異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
後書きにお知らせと言いますか……そんなものを記しておりますので、そちらも目を通していただければと思います。
見事、第1種目の障害物競走を1位で突破した出久。無論、彼の活躍は全国に報道されている。
警備担当として雄英を訪れたプロヒーロー達も彼の活躍を目にしていたし、とあるヒーローは彼を己の事務所の人材として欲したし、またとあるヒーローは自分の事務所で活躍してもらうにはあまりにも勿体なさすぎるとして、彼の活躍を存分に見守ることにした。
もう一度言うが、出久の活躍は全国に報道されている。彼の活躍をテレビやらパソコンやらを通して見守っているのは、彼らも同じことだった。
「緑谷出久……陰りを持ちながらもトップに立ち、己の存在をアピールしている……。『俺がいる』と言わんばかりに……」
件のUSJ襲撃を企てた、
……ついでに言うと、オールフォーワン伝いで聞いた、自分達を裏切ったとかいう、とある少女の動向を監視する為でもあるのだが。
しかし、後者の方は後回しで良い。今の死柄木にとって最も必要なことは、巨悪を引き継ぐ者として成長することなのだから。
今や癖となった首を掻く仕草。それをしながら、彼は獲物を狩る鷹の如くその目を光らせていた。
……そして。
「緑谷出久君……。君は素晴らしいね。ここ2週間で更に何かを学び取ってきたようだ」
ヒーローの卵であるはずの出久にまで期待を寄せるこの男、オールフォーワン。彼もまた、生命維持装置が大量に付いた椅子に座りながら、モニターを通して雄英体育祭の様子を窺っている。
今、彼はUSJに訪れた時に装着していた、黒い骸骨を模したマスクを外しているのだが……その下に隠されていたのは、髪の毛は無くなり、上半分の肌は焼け
しかし、口は残っている以上、その表情は最低限
……きっと、彼自身も思いもしなかったことだろう。巨悪の象徴である己が、ヒーローの卵達が上を目指して蹴落とし合う行事に対してこんなにも好奇心と期待を抱きながら、その顛末を見守ることになるなどとは。
人の人生とは、何が起こるか分かったものじゃない。巨悪の象徴であるオールフォーワンにとって、緑谷出久という存在はまさに青天の霹靂。快晴の空に不意に轟いた雷の音のようで予測になかったものだ。
そんな彼に魅力を感じ、彼を引き込もうとするのもまた一興だ、とオールフォーワンは今の状況を青春を楽しむ学生のように、最大限に楽しんでいるようであった。
(さて、緑谷出久君。改めて見せてもらうよ、君の強さを)
★
無事に一位を勝ち取った出久は、多くのクラスメート達に囲まれていた。
爆豪からは相変わらず、「お前の使う力を全部吐け!」と詰め寄られているし、麗日は持ち前の麗かさで「悔しいよちくしょ〜!」と悔しがりながらも白い歯を見せて、癒しパワー全開の麗かスマイルで出久を称賛している。
一方、心操は棒状の物を用いて繰り出した型の馴染み具合に感心し、「もっと色んなことを教えてくれ」と爽やかな笑みを浮かべながら出久を称賛し、飯田は辺りの空気がどんよりとしそうな具合で落ち込みながら拳を握りしめて悔しがるも……律儀に誠心誠意を込めて出久を称賛し、握手を交わしていた。
他のクラスメート達も、共通して彼を称賛している。
そして……肝心の耳郎は。
「い、出久っ。かっこよかったよ」
照れたような様子を見せて耳朶のプラグに指を絡ませ、くるくると弄りながら……まさしく、絵本で見た白馬の王子様を見るかのような羨望と恋慕に満ちた瞳を向けながら微笑んだ。
「ありがとう」
出久もまた、恋人どころか絶対に切れない赤い糸で結ばれた愛人に向けるような優しい瞳で微笑みを浮かべて礼を言う。
更に、彼は耳郎の側まで歩み寄ると、彼女の頭にポンと優しくその手を置き……。
