてもなお抗議の声を上げる峰田だったが、彼の意志はその手の話に詳しい出久や八百万によって見事に丸め込まれてしまった。

 

八百万の「プロヒーローもスカウト目的で観戦する」という話に関連してか、上鳴も発言する。

 

「卒業後はプロ事務所にサイドキック入りがセオリーだもんな」

 

そんな彼に、3人の人物が追い討ちをかける。

 

「そこから独立しそびれて、万年サイドキックってのも多いよな。少なくとも上鳴はアホだしそうなりそうだ」

 

と、彼の隣の席にいる心操。

 

「そうだな。戦闘訓練の時も調子に乗って放電しまくって、ウェイってなってたもんな」

 

と、心操の隣の席の爆豪が嘲笑する。

 

「おまけに、USJで出久に指摘されるまで“放電ぶっぱ”しか戦い方がなかった。ウチはあんたの将来が心配」

 

と、上鳴の右斜め前の席の耳郎が哀れみの目を向ける。

 

「ゴフッ!?3人とも酷くね……!?俺に恨みでもあんの……!?」

 

「「「USJに行く時に、クオリティの低い出久(緑谷)の真似をした罰」」」

 

「ウェイッ……」

 

発言の理由があまりにも理不尽で、上鳴は泣きたくなった。誰か可愛い女子に慰めてもらいたいとも思った。

 

そんな彼らを一睨みして落ち着かせたところで、相澤は続きを話し始める。

 

「当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。プロに見込まれさえすれば、その時点で将来が拓けてしまう訳だ。年に1回、計3回の貴重なチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備を怠るなよ」

 

そう一言を残して朝のHRは締め括られたが、それを終えてもなお生徒達の心は体育祭に向けての情熱によってメラメラと燃え盛っていた。

 

 

そして昼休み。早速生徒達は体育祭の話で盛り上がっていた。

 

「体育祭……!単に燃えるイベントだけどよ、プロヒーローに注目してもらえる可能性があるってんなら頑張らずにはいられねえよな!」

 

「本当だな。俺もしっかりアピール方法考えておかねえと……」

 

「尾白君!私、なんだか緊張してきちゃった!体育祭、頑張って目立たなくちゃ!」

 

「あはは……。でも、葉隠さんは相当頑張らないとプロヒーローに気付いてもらえないかもね……」

 

「そうっ!そこが課題なんだよっ!」

 

互いに様々な話をするクラスメート達を、出久は微笑ましそうに見守っている。

 

「はは、当然のことだけど皆ノリノリだね」

 

「ああ。ヒーローになる以上、当然のことではあるだろうが……こういうのを見ていると、皆が一丸となって目標に向かっている感じがして更に燃えてくる!」

 

「プロヒーローに注目してもらえる以前に俺らにとっちゃ……出久、お前にどれだけ成長したかを見せつける機会でもある。覚悟しとけや」

 

「そいつは俺だって同じだ、爆豪。忘れてもらっちゃ困る」

 

「ウチだって……!出久を支えるのと一緒で、全力を懸けて挑む……から!」

 

当然ながら、飯田や爆豪、心操、耳郎だって燃えていたが……一段と闘志を燃やしている少女がいた。

 

「緑谷君、飯田君。爆豪君、心操君、耳郎さんも……!頑張ろうね、体育祭……!」

 

その少女の名は、麗日お茶子。普段の麗かさは何処かへと吹き飛んで、戦闘民族の如くギラついた闘志をその目に宿していた。

 

「う、麗日さん?」

 

「どったの、麗日。全然麗かじゃないよ!?」

 

芦戸の言うことも最もな様子の麗日は、「皆ー!私頑張るー!」と腹の底から声を絞り出しながら握り拳を突き上げている。

 

そんな彼女を見ながら、出久はふと思い出していた。

 

そういえば、麗日さんのヒーローになりたい理由をまだ聞いていなかったな、と。

 

 

 

 

「お金……。お金が欲しいからヒーローに?」

 

「究極的に言えば……」

 

そうして廊下にて彼女からその理由を聞き出してみたところ、麗日はお金を稼ぐ為にヒーローになりたいのだと述べた。

 

