異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
レイと綱吉との出会いを果たした出久が次に出会った人物、即ち3人目の人物は……。
「こんにちは!僕、時透無一郎って言います。緑谷出久さんでしたよね?よろしくお願いします」
無一郎という、毛先が水色に染まったロップイヤーのような髪型の少年だった。
「よろしく、無一郎君」
そんな、自分より幼い少年がどんな影響をもたらすのか。出久も、彼の精神世界にいる綱吉とレイも気になってしょうがなかった。
無一郎の人生は、これもまた壮絶の一言であった。それも、レイの人生以上に。
綱吉の場合もレイの場合もそうだが、彼らが戦ってきた相手は同じ人間だ。特殊な能力や超人的身体能力を持っていようと、相手は人間であった。
しかし、無一郎の場合は違う。彼の戦ってきた相手は人間ではなく、それらを喰らう"鬼"という異形の化け物だった。
鬼は人間を遥かに超える身体能力を持ち、日光と日輪刀という刀で頸を斬るという二つの手段以外で死ぬことはないのだ。
無一郎の両親は彼が年端もいかないうちに亡くなった。そして、唯一生きていた家族である兄の有一郎も、鬼によって殺された。己もまた死にかけているところを、悪鬼を滅する為の組織である鬼殺隊の当主である産屋敷耀哉によって救われたのであった。
しかし、無一郎は兄を鬼に殺されたことで心身共に深いショックを受けて記憶喪失になってしまう。そんな中で彼は刀を握り、たった2ヶ月で鬼殺隊の最高階級である柱の一端、"霞柱"にまで上り詰めた。
己より年下の少年が決死の努力で強さを増し、這い上がった。その事実は出久の心を強く揺さぶる。
そして出久は……自分の愚かさに気付いた。
こんな幼い子が必死で努力してるんだぞ、僕は馬鹿なのか?何をやってるんだ、と怒りが湧いてきた。
それと同時に悟った。
「ヒーローになりたい」と口だけで言って、ヒーローの戦い方や"個性"の分析をやってても、僕は基本的なことをやっていないじゃないか。ヒーロー志望が体力づくりをしたり、体を鍛えるのは当然なんじゃないのか?それをやっていないなら、諦めてるも同然なんじゃないのか?馬鹿にされて当然なんじゃないのか?
__ヒーローを一番ナメてたのは僕なんじゃないのか?、と。
自分の愚かさに気づき、呆れと怒りが出久の心を支配する。しかし、過去は過去。悔いても変えようはないことである。故に、彼は誓った。
ここからだ。今の内に気がつけて良かったって考えよう。この出会いを糧にして、死ぬ気で鍛える。今までの遅れを取り戻すんだ。
絶対にヒーローになってやる、と。
出久は、無一郎の壮絶な生き様を刻み付けた。
彼の、無一郎の本質は見知らぬ他人の為に無限の力を引き出せる優しい性格だ。彼の父親にそっくりの瞳を持っていた少年、竈門炭治郎の一言をきっかけにして彼はその本質と、記憶を取り戻した。
本質を取り戻した無一郎は、やはり強かった。何せ、鬼の首魁である鬼舞辻無惨直属の鬼である十二鬼月、その上弦の一端を単騎で討ち取ったのだから。
しかし、彼でも全く敵わない相手というのは当然いる。彼の命を刈り取った鬼の名は黒死牟。十二鬼月の中でも最強の鬼だ。
精神世界からその強さを見た出久達は、己の死を直感した。己があの場にいれば死んでいる、と確信した。そんな絶望の権化を相手にしても、無一郎は己の責務を捨てなかった。
命の灯火が消えかかっている中でも、己に出来ることを探し、それを全力でやってのけた。結果として……無一郎ともう1人、その場で共に戦っていた風柱の不死川実弥の弟である不死川玄弥が犠牲になってしまったものの、風柱の不死川実弥と岩柱の悲鳴嶼行冥は勝利を収めることが出来た。
人生に幕を閉じ、14歳の少年の姿に成長した無一郎が申し訳なさそうに出久の元に駆け寄ってきた。