「このまま体育祭の優勝まで勝ち取って君に届けるつもりでいるから、見ててね。響香さん」
微笑みを浮かべたまま、彼女に誓いを述べていた。
「ふぁっ……!?は、はいっ……!」
名前で呼ばれた驚きと恥ずかしさ、頭に手を置かれた恥ずかしさ……。原因は様々であろうが、彼女は顔を真っ赤にしながら俯いていた。ただし、俯くとは言えど、その行動は赤くなった顔を隠す為である。
彼女が嬉しいと思っているのは、その少女らしい柔らかな声色と犬の尻尾のようにしてブンブンと振られている耳朶のプラグで丸分かりだ。
そんな彼女に、「良かったね、響香ちゃん!」と詰め寄る麗日と大層嬉しそうに笑う耳郎を見ながら、爆豪が……甘ェ。辛いもんをくれ、と内心で思ったのは余談である。
出久も、耳郎と麗日を微笑ましく見守っていたが、ふと気になっていたことを思い出した。
「……八百万さん、大丈夫かな」
出久が気にかけているのは八百万のことであるのだが……彼女は体育座りで地面にしゃがみ込み、縮こまって落ち込んでいる様子である。
では、ここで彼女に何があったのかを説明しよう。
まず、八百万は19位でゴールを果たした。出久としては、彼女ならば15位以内でゴールするのではないのかと予想していたようだ。
何せ、彼女もまた推薦入学者。その知識量や実力には目を見張るものがある。事実、出久は彼女が第一関門で大砲を用いながら0Pを破壊した場面を見ていた。それぞれの関門を突破するにも、最適な道具を創れるはず。そんな道具を駆使しながら、彼女は好順位を勝ち取れる……はずだったのだが。
そんな彼女の邪魔をする刺客がいた。その名も、峰田実。皆さんご存知、性欲の権化である。
なんと卑劣なことか、彼は己の"個性"を駆使して両手両足に己の髪の毛をくっつけては彼女の背中にくっつき、彼女におんぶに抱っこの状態でゴールしたのだ。
__因みにだが、"おんぶに抱っこ"とは何から何まで世話になることや、他人の好意に甘えて頼りきることを言う。彼の行動を八百万が好意的に承認するはずもないので、ここでは前者の意味だ__
こうした峰田の妨害が理由で好順位を勝ち取れなかったのが、彼女が落ち込む理由だ。
当然ながら、ジョナサンや承太郎から受け継いだ、女性を大切にする紳士の心のある出久が峰田の行動を見逃すはずがない。
彼は峰田が八百万の背中に貼り付いていることに気がつくと、メルエムの能力によって拝借した相澤の"個性"、"抹消"を発動して、峰田本人と彼の髪の毛を神の如く素早い手捌きで引き剥がし、更に引き剥がした峰田の髪の毛をメラメラの実の能力で燃やして塵にした。
もう一つ言えば、峰田の髪の毛がついていた部分は切り取る他なかった故、八百万の着ていた体育服の上着はボロボロになってしまった。出久は、そんな彼女に自分の上着を着せるというスパダリ*1っぷりまで発揮した。
そして、威圧感を前面に出しながら彼に1発蹴り上げをお見舞いし、瀬呂に協力を頼んで彼の手足をテープによってグルグルに巻きつけて会場の端に放置することで制裁とした。
__因みにだが、彼は女子によって書かれた「オイラは性犯罪者予備軍です」という札を首から下げており、滑稽なくらいの辱めに遭っている__
落ち込む八百万に声を掛けるため、出久は彼女の側に歩み寄ってはその隣に座った。
「!緑谷さん」
出久の気配に気がついたのか、八百万も顔を上げて彼を見る。
「先程は救けていただき、ありがとうございました」
そして彼女は、峰田を引き剥がしてくれた礼を述べた。
「いいよ、大したことじゃない。女性は常に
礼を述べた彼女に、出久は紳士に相応しい優しい笑みを浮かべて答える。
男性として模範的な出久の態度に、八百万は感心しながら優しい笑みを浮かべていたが、直後不安げな顔になって口を開いた。