当の本人は照れ全開で頭を掻きながら、「不純な理由でごめんね!」と謝っているが話を聞いていた者達にそれを不快に思うなど誰一人おらず……更に彼女の話に興味を持っていた。

 

詳しく話を聞いてみると、彼女がヒーローとなってお金を稼ぎたい理由も明らかになった。

 

曰く、彼女の実家は建設会社を営んでいるのだが仕事が全然なく、収入が入らないらしいのだ。

 

麗日の"個性"である"無重力(ゼログラビティ)"。それならば、許可さえ取ってしまえば重機も要らないし、コストがかからない。その利点に幼い頃の麗日は既に気がついていたようで、大きくなったら実家の建築会社に就職して手伝う、と父と母に言ったのだが……。

 

「父ちゃんは、『気持ちは嬉しいけど、お茶子が夢を叶えてくれた方が何倍も嬉しいわ』言うて……」

 

「……自分の幸せよりも娘の幸せ……ってことか……」

 

「うん……。だから、私は絶対ヒーローになってお金稼いで……父ちゃん、母ちゃんに楽させたげるんだ!」

 

スカートの裾を握りしめながら、凛とした表情で言う彼女からは、強い決意が感じ取れた。

 

「ブラーボー!麗日君、ブラボー!」

 

真っ先に声を上げて拍手をする飯田を始めとして、他の者達も意見を述べる。

 

「いいんじゃねえの。現実加味した上だろ?それに、結局お前は自分の父ちゃん母ちゃんの救けになりてェってことだろ?なら、それも立派なヒーローの在り方なんじゃねえのか」

 

「そうだね。身近な人の救けになることだって立派なヒーローの役目じゃないかな」

 

「全員が全員オールマイトみたいに大衆を救ける訳じゃない。地元のことに集中するヒーローだっている。……それと似たようなものなんじゃないか?」

 

廊下の手すりに腕組みしながら寄りかかって述べた爆豪に続き、耳郎と心操も意見を述べ……

 

「だから、何も心配することなんかないよ。君は君の立派な夢を持っていればいいさ」

 

最後に出久が背中を押した。

 

「皆……!そうやね……ありがとう!よっしゃー!体育祭、頑張ろう!」

 

自信を持って、元気よく拳を掲げる麗日を出久は微笑ましく見守っていた。

 

(本当……心の綺麗な子だな)

 

そう思うと同時に、麗日はいい親を持っているなとも思った。

 

親に限った話じゃないが、家族の誰かのことを思った行動が出来るというのは素晴らしいことである。

 

出久の出会った英雄達での例を挙げるのならば……。

 

エースは、常に義理の弟であるルフィのことを気にかけていた。__事実、「出来の悪い弟を持つと兄貴は心配なんだ」と、本人の口から聞いた経験もある。無論、その言葉は出久に向けられたものでもあるのだが__

 

承太郎は、不器用ながらも妻や娘の徐倫のことを気にかけ、戦いに巻き込むまいとした。

 

ジョナサンは、死の間際まで己の妻であるエリナの幸せを願っていた。

 

レイもまた、愛した女であるマミヤの幸せを願っていたし……彼に至っては他人の為に命を懸けることも(いと)わなかった。

 

当然ながらヒーローになるにあたって、出久も他人や家族のことを思って動ける人物になりたいと思っている。そんな彼にとって、麗日の両親の振る舞いは尊敬すべきものだった。

 

その時だった。

 

「HAHAHA!緑谷少年と爆豪少年がぁぁぁ……いたぁぁぁぁぁ!」

 

「んぁ?どした、オールマイト」

 

「何かご用事ですか?」

 

黒いスーツを身に纏ったオールマイトが嬉々として駆け寄り……出久と爆豪を指差した。

 

出久と爆豪が尋ねると……

 

「ご飯、一緒に食べよ」

 

「「乙女や(乙女か)!」」

 

と小さな弁当箱を手にしながら、二人を昼食に誘ったのであった。__因みに、彼の行動を見た耳郎と麗日は吹き出しながらツッコミをいれていた__

 

そういう訳で、今日の昼食は出久と爆豪を除くいつものメンツで迎えることになった。

 