「ごめんね、出久。僕が弱いばっかりに、君が今まで会ってきた人の中でも1番早く死んじゃった……。どうかな、少しでも君の為になるものがあったかな?」
そんな彼の頭を撫でながら、出久は答える。
「大丈夫、ちゃんと僕の為になるものはあったよ。君達の扱う"全集中の呼吸"だって、君が最後の最後で見せてくれた全部が透けて見える視界だって、誰かの為に無限の力を引き出せる君の優しさだって。沢山僕の為になることがあったよ。頑張ったね、無一郎君」
「!そっかあ……良かった」
出久の言葉を聞いた無一郎は、14歳の少年らしくにっこりと笑った。
「出久、僕が思うに君も同じだと思うんだ。君も誰かの為に無限の力を引き出せる人だと思う」
「無一郎君……」
「だから、諦めちゃ駄目だよ。君はヒーローになるべき人なんだから」
「!」
1番最初に己の夢を肯定してくれたのは、自分よりも年下の少年だった。それがどうしようもなく嬉しくて、出久はもっと頑張ろうと思えた。
「うん……ありがとう、無一郎君。僕、諦めないよ」
「それでいいんだ。じゃあ出久、僕は君の精神世界にいるからさ。教えてほしいことがあればいつでも呼んでおくれよ」
「!ありがとう!」
『いいのいいの。色々とお願いされてるし、当然だよ』
こうして無一郎との出会いを果たした出久は、新たな志と決意を胸に次の人物の元へと向かっていく。
★
「やあ。君が緑谷出久君だね?僕はジョナサン・ジョースター。宜しくね」
4人目の人物の名は、ジョナサン・ジョースター。彼は由緒あるイギリスの貴族、ジョースター家の長男であった。
立派な"紳士"となることを目指して日々努力を続ける、正義感と優しさに勇気を併せ持つごく普通の少年であった彼は……ジョースター家の養子となった少年、ディオ・ブランドーとの出会いを通して大いなる運命に巻き込まれていくことになる。
大いなる運命の始まりとなる事件は、彼がディオとの出会いを果たしてから7年後に起きた。
養子となった頃からジョースター家の乗っ取りを企んでいたディオは、ついにジョナサンの父親を病に見せかけて毒殺しようと目論んだ。その目論見を阻止するべく、ジョナサンは動くのだが……追い詰められたディオは、ジョナサンを庇った彼の父親を刺殺。そして、彼は石仮面の力によって吸血鬼へと変貌した。
吸血鬼となったディオ相手にも、ジョナサンは果敢に挑んだ。一度目は自身も深手を負いながらも彼を退け、二度目はウィル・ A・ツェペリから学んだ"波紋"を用いて彼を撃破した。ごく普通の少年でしかなかった彼は、悪の吸血鬼を打ち倒す屈強で優しき戦士にまで成長したのである。
ディオを追う過程の中で師であるツェペリを失いながらも、ジョナサンは大きく成長した。天高くに輝く、聖なる星の如き眩い正義感と勇気を携えて戦うその姿は……平和の象徴、オールマイトのそれと重なった。そんなジョナサンのように、強く優しい男になろうと出久は思った。
最終的にジョナサンは、命からがら生き延びていたディオの襲撃を受け、己の命と引き換えに彼と立派に戦い抜いたのであった。
若くして命を散らしたジョナサンであったが、その勇姿は出久や彼と共にある仲間達の中に強く刻み込まれた。
「人間って……こんなに強く成長出来るんですね」
「そうさ、出久君。人間は信念さえ有れば不可能はない。吸血鬼とは違って人間は年を重ねる。だからこそ人間は成長出来るんじゃあないかな。僕だって昔は弱かったよ。でも、この人生を通して、ディオとの出会いと戦いを通して僕は大きく成長出来た。この経験も無駄じゃあなかったんだって今なら思えるよ」
出久にそう言葉をかけた後、一息置いてジョナサンは微笑んだ。