「折角のアピールの場だったのに、想定していた順位に入れませんでした……。私、こんな調子で大丈夫なのでしょうか……」
(そっか……最初から不調になっちゃうと不安だもんな)
そんな不安げな彼女に声をかけ、心を救ってやれるのもまた真のヒーローであろう。余計なお世話だと言う人もいるかもしれないが、出久は迷わずフォローを入れた。
「大丈夫。大丈夫だよ、八百万さん。まだまだアピール出来る場所はあるし、全力を尽くそう。それに……障害物競走でもアピールはしっかり出来ていると思うよ。
八百万さん、轟君の氷結を読んだ上に、しっかり避けたでしょう?0Pだって大砲を用いて撃破してる。他の関門でも自分の最適解を見出しながら突破してきたはずだ。道具の使用用途を理解している上に、場面に応じて最適解を見出す判断力。プロヒーローにとっては欲しい人材だと思うけれど」
「緑谷さん……」
出久の言葉を聞いて、八百万の顔から少し不安が消え去った。彼女に声をかけんとする者は、出久のみだけではない。
「そうだ、八百万君。体育祭はまだまだ始まったばかり!これからが本番だ。アピール出来るチャンスはこれ以降もある。終わった訳じゃないさ。今は、お互い全力を尽くそうじゃないか!」
歩み寄りながら、にこやかな笑みを向けたのは飯田であった。彼は、A組のクラス委員長。だからこそ、同じクラスの誰かの悩みは見過ごせないし、力になってあげたいのだろう。彼は、誰かの為にそう思える男だ。
「飯田さん……!そう……ですわね!まだ終わった訳じゃありませんものね。緑谷さんに私の活躍を見ていただけたと思うと、元気が出てきますわ……!お二人とも、ありがとうございます!次の種目も、お互い頑張りましょう!」
「ああ、頑張ろう!」
「うん!」
2人の言葉もあってか、八百万はすっかり調子を取り戻したらしい。凜然たる背中を向けてクラスメートの輪の中に向かっていく彼女を見て、出久は安心した。
「……ありがとう、飯田君」
「気にすることないさ。クラスメートが悩んでいたならば、自然に手を差し伸べられるのもクラス委員長というものだと俺は思う」
「うん……そうだね」
飯田の心意気に感心して、出久は再び微笑みを浮かべた。
「緑谷〜!」
「うわっ!?よ、夜嵐君か」
そんな風に微笑みを浮かべた出久に手を振り、駆け寄る者がいる。
丸刈り頭に四白眼、飯田以上の高身長と鍛え上げられた肉体が特徴な少年、夜嵐イナサである。その笑い声や笑顔からは、彼の快活さと熱血さが
他クラスの者でも足蹴にせずに丁寧に対応する出久の誠実さにまたも感動したのか、夜嵐は出久の手を握りながら言う。
「早速名前を覚えてもらえていて、光栄っス!あの緑谷と同じ高校に入れるなんて……感動だ!」
彼の自分に対する熱は、オールマイトやら、様々なヒーローのファンとして、己が彼らに向けるそれと似たようなものだと、出久は感じた。感情を読み取ってみても嬉しさに溢れており……彼がどれだけ自分のファンであるのかが窺える。
彼の勢いに少しだけ気圧されながらも、飯田もまた他クラスの生徒と交流するいい機会だと、彼に話しかけた。
「俺は飯田天哉。A組でクラス委員長をさせてもらっている。改めて宜しく頼む、夜嵐君!」
「おう、俺は夜嵐イナサだ。こっちこそ宜しく!あっ、そうだ!マスコミ騒動があった時の体の張り具合、熱かったっスよ!」
改めて互いに自己紹介しながら握手を交わす飯田と夜嵐。その最中、飯田が最も気になっていたことを聞いた。
「しかし、夜嵐君。いいのかい?俺達A組と交流しても。件の物間君とやらの様子からして、B組の諸君は俺達に対抗心や敵意を持っていたようだが……」
飯田にそう聞かれると、夜嵐は快活な笑顔のまま一瞬固まり……直後、一変して真剣な表情となった。そして、彼は、地面に自分の頭を打ち付ける程に勢いをつけてお辞儀をした。
突然の彼の行動に困惑する飯田と出久に、彼らの様子を見守っていたA組の生徒達だが、その後の彼の一言でその理由が分かった。
「物間の件については本当に済まん!!B組を代表してとか、彼奴の代わりにってのもおこがましいかもしれんが、謝罪させてくれ!」
取り敢えず、彼の行動の理由は分かったが、この状況は周りを困惑させること間違いなしなので、出久と飯田は彼に顔を上げるよう促しながら話の続きを聞くことにする。
「彼奴は皮肉混じりにあんなこと言っていたけど……絶対ない。あんたらが調子に乗ってなんかいないってことは、B組の俺を足蹴にせずに対応してくれることから明らかっスよ。
それに、あの物間の発言は庇いようがねェ。あれは、彼奴が100%悪い。彼奴を説教した緑谷の行動は正しいっス。俺も昔の彼奴に何があったのかまでは知らねェ。けど、あれが半分悪気ありでの発言だったってのも、襲撃を命を懸けて乗り越えた後のあんたらにとって、失礼極まりない発言だったってことも確かに分かるっス。だから……代わりに謝らせてもらった」
そこまで言うと、夜嵐は再び快活な笑顔と調子に戻って、「正直言うけど、俺は彼奴のこと嫌いっス!」と胸を張りながら言った。
(……馬鹿正直で心が綺麗なんだな、夜嵐君)
「そういうことは、はっきり言うものじゃないぞ夜嵐君!」と飯田にビシリと注意を受け、快活な調子のまま謝罪をする夜嵐を見て、苦笑しながら出久はそう思った。
少なくとも、間近で話を聞いた出久と飯田のみならず、A組の生徒達の中では、夜嵐イナサという男は熱血でいい人だという認識が出来た。
そんな風にクラスメート達や、夜嵐と交流を行う出久を1人外れたところで見て、轟はトップを勝ち取れなかった悔しさでその拳を握りしめ、歯を食いしばっていた……。
★
その数分後、遂に生徒達の全員がゴールを果たし、ミッドナイトから上位43名が予選通過だと発表された。順位表を見る限り、A組は全員予選を通過している。そこは一安心だというところだが……本番はここからだ。
__因みにだが、落ちた人にも見せ場は用意されているとのこと__
次の第二種目からは本選である。気を引き締めて掛からねばならない。ここを突破出来なければ、最終戦に生き残ることすら出来ないのだから。
「さあ、次はいよいよ本選!第二種目は……騎馬戦よ!」
意外や意外。それぞれが蹴落とし合う中ではあるが、第二種目は生徒同士が協力して行う競技であった。
参加者は、2人〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作る。
基本は騎馬戦のルールと変わりはないのだが……大きく違うのは、障害物競走の順位に応じてポイントが振り当てられることだ。要するに、実技入試の時のようなポイント稼ぎ方式ということだ。そうなれば、当然騎馬の組み合わせによってポイント数は変化する。
上を狙わんとする者が多い中、ポイント数の多い騎馬を組めば、多くの人から狙われるのは自明の理というもの。"個性"の相性もそうだが、そういった意味でも、騎馬の組み合わせは非常に大切になってくるだろう。
そんな競技をする上で重要な点を、自分が喋っているにも拘らず、生徒達が分析して喋っていくのでミッドナイトは不服そうだったというのは、余談である。
「与えられるポイントは下から5ずつ!42位が5ポイント、41位が10Pという具合よ。そして、1位に与えられるポイントは……!」
順位が上がるにつれてポイントが5ずつ加算されるというのであれば、順当にいくと出久の場合は215ポイントになる。
ただし……それは順当に、普通に考えた場合のケースだ。入学初日から個性把握テストを行う教師がいたり、障害物競走で自分対策を講じてくる雄英だ。普通通りのポイントを与えてはくれないだろうな、と出久は確信していた。
「1000万!」
(1000万ッ……!?)
いざ蓋を開けてみれば、与えられたポイント数は1000万。42位の生徒に与えられた5ポイントの、200万倍である。
これだけ圧倒なポイント数となれば、誰しも分かっていることであろう。1位の騎馬を落とすことさえ出来てしまえば、どんな順位からであろうとトップに立てるのだと。
ミッドナイトが、たった今これを「上位の奴ほど狙われる下克上のサバイバル」と例えたが、まさしくその通り。
織田氏が
No.1としてのプレッシャーが与えられると共に、狩られる者としての本能が、湧き水のようにしてこんこんと湧き出てきた。
「……上等」
そんなプレッシャーに易々とへし折れる出久ではない。不安を感じるどころか、逆にワクワクしているようで……ネテロと激戦を繰り広げた時のメルエムを彷彿とさせるように、口の端を吊り上げて白い歯を見せ、不敵な笑みを浮かべていたのだった。
★
警備を行うヒーロー達の控え室にて、彼らもまた雄英体育祭の行末に注目していた。
「この雄英体育祭って、ヒーローの気構え云々よりもヒーロー社会に出てからの生存競争をシミュレーションしているよな」
オールマイト程ではないといえど筋骨隆々な肉体と、工事現場に置かれた看板のような模様のヘッドギアとリストバンドが特徴のヒーロー……デステゴロが、タバコを吸いながら言及する。
「どういうことです?」
そんな彼の発言の意味を尋ねた、牛のような角のついたマスクに、某光の国の戦士のような模様の刻まれた、体のラインの分かる薄手のスーツが特徴の女性ヒーローは、Mt.レディ。因みにだが、1年程前にプロヒーローとしてデビューしたばかりであり、
デステゴロ曰く、「ヒーローがひしめく中で飯を食っていくには他を蹴落としてでも活躍を見せなければならない訳だが、そんな状況を示しているのが予選の障害物競走ではないか」とのこと。
現在は、日本中にヒーロー達が溢れ返っており、ヒーロー飽和社会と言われている。そんな中で自分が金を得て生きていくには彼の言う通り、当然貪欲に自分の活躍を見せつけていかねばならない。その社会状況は、確かに障害物競走の概要と一致していた。
「あー、成る程……。あれ、心苦しいですよね〜」
デステゴロの推察を聞きながら、Mt.レディはタバコの煙を振り払って社会の状況を嘆く。
「貴様……嬉々としてやっていたではないか」
そんな彼女に呆れながら言葉を溢したのは、樹木のような材質のマスクと腕が特徴の、鍛え上げられた肉体がはっきりと分かる青いボディースーツを着たヒーロー……シンリンカムイ。今話題の若手ヒーローだ。
因みにだが、彼はMt.レディがデビューした日に手柄を彼女の手で横取りされたという苦い思い出がある。今の呆れながら放った言葉が出てきた訳は、そういうことである。
「競争も必要な商売敵同士である一方で、協力も腐る程必要だ」
シンリンカムイに言われ、流し気味に口笛を吹きながら知らん振りをしているMt.レディを見て苦笑しながら、デステゴロは再び口を開いた。
「あっ、騎馬戦がまさにそうですよね。自分の勝利がクラスメートの勝利になりますし。"個性"の相性云々でも持ちつ持たれつ」
そんな彼の発言に、切り替えたMt.レディが同意した。シンリンカムイもまた、彼なりの例を挙げながらそれに同意している。
プロになって生き残る上で当たり前となる術を、高校生の子供がやっていることを知って同情しながらも、3人は感心していた。
「そういえば……2位の爆豪君は、ヘドロ事件の時の少年だったな」
そんな中、ふとシンリンカムイが水を一口、口にしてからしみじみと述べた。
「やっぱりそうですよね……。私達、あの時に比べていいヒーローになれているんでしょうか」
Mt.レディもまた、憂いだような表情になって頬杖をつきながら言う。
「そりゃあ世間の評価だしな……。俺らからはなんとも言えんだろ。だからこそ、緑谷君の言葉を肝に銘じて必死こいて頑張っている」
デステゴロもまた、1位で障害物競走を終えた出久の姿を思い出しながらタバコを灰皿に置き、グッと拳を握りしめていた。