「緑谷君達、何だろうね?」

 

麗日が尋ねると、戦闘をきっちりとその目に焼き付けていた心操が憶測を述べる。

 

「二人揃って、オールマイトと(ヴィラン)をぶっ飛ばしてたしな。その関係じゃないか?」

 

そこに耳郎が自分の知ってる情報と憶測を付け加えた。

 

「それに出久、『とあるヒーローからかっちゃんの教育者認定されてる』って言ってたから……なんか特訓のメニューとかでも話し合うんじゃない?」

 

「成る程……。緑谷君はヒーローとして素晴らしい素質があるし、爆豪君は超パワーという点でオールマイト先生に似通っているし、気に入られているのかもな。流石だ!」

 

「うんうん!……で、耳郎さん。緑谷君のこと、出久って呼んでるけど……何があったの?」

 

「ぎくっ」

 

「俺も気になってたんだよな〜。ほら、吐いちまえ」

 

「……あまり話広めないでね。観念して吐くには吐くけど」

 

そんな風に賑やかに話を交わす麗日達を、轟が冷たさのある瞳で見つめていたのだった。

 

 

「「い、1時間前後……!?」」

 

「ああ……私の活動限界時間だ。無茶が続いてしまってね。君達や耳郎少女、相澤君の助力のおかげで覚悟していたよりはマシなんだが」

 

一方、当の本人達は仮眠室にてオールマイトからの話を聞いていた。

 

曰く、今ではマッスルフォームの維持出来る時間は1時間半と少しくらいなのだそうだ。おまけに言うと、ギリギリである。

 

これはついでの話だ、と言い__ついでで済ませてはならない事態ではあるのだが__オールマイトは本題に入った。

 

「本題というのは体育祭の話だよ。爆豪少年……君、"ワン・フォー・オール"の出力はいくつで使えたっけ?」

 

オールマイトの問いに、爆豪は拳を握りしめながら答える。

 

「余裕持ってって話なら40%。一応、半壊手前なら45%まではいける」

 

「40%……言うて、半分近いのか。これも緑谷少年とのハードな鍛練のおかげかな。これからもこの調子で頑張っていこうな」

 

オールマイトは爆豪と出久にお茶を出しながら一息つき、窓の外を見ながら言う。

 

「ぶっちゃけね、私が平和の象徴として立っていられる時間ってのはそんなに長くない。悪意を蓄えている奴の中に、それに気づき始めている者がいる」

 

そして、再び爆豪を見て拳を握りしめながら言った。

 

「君に力を授けたのは、私を受け継いでほしいからだ。初めて会ったあの日の……私を超える夢は今でも紡がれている。そうだろう?」

 

その言葉に、爆豪は顔を上げながら紅い瞳に強い意志を宿した。

 

「たりめェだろが」

 

「そして、緑谷少年もまた……例の動画で述べた理想は依然変わらない。今も理想を実現する為に、日々邁進している」

 

出久もまた、強い平和への意志を宿すオールマイトの蒼い瞳を……己の緑色の瞳で射抜く。

 

「勿論です」

 

「ならば、それを示す時だ。雄英体育祭、プロヒーローが……いや、全国が注目しているビッグイベント」

 

今度は……オールマイトの蒼い瞳が、二人の瞳を射抜き返す。

 

「今こうして話しているのは他でもない!次世代の平和の象徴、爆豪勝己と……今あるヒーロー社会を良い方向に変えんとし、闇にさえも手を差し伸べる影の英雄、緑谷出久。君達が来た!ということを世の中に知らしめてほしいのさ!