「大丈夫さ、今の君にだって信念がある。それを忘れない限り、君は強くなれるはずさ。僕からは波紋の呼吸を託そう。出久君ならきっと使いこなせる。僕も見守らせてもらうよ、君が最高のヒーローになるその日まで!」
「ありがとうございます、ジョースターさん」
『さあ、僕のところまで来ればこの旅も後半に入る。行こう、出久君。この先に待っている人に会う為に。君がより強くなる為に!』
「はいっ!」
『ねえ、ジョースターさん』
『君は無一郎君だったね。どうしたんだい?』
『全集中の呼吸と波紋の呼吸。それに、鬼と吸血鬼。僕らって色々と似てますね』
『!確かに!不思議な運命だよ』
★
「お前が緑谷出久だな。俺は空条承太郎。宜しく頼むぜ」
「よっ、よろしくお願いします……!」
5人目の人物の名は空条承太郎。彼はジョナサンの子孫であり、彼もまたジョナサンの代から通ずる大いなる運命に巻き込まれ、戦いの渦に身を投じていくことになる。
出会った当時の見た目は不良そのものであり、出久は多少ビクビクしてはいたのだが、すぐにそうする必要はなくなった。何故ならば、彼の人生を体験していく内に彼の本質に気がついたからである。
彼の生きる時代は、ジョナサンがディオと戦った時から100年が経過しているのだが。その100年の時を経て、死したジョナサンと共に海に沈んだはずのディオは、ジョナサンの肉体を乗っ取り、"DIO"として復活を果たした。
それにより、承太郎は彼の祖父と共にスタンド能力に目覚める。共に、その発現で重体に陥った母親を救う為に、彼は仲間達と共にDIO打倒の旅へと足を踏み入れた。
承太郎は、威圧的な外見と気性の激しい性格故に周囲からは不良のレッテルを貼られている。しかし、その本質は寡黙且つ冷静沈着ながらも正義感の強い男なのだ。
実際に、出久達は彼のDIO打倒の旅を通して本来の性格を知ることが出来た。承太郎には、正義感の強い上に仲間の為に自分を犠牲に出来る覚悟があった。その覚悟は、ヒーローになる上でまさに必要なものである。
気性の激しさなどはあれど、彼もまたヒーローであるに相応しい男に間違いなしだと出久は考えた。
DIOを打倒してもなお、彼の活躍は終わらなかった。年を重ねて落ち着きを兼ね備えた男となり、様々な敵の打倒にも加担した。
年を重ねてもなお自分を仲間の為に犠牲する覚悟は変わらず、彼は己の娘を庇った隙を突かれて命を落としてしまう。しかし、ジョースター家の血を引く者としての輝きは最後の最後まで失われることはなかった。
「……やっぱり優しいですね、承太郎さん」
「さあ、どうだかな。だがまあ、俺自身不器用だって自覚はあるよ」
「確かに父親としては不器用だったかもしれませんけど、家族を遠ざけたのは戦いに巻き込みたくなかったからでしょう?優しいですよ、承太郎さんは。娘さんもきっと分かってくれてます」
出久は、彼の精神世界で人生を経験したからこそ承太郎の全てを判っているのだ。彼の言葉を聞いた承太郎は、静かに笑みを浮かべる。
「そう言われると、俺も救われるってものだ。ありがとうな、出久君。俺からは、俺のスタンドであるスタープラチナと俺自身の判断力を託そうと思う」
「僕にも使いこなせますかね?」
「大丈夫だ。"君は必ず成長する"と、俺はそう確信している。スタンドの扱い方を伸ばしたければ、いつでも呼んでくれ。俺の経験全てを駆使して君に教え込もう」
「ありがとうございます。行き詰まった時には遠慮なく頼らせてもらいますね」
「ああ、任せてくれ」
頼もしい一言を残しながら承太郎が己の精神世界と同化したことを確認すると、出久は早速目の前に開いたゲートを見た。
「これで5人だから、もう残りは3人ってことになるのか!長かったような短かったような……。他にはどんな人が待っているんだろう?」
旅の終わりも近いことを実感しながらも、出久は次の出会いに向けて胸を躍らせたのであった。