出久の存在は……確かに生徒達のみならず、プロヒーローにもいい影響を与えているようである。
★
時間が経つのは早いものであり……既に15分のチーム交渉の時間が経過していた。
『起きろ、イレイザー!15分のチーム決め兼作戦会議を経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!』
プレゼントマイクは、チーム交渉の時間がタイムアップしたのに従って、いつの間にやらうつらうつらと眠りに落ちていた相澤を叩き起こすと、そのテンションを最高潮にして実況に移った。相澤もまた、並び立った騎馬を見て興味を示すなり、目が冴えてきたようである。
『さあ上げてけ、
騎馬戦のスタートを待ち望んだかのように、テンションが最高潮なプレゼントマイクの声を背景に、出久は満足のいく騎馬が出来たことに一安心していた。共に、彼らと一緒なら必ずトップを勝ち取れると確信してもいる。
プレゼントマイクのカウントダウンが開始させると同時に、出久は騎馬を組んだメンバー達に一声かける。
『
「まずは3人とも、俺の元に集ってくれてありがとう。俺達なら絶対やれる。勝つよ」
彼の感謝と発破に、彼の元に集った3人はやる気満々の笑みを浮かべて頷く。
出久のみならず、彼らもまたこのメンツならば必ずやれる、と互いが互いを信頼している笑みであった。
『
出久が最初に声を掛けるのは、己の騎馬の
「騎手、かっちゃん。俺達のポイントは全て君に託した」
「おうよ、任せとけ。お前らの全部、託されたぜ」
彼の騎馬、その騎手を担う男の名は……出久が最大限の信頼を寄せる幼馴染、爆豪勝己。
出久の言葉に、爆豪もまた口の端を吊り上げて
『
次は、己の騎馬の先頭であるこの男。
「常闇君、君の"
「御意。お前と共に戦えること以上の喜びはなかろう。必ずや、期待に応えてみせる」
己に宿る、影の魔物を使役する常闇踏陰。彼の防御力は、この騎馬の要と言っても過言ではない。
『
そして、己の騎馬の左翼であるこの少女。
「響香さん、何度も俺に力を貸してくれてありがとう。この恩は、勝利を勝ち取ることで返す」
「出久のことは、他ならぬウチが支えるって……そう決めたから。任せといて!ウチにやれる最大限の活躍をしてみせるよ!」
自分のことを全てを懸けて支えてくれている恋人、耳郎響香。彼女と共にいられること。それが出久にとって最大のコンディションを引き出す為の火種となるのみならず、彼女の"イヤホンジャック"はこの騎馬戦において強力な武器にもなるのだ。
『
最後は……右翼を担当する己自身。
「そして、右翼は俺だ。俺の経験、その全てを懸けて勝ちにいく。いざって時は俺が支える。皆、安心して全力を尽くしてくれ」
騎手は爆豪、先頭は常闇、左翼は耳郎、右翼は出久自身。
これが、今やれる最大限の策。これを以って、出久はトップを勝ち取らんと闘志を燃やす。
「START!」
今、主審であるミッドナイトの合図がかかった。
いよいよ、雄英体育祭本選……第2種目、騎馬戦の開幕である。
ご愛読ありがとうございます!最後にお知らせです。
現在、とある作者様が「異世界帰りのヒーローアカデミア」というタイトルで拙作と似た雰囲気の内容の小説を投稿していらっしゃいます。
作者様ご本人とお話ししたところ、その作者様は拙作をご愛読頂いているとのことであり、無意識のうちに参考になさっていたとのことです。実際にそちらの方を読んでいただければ分かりますが、似たところ、そっくりなところがあります。
しかし、作者様は悪意があってやったことではありませんし、私本人からも作品の内容が似ることに対して許可を出し、了承しました。ですので、今後そちらの作品をお読みになる方は作者様を誹謗中傷なさることがないようお願い致します。
お知らせは以上です!今後とも、「異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake」を宜しくお願いします!