 

「俺達が……」

 

「来た……!」

 

求められていることの大きさ。それによる圧を感じながら、二人は武者震いした。

 

雄英体育祭のシステムは、以下の通りになっている。

 

・サポート科、経営科、普通科、ヒーロー科……高校の全ての科が学年ごとに各種競技で競い合って予選を行う。

 

・そこで勝ち抜いた、選ばれし生徒のみが本戦で競う学年別の総当たりを行って順位を決めていく。

 

……即ち、全力で自己アピール出来るということだ。

 

「成る程……トップを狙うにあたっちゃ、丁度いい。ますます滾るぜ」

 

「うん……。余計にいい条件だよ。益々自分を追い込める」

 

「HAHAHA、全く萎縮していないね。流石少年達。常にトップを狙う者とそうでない者、その僅かな気持ちの差は社会に出てから大きく響く。どうかその気持ちを忘れないでくれよな」

 

出久も爆豪も、トップを追い求めることに貪欲であった。

 

爆豪は、平和の象徴たらしめる為に自分を知らしめておきたい。

 

出久は、平和の象徴となることを望んではいないが……ヒーロー社会を変えんとする真のヒーローとしての自分と理想を知らしめておきたい。闇の中に紛れようとする人達の希望になりたい。

 

そんな意図がある故に貪欲なのだ。

 

話を終えて仮眠室を出ようとした時、爆豪が口を開いた。

 

「オールマイト」

 

「ん?どうしたんだい、爆豪少年」

 

「あのオールフォーワンって奴、あんたに因縁があるかなんかなんじゃねェのか」と、尋ねようとして……やめた。

 

「いや、やっぱなんでもねェ。今は体育祭だけに……俺を知らしめることに集中してェ。……体育祭終わったらきっちり聞かせてもらう。覚悟しとけや」

 

それだけ言い残してニッと笑った後、爆豪は一足先に仮眠室を出た。出久もまた、オールマイトに軽く会釈をした後に仮眠室を出ていくのだった。

 

「……爆豪少年……」

 

爆豪の言わんとしたこと、それになんとなく察しのついていたオールマイトの重々しい呟きだけが仮眠室を満たしていた。

 

 

そして、その日の放課後。

 

「なっ、何事だぁぁぁ!?」

 

「出れねえじゃん!何しに来たんだよ!?」

 

麗日と峰田の叫びがA組の教室内に響き渡る。皆がそちらに目を向けてみれば……教室の入り口を大量の生徒達が塞いでいた。

 

(他の学科の人達かな?)

 

出久には、なんとなくそう察しがついていた。

 

「……敵情視察って奴か?」

 

爆豪が呟きながら睨みを利かせる。

 

「そんなことしたって意味ねえよ。退け、時間の無駄になんだろ」

 

そうはっきりと言い切る爆豪の行動は、敵意を煽るようなものであり……峰田や麗日、飯田達は「なんてことしてくれるんだ」と言いたげな表情をしていた。

 

「あーあ。襲撃受けたって噂のA組を見に来たんだけどさ、随分と偉そうだね。さては自分達が一歩先の経験を出来たからって調子に乗ってるのかな?」

 

その時、皮肉を全面に出したような声色が聞こえる。教室の入り口を塞ぐ生徒達の群れを退かせながら歩み寄ってきたのは……金髪の爽やかそうな見た目の少年だった。

 

「僕は物間寧人。B組なんだけどさ……気がつけば、A組だけが注目を浴びてる。おかしいよね?僕らだって同じヒーロー科なのに」

 

やれやれと言いたげに肩を(すく)めて言うと、物間は後ろに群がっている生徒達を示しながら言う。

 

「因みにさ、知ってる?普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって人が結構いるんだよ。そんな彼らは、体育祭のリザルトによってはヒーロー科編入も検討してもらえるんだ。その逆も然り」

 

「……つまり。君やその他の学科の人達は、敵情視察ってよりは、宣戦布告しにきたってことかな」

 

物間が言わんとすることを察した出久が口を開くと、物間は頷いた。

 

「理解が早くて助かるよ。君がA組の筆頭的な存在の……緑谷出久かな?僕も動画は見ているよ。素晴らしい夢だね。同じヒーロー志望なのに、どうしてこうも注目度が違うんだろうね?君もどうせ、色んな人に注目されて調子に乗っているんだろう?襲撃を受けたことで更に注目もされるだろうしさ、ああ()()()()

 

皮肉まみれに言った物間だったが……彼は罪を犯した。

 

__羨ましい。その一言が、出久の堪忍袋の尾を切れさせた。

 

「……俺達が調子に乗ってる?出鱈目はいい加減にしてくれよ。今……君は羨ましいって、そう言ったよな?」

 

一歩一歩踏みしめるたびに、出久から溢れ出る威圧感が増大していく。それを言った当の本人は顔を痙攣(ひきつ)らせ、入り口に集まっていた生徒達は自然と後退りしていった。

 

「一歩先の経験を出来たから調子に乗ってる?俺達が襲撃を受けたことが羨ましい?ふざけるのも大概にしろ、物間寧人」

 

出久は物間の目の前に立ち、彼を睨み付ける。

 

「俺達一人一人が命懸けで戦った。ほんの少しでも何かが違えば、誰か1人がここから欠けていたかもしれない。先生方が大怪我をしていたかもしれない」

 

()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()」。この一言に、A組の生徒達は全員心当たりがある。何故ならその1人には、出久自身だって含まれているからだ。

 

彼が水の監獄に捕われ、爆豪と耳郎の救けを得て命辛々生き延びたのをその目で見た者もいる。直接でなくとも、クラスメートから聞いた者だっている。

 

A組のクラスメート達は、固唾を呑みながら彼の言葉を刻み付けていた。

 

「命を失う恐怖に耐えながら戦ったクラスメートだっているんだぞ。……俺達は好きでこの経験をした訳じゃないんだよ。それを羨ましい?調子に乗ってる?ふざけた言い掛かりをつけるな。君の発言は命の冒涜に値するぞ。調子に乗っているのは君の方だ」

 

怒気を収めて一息置いて、出久は続ける。

 

「思うに君は頭もいいんだろう。何故、その頭脳を他人の揚げ足を取る為に使う?……俺には分からないな。過去のことで恨みでもあるのか?その報復としてこの技術を身につけたのなら……それは間違っている」

 

すっかり腰が抜けたらしく、その場に崩れ落ちた物間を一瞥した後、他の生徒に向けて言った。

 

「君達。俺達に挑みたくば、死ぬ気で対策して正々堂々挑みに来い。俺達、1年A組は……絶対に逃げない。全力で迎え撃つよ。それと、この中にB組の人がいると仮定して言っておく」

 

「もしも襲撃事件のことを聞きたくて来ているなら……先に謝っておくよ。悪いけれど、相手が相手だった以上期待には応えられない。警察の方に他言禁止にするよう言われているんだ。……自分達だってヒーロー科なんだって示したいなら、全力でかかってこい。礼儀を以って俺達も全力で迎え撃つ」

 

それだけ言うと、出久は一足先に教室を出て行った。

 

爆豪もまた、すぐに彼を追って教室を出て行く。

 

群がる生徒達に向け……最後に心操が言う。

 

「俺の"個性"さ、所謂(いわゆる)(ヴィラン)向けだとか言われたり、戦闘向きじゃない奴なんだよね。でも……俺は血反吐吐きそうになるくらいに死ぬ気で鍛えてここまで来た。俺らに……緑谷に挑みたきゃ、皆も死ぬ気で鍛えてこい。俺から言えるのはそれだけ」

 

何かが違えば、普通科にいた可能性があった心操だからこそ言えた一言であった。

 

(……出久……かっこいい……)

 

そんな中、耳郎はドキドキが止まらなくて仕方がなかったとかなんとか……。

 

 

「出久!」

 

「どうしたの、かっちゃん」

 

階段の所まで来たタイミングで、後を追ってきた爆豪が出久を呼び止める。

 

振り向くと、彼は息を整えた後にニッと笑いながら言った。

 

「提案だ。体育祭までの2週間……()()()()()()()()()()()()()()。俺は俺、お前はお前で鍛えるんだ」

 

「……2週間後、楽しみにしとけって?」

 

「おうよ」

 

「……GOOD。乗ったよ、その提案。負ける気はないよ、かっちゃん」

 

「そりゃ俺もだ」

 

爆豪の提案を聞いた出久は不敵に笑い、その提案を承諾する。

 

そして2人は、拳と拳を合わせた。

 

「……死ぬ気で強くなったるからな。覚悟しとけ……!」

 

階段を降りていく出久の背中を見送りながら、爆豪はジリジリと闘志を業火の如く燃やしていたのであった……。




一言。物間君、扱い酷くなってすまん。

また次回もお楽しみに。